第五章5-28ジーナの杖
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ゆ、結納も準備しなきゃね!?(ティアナ談)
5-28ジーナの杖
「つまり魔結晶石に上級精霊クラスの精神体などを封じ込めるには伝説の『至高の杖』が必要という事ですね」
アンナさんの説明に一同はため息をつく。
マース教授とアンナさんが魔導書を解析した結果、その特異性からかなりの微細なコントロールをしないと魔結晶石のような高密度体の原石には精神生命体や、超生命体などの融合はまず無理だという事が分かった。
「それって絶望的という事かしら?」
「そうですね。そもそも神から贈られたという三種の神器の一つ、『至高の杖』なんてその確認すらされていないモノですもの。ほかの方法を研究するしかありませんですね」
ティアナの質問にアンナさんは首を横に振りながら答える。
しかしそうそう簡単に別の方法が見つかるだろうか?
「『至高の杖』ですの‥‥‥ 確か挿絵がありましたわよね? 皆さんにも見ていただいたらいかがでしょうかしら?」
あたしが今まで持っていたイメージでその三種の神器の一つ「至高の杖」はメイジスタッフのように大きなものではなくワンドと呼ばれる短い片手で十分扱える小さな杖であった。
イメージ的には生前テレビで見たことのある魔法少女なんかが振り回すくらいのステッキみたいなやつだね。
別にそれであたしが変身するわけじゃないけど、今までのイメージと全く違っていたのが印象的だった。
「そうですね、何かの折に参考にはなるかもしれません」
そう言ってアンナさんは魔導書に書かれている挿絵をみんなに見せる。
「へえぇ、これが『至高の杖』なんだ。ワンドだったのね」
「確かに、今までのイメージとは全く違いますな」
「主はこれが欲しいのか?」
欲しいと言えばほしいんだけど、その辺で売っているようなものじゃないので簡単には手に入らない。
「ショーゴさん、そんな簡単に人にプレゼントできるようなものじゃ‥‥‥」
ん?
プレゼント?
あたしはもう一度その挿絵を見る。
じ~っと。
そしてとある大切な恩師の事を思い出す。
―― いえ、受け取ってください。魔術師は必ず自分の杖を持つものです。そしてその杖はエルハイミ様ならきっと使いこなせるでしょう。正直、私にはその杖は扱いきれませんでした ――
あの時餞別にもらった大切な杖。
確か冒険者時代にジーナさんが「空から落ちた王宮」から見つけ出したって言ってたよな。
あたしはもう一度それを見る。
‥‥‥似てる。
なんかものすごく似てる。
「あ、あの、ティアナ、私実家にティアナを連れて戻りたいのですがよろしいでしょうかしら?」
ざわっ!!
「エ、エルハイミとうとう‥‥‥ お、お義父様にご挨拶は何をお土産に持っていったらいいのかな?」
「エ、エルハイミさん。実力行使に出ましたね。くっ、悔しい!!」
「エルハイミちゃん、やっぱりそうだったのですね。エルハイミちゃんは可愛いしすごく抱き心地が良かったですがとうとう殿下を実家に‥‥‥ いえ、私もエルハイミちゃんたちを応援していますからね!」
はぁ?
なんか周りがものすごいこと言ってないか!?
見るとティアナは顔を赤くしてものすごくうれしそうにしているし、アテンザ様はハンカチを口に引っ張って、「きーっ!」とかやってるし、アンナさんもしんみりしてるし。
あたしを置いてきぼりにして勝手に勘違いをしまくってる!
「あのですわね、この杖に似ている杖が実家に有るのですわ! だからティアナたちにもガルザイルではなく直接ユーベルトに来てもらおうと思ったのですわ!」
「「「え”っ?」」」
三人の声が重なる。
なんかティアナは涙目でプルプルしているし、アテンザ様は向こう向いてガッツポーズしているし、アンナさんもなんかほっとしたような顔している。
みんな一体何考えてんだよぉ~。
「でもエルハイミちゃん、似ていると言っても『至高の杖』とは限らないのでは?」
「実は私の家庭教師、ジーナ=アンダーソンが昔冒険者で『空から落ちた王宮』から見つけ出したと言っていました。ですのでもしかしたらと思ったのですわ」
「あの『空から落ちた王宮』から生還した冒険者ですって?」
アテンザ様が驚く。
「あの迷宮に入ったが最後、生きて出てきたものがいないと言われている超難関の迷宮からですか? それはもしかすると‥‥‥」
「そうですね、そのよう迷宮から見つけ出したという杖ならあるいは」
「うー、そうすると今度はエルハイミの実家、ユーベルトに行くべきかぁ。わかったわ、行きましょう!」
そう、あの時もらった杖はジーナさんには扱えないと言っていた。
無詠唱の手助けができる杖が使えなかったというのは気になるが、少なくとも強力な杖で有るのは間違いない。
あたしはあの時まだその真価について理解できなかった。
でも今は違う。
アンナさんもいるしそれがどのようなモノかすぐにわかるだろう。
実家に戻れるのは正直うれしいけど、まだまだやらなきゃならないことがいっぱいあるしな。
実にまたまた三年ぶりくらいになるけどみんな元気だろうか?
弟たちももう六歳かぁ。
あたしのことちゃんと覚えてくれているだろうか?
そんなことを思いながらあたしたちはユーベルトに向かう事になったのだった。
評価、ブックマーク、ご意見、ご感想いただけますと励みになります。
誤字、脱字ありましたらご指摘いただけますようお願いいたします。