第五章 5-22増援
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
酒まんじゅうさいっこぉー!!むにゃむにゃ・・・(エルハイミ談)
5-22増援
今日はいろいろとあって疲れた。
一度に物事が動くのって脳みその処理が追い付かない場合がある。
あの後今後のマシンドールの強化に魔晶石がたくさん必要だという事で破格の値段で魔晶石を買い付けたティアナとアンナさん。
流石にすぐには人工魔結晶石を作るわけにはいかないので後で試すこととなる。
そしてこの国なりの歓迎の意を表した食事会を行い、その後その時点での候補となる魔晶石原石が山ほど積み上げられているのを見せられげんなりした。
よくも短時間でこれだけ見つけ出したものだ。
しかし流石に時間的にも遅くなっていたので翌日から選別を始めようという事になり、与えられた部屋で休むのだがあたしには夜のお勤めがまだ残っていた。
「さ、さいき‥‥‥ んっ! はぁはぁ、エ、エルハイミってマッサージ‥‥‥ んんっ! じょ、上手になって‥‥‥ きたぁぁんんっ! ‥‥‥わよね ‥‥‥はぁはぁ」
ふにょふにょふにょふにょふにょ‥‥‥
ティアナの胸をマッサージしているあたし。
既に疲れと眠気で脳みそも限界だ。
「あっ! んっ! エ、エルハイミ! 先の方はいいからぁぁ‥‥‥!! ちょ、ちょっとくすぐったぁいぃぃ!! んんっ!!」
すでに眠気が限界近い。
そう言えば最近ティアナの胸大きくなったみたい。
温泉饅頭から酒まんじゅうにレベルアップかな?
ふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょ‥‥‥
酒まんじゅう‥‥‥
あれって美味しいよね。
久しく食べてないような‥‥‥
ふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょふにょ‥‥‥
そう言えばここに酒まんじゅうがあるわね、二個も。
一ついただこうかな?
ぐにっ!
「あっ! エルハイミ! 痛いよ、つよすぎいいぃぃ‥‥‥」
あれ取れない?
じゃあ、直接いただきまぁ~す。
「ちょっ? エ、エルハイミ? 何をするの??」
うーん、おいしそう。
白くて先端にきれいなピンク色の何かがあるけど、あんまんだっけ?
いや、あんまんにしてはちっちゃいなぁ~。
それではいただきます、あ~ん。
「エ、エルハイミ! 流石にそれは心の準備ができていないっ! 駄目よ!!」
だめ?
え?
何が??
ん?
あれ?
これってあんまんじゃない?
‥‥‥おや??
ここであたしの眠気が一気に覚める。
そして目の前に広がる光景に一気に血の気が引く。
顔を真っ赤にして涙目にフルフル震えるティアナを押し倒して今にもそのかわいらしい胸に食らいつこうとするあたし。
「ご、ごめんなさいですわっ!! 寝ぼけててお饅頭と間違えてしまいましたわっ!!!!」
あたしは速攻でティアナから離れ土下座する。
それはそれは深く深く頭が地面にめり込むように!
「‥‥‥もう、強引なんだからエルハイミったら。そんなにせかさなくても‥‥‥ ううん、こういうのはもっとムードが必要よ!」
「はい?」
「こ、今夜はもう終わり、寝るわよ!!」
そう言ってベットの上で向こうを向いて寝てしまった?
あたしはポカーンとして、そろりそりりとティアナが眠るベットに行く。
「あのぉ、ティアナ? 怒ってますの?」
「いいから、もう寝る! 早く入ってきなさいよ!」
あー、やっぱり怒らせたか。
仕方なしにあたしはティアナの横にそおっと布団に入る。
するとティアナはこっちに向き直って両手であたしの顔を抑える。
「ふにゃ、ティアナ?」
完全に油断した。
ティアナはそのままあたしの唇にそのかわいらしい唇を軽く重ねてすぐに離れ、また向こうを向いてしまう。
「こ、今晩はこれだけよ、それで我慢なさい!お休み、エルハイミ!!」
そう言って何も言わなくなってしまう。
あまりの突然な事にあたしは呆然となってしまう。
そしてしばらくして心臓の鼓動が激しくなり、顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。
え、えええぇぇっっっ!!!?
パニクったまま夜は更けていく。
* * * * *
「それでは魔結晶石の選別方法をお教えいたしましょう」
そう言ってマース教授はウェースド陛下含む大臣たちの前でその全別方法を教え始める。
マース教授はいくつかの魔晶石原石を持ち上げ、光にかざす。
「これは昨日にも言いましたが目視による確認方法の一つです。透明度が高く、内部にひびや異物があればまず違います。目視で問題の無い物をこうしてナイフで傷つけてください。傷がつけば違います」
そして懐から魔晶石を取り出す。
「最後にここに魔力だけをめいいっぱい詰め込んだ魔晶石があります。これと原石がほほ同じ大きさのものを並べ魔晶石から原石に魔力を移し替えます。この時容積がほぼ同じなら原石にはそれ以上魔力の注入はできませんから、それは普通の魔晶石と言う事になります。しかし、二個以上ほぼ同じ容積の原石に魔力が注入できたとしたら、それが魔結晶石という事になります」
更に数個魔晶石を取り出すマース教授。
「まずはこの方法で採掘済みなものは選別ができるでしょう。あとは古代遺跡の方ですがそれについては私たちが調査に行かせてもらいたいのですが、よろしいですかな陛下?」
「あの遺跡は探索しつくされているが、まだ何かあると思われるかマース教授よ?」
「多分、秘密結社ジュメルがあそこを欲していたので何かは有る可能性が高いですな。勿論魔結晶石についての更なる手掛かりがあればこの上なしですが」
ふむ、と陛下は言ってから大臣の一人を呼ぶ。
「マース教授殿にあの遺跡の地図と食料、その他必要な装備を準備してやれ。マース教授殿、あの遺跡は探索しつくされ魔物や罠は既に排除され、特には何もないと思われるが護衛をつける。十分に注意されよ」
しかしマース教授はそれを丁重に断り、あたしとアンナさんに同行することを要望する。
「魔道に詳しい者と力ある魔導士が同行すれば問題ありません。この二人を同行させれば古代迷宮の探索も容易でしょう。むしろまた襲撃を受ける可能性がある。ロクドナル君やティアナ殿下はこちらの防衛を頼みます」
そう言ってあたしたちを見る。
あたしはティアナを見るが顔を赤くされて向こう向いてしまう。
ティ、ティアナ!?
やっぱり昨日の事まだ怒ってる?
がっくりするあたしにアンナさんが不思議そうに話しかける?
「どうしたのですかエルハイミちゃん?迷宮の探索は嫌いですか?」
「いえ、そういうわけではないのですわ、ただちょっと」
「殿下と離れ離れになるのが嫌なんですね? ほんと、エルハイミちゃんは殿下の事が好きですね」
ぼっ!
そう言われてあたしは思わず頭から湯気出して赤面する。
「なななな、なにを言っているのですわ、アンナさん?」
慌てるあたしになぜかみんなが笑う。
ティアナもこっち向いて真っ赤になってちょっとうれしそうにしている。
あああっ、ティアナは好きだけどこうあからさまにいじられるとは!!
と、向こうが騒がしくなっている。
「こら、駄目だ! そっちへ行くな! ちゃんと取り次いでやるから待ってろ!!」
何やら衛兵と誰かがもめているらしい。
その声はどんどん近づいてきて、この部屋に入ってくる。
「何事じゃ!? 騒がしい!!」
「も、申し訳ございません! 先程異形の兜の者が目覚め、エルハイミ様に会わせろと! こら、ちょっとまて、お前!!」
衛兵をものともせず彼は入ってきた。
そしてあたしを見つけると同時にあたしの足元に膝をつく。
「女神よ、俺はあなたのおかげで助けられた。深く感謝する」
「はい? あ、あの、私女神様なんかじゃありませんわ! それにあなたを助けたのは私だけじゃありませんわ」
彼は頭だけあたしの方を見てこう続ける。
「俺にとっては女神同然だ、見知らぬ俺の為に傷を治し、新たなる腕まで授けてくれそして俺の為に涙してくれた。何もできない俺だがこの命尽きるまで貴女に使えよう。我が主よ!」
「ちょ、ちょっと! どういう事よ!! それにあなた一体何者なのよ!?」
ここまで静かだったティアナが割り込んでくる。
彼は短く「むっ」、と言ってからティアナたちに自己紹介をする。
「俺はショーゴ・ゴンザレス。とある貴族の護衛を行っていたのだが、ジュメルの奴等に我が主を殺され、俺は適正者だとか言われて奴らの実験台になった。奴らは俺の体を切り刻みいろいろなものを着けられたが最後の洗脳時に俺と一緒に実験台になっていた奴が魔力暴走を起こして爆発し、その時に俺は逃げ出したのだが、どうやら普通の人間ではなくなってしまったらしい。我が主の為に俺は奴らに復讐を誓い、事あるごとに奴らの目論見をつぶしまわっていたのだ」
なんか昔どっかで聞いたような話だけど、直接秘密結社ジュメルとかかわりを持つ彼の話だ、もっといろいろと聞きたい。
「そうするとあなたはあの組織と敵対関係と言う訳ですね? できればその秘密結社ジュメルについて詳しく聞きたいのですが」
アンナさんに聞かれ彼は首を縦に振る。
「ショーゴ・ゴンザレスとやら、貴殿の不遇は理解したが、今はウェースド陛下やティアナ殿下の御前、少し控えてもらえぬかな?」
剣のつかに手をかけたロクドナルさんがすごむ。
「むっ、そうだったのか? 王族の前か。それは失礼した」
彼はそう言ってロクドナルさんや陛下たちに素直に頭を下げた。
「このままと言う訳にはいかんな、場所を移ろう。ティアナ殿下よろしいな?」
そう言ってウェースド陛下は取り押さえにかかろうとする衛兵たちを制した。
* * *
「そうなるとそのジュメルと言う組織は全世界に散らばっているという事じゃな?」
ウェースド陛下は深い深いため息をついた。
彼、ショーゴ・ゴンザレスの知る限りこの秘密結社ジュメルと言う組織は古い歴史を持っているようでその組織力は既に世界各国に及んでいるとのことだ。
流石に詳しい場所までは知らないらしいが、その話を聞くだけで由々しき事態であることくらいわかる。
更にこの組織の目的がとんでもなかった。
今の世界は腐敗しているから全てを破壊して再生するのだという。
「奴らは英雄の力を研究していたが、それを人の手で再現することは出来ず、代わりにキメラを強化した化け物を作り上げ英雄たちに対抗させようとしていたようだ」
「なぜ英雄を敵視するのです?」
「魔人戦争で英雄が邪魔したせいで侵略が失敗したとか言っていたな。それに英雄と思っていた人間の洗脳をしても英雄ほどの力は出せなかったとも言っていたな」
「ちょっと待ってくださいですわ! 魔人戦争の英雄を洗脳したですって!?」
「主よ、すまないが俺も詳しくは聞かされていない。ただ奴らは英雄と同じ力が手に入らないのであればそれに匹敵する力を作ればいいと言っていた。どうやら俺はそれの実験台になっていたようだがな」
訳の分からない組織は黒の集団で、そしてその本当の名前が秘密結社ジュメル?
組織力は全世界に散らばっていてしかも昔からもめごとの裏に暗躍していた?
魔人戦争では英雄と思っていた人間を洗脳したって事はそれは英雄アノード=シュバルツってこと?
あたしは絶句していた。
師匠の話も思い起こし考える。
と、ティアナがわなわなとして彼に聞く。
「ショーゴ・ゴンザレスさん、もしかして十数年前に起こった北陸戦争もジュメルが絡んでいたのですか?」
しかし彼は首を横に振りこう言う。
「すまない、北陸戦争については聞いていない。しかし、可能性はあるだろう。俺が逃げ出したのはノージム大陸だった。多分場所的にはホリゾンより東のルド王国付近だと思う。」
ルド王国!
やはりかかわっていたか!
そうすると必然とホリゾン帝国も関与しているのでは!?
「だんだんつながってきましたね。しかし、問題は確たる証拠がない。もしショーゴ・ゴンザレスさんが証人に立ってもホリゾンは認めないでしょうね」
アンナさんがつぶやく。
ホリゾンにそれらの責を問い詰めても確たる証拠が無ければ意味が無い。
ましてや事が事だけにそうそう簡単には認めないだろう。
下手をすれば言いがかりだと言って宣戦布告されるかもしれない。
この世界で戦争するにも大義名分が無ければ他国からの協力は得られない。
師匠やティアナだってこの世界の平和を願って今まで頑張って来たんだ、そうやすやすと戦争されちゃ困る。
「ティアナ殿下、この件はガレント王国に持ち帰ってもらいたい。我が国はガレント王国の庇護を受けている。殿下の国に従うまでだ」
そう言ってウェースド陛下はもう一度深いため息をついた。
事が大事過ぎてノルウェンでは対処できないのだ。
当然何かあればノルウェンだってただじゃすまない。
大戦に成ればこの国だって巻き込まれるだろう。
「となればますます防衛力を上げないといけませんね。マシンドールの双備型をノルウェンにも急いで配備しなければなりません」
アンナさんの言葉にあたしたちはうなずく。
「さてそうしますとますます古代遺跡をもう一度調べる必要がありますな。エルハイミ君、アンナ君すまんがすぐに出発だ。確かこの迷宮は全部調べるには二日ほどかかると聞いております。ウェースド陛下、間違いないでしょうか?」
「マース教授殿、確かに二日くらいで調べられると思うが本当に護衛を着けずともよろしいのか?」
「なに、迷宮の中ではそれほど問題になりませんよ、それにエルハイミ君には強い味方が付いたようですしな」
そう言ってマース教授はショーゴ・ゴンザレスを見る。
「守るのだろう、君の新たな主を?」
「無論だ、我が主は俺の命に代えてでもお守りする!」
あのー、あたしの承諾無しに既に従者になってるんですけどぉ。
「ショーゴ・ゴンザレスさん、私はまだ私に従事することを認めていませんけど?」
「何をおっしゃる我が主よ! わが命御身に捧げると誓いました。どうぞお許しを!」
「という事だ、エルハイミ君強い味方が付いたではないか?」
「エルハイミ‥‥‥」
「エルハイミちゃん?」
「エルハイミ殿」
ぴこっ?
「エルハミ~なんか強そうなおじさんが味方に付くんだからいいんじゃないの?」
みんな様々な感情の目であたしを見る。
ああ、めんどくさいことになっちゃった。
でも確かにまたジュメルのような連中と遭遇したらあたしは戦える自信ないしなぁ。
仕方ない。
「わかりましたわ、でも無駄死にだけは許しませんわよ。せっかく救った命、大切になさい」
「はっ! 我が主よ!!」
こうしてあたしの従者が出来てしまったけど、ロクドナルさんやアイミがいない行動って初めてじゃないかな?
探索済みの迷宮だけど、何があるかわからない。
用心棒にはなるだろうからお願いするか。
「では、早速古代遺跡に行ってまいります。三日たっても戻らなければすみませんが応援を願います。エルハイミ君、アンナ君行くとしよう」
そう言ってマース教授は部屋を出ていく。
慌ててアンナさんとあたしはついて行くが、ティアナが不機嫌そうにぼそりと言う。
「エルハイミの浮気者」
えええっ?
「ちょっと、ティアナ、なんですのそれ!?」
「知らない! 早く行ってきなさいよ!!」
つんっとそっぽを向かれる。
あわあわしているあたしにマース教授からお呼びの声がかかる。
「ティ、ティアナこの事は後でゆっくり話しましょうですわ! 行ってきますわ!!」
「ふんっ! ‥‥‥気を付けてね」
最後の方はよく聞き取れなかったけど、あたしは慌ててマース教授たちを追うのだった。
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