第五章5ー15移動
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
姉さまのは凶器です!
窒息死してしまう!!(ティアナ談)
5-15移動
ゲートの魔法陣の光が収まり、あたしたちは地下の暗闇の中にたたずんでいた。
ここはファーナ神殿地下封印の間。
「【明かり】よ!」
アンナさんの魔法で明かりがともる。
四方を壁に囲まれたこの部屋唯一の扉が浮かび上がる。
「確か、扉はもう封印してなかったのよね?」
ティアナは前回エネマ司祭が言っていた封印は解除すると言う事を思い出しながら扉の取っ手をひねる。
ガチャリとした音がして扉は開いていく。
そしてその向こうに見える階段をあたしたちは登っていく。
ほどなく鉄格子に鍵がついた出口に差し掛かる。
あー、流石にここは鍵かかっているか。
ティアナは鍵を解除しようとして目の前を通る見習い神官に気付く。
「ファルさん!」
「うひゃっ!!」
驚いたファルさんはその場でしりもちをつく。
なんかデジャブ―。
「えっ? ええっ? ティアナ殿下ですか?? それにエルハイミさん!? ま、まさか乳繰り合う為にわざわざここへ来たんですか!?」
「なんでそうなるのよ! それよりエネマ司祭は?」
「エネマ司祭はお出かけ中ですよ、大丈夫、私はお二人の事応援していますから!」
胸の前でこぶしを握りふんふんっ! と力むファルさん。
やっぱりまだ誤解が解け切っていなかったのね‥‥‥
「それよりここ開けてくださいましな、ファルさん」
あたしの言葉にファルさんはあわあわ言いながら鍵を開けてくれる。
あたしたちは簡単に同行した人たちを紹介してから急ぎなので馬車の準備をお願いする。
「なんか大所帯ですね。今度も緊急なことなのですか?」
「うん、急ぎと言えば急ぎなんだけどね。ノルウェンまで行かなきゃならないのよ」
「北のノルウェンですか、相変わらず殿下はお忙しいですね。じゃ、準備してますから応接室で待っていてください」
ファルさんはそう言ってパタパタと馬車の準備に向かった。
そしてしばらくして準備ができたと伝えに来てくれた。
あたしたちはさっそく馬車に向かう。
「エネマ司祭が不在なのは残念だけど、よろしくお伝えしてねファルさん」
ティアナはそう言って馬車に乗り込む。
今回は留守のファルさんが一緒に王城に行くわけにはいかないので自分たちで馬車を動かすことになった。
ロクドナルさんがいるので馬車を動かすのも問題無いがあとで誰かに馬車の回収してもらわなきゃならない。
「それじゃ、悪いけど後で王城まで馬車を取りに来てね。またそのうち寄らせてもらうわ」
「あ、はい、それでは道中お気をつけて。お二人のお幸せを祈っております!」
なんか最後の言葉が気になるが先を急ぐのでこれ以上気にしないことにした。
今から動けばすぐに王城へ着く。
それから国王陛下に謁見させてもらってから議会に準備させノルウェンに向かわなければならない。
アンナさんの話だとノルウェンまで早馬で二日、馬車でも三日近くかかるだろうとの事。
往復で六日は覚悟しなければならない。
あたしたちの馬車はファーナ神殿を後に出発した。
◇ ◇ ◇ ◇
「面を上げるがよい」
国王陛下の御前であたしたちは謁見を許されていた。
「報告は聞いておる。すでに議会には話が行っておりそなたたちの出立の準備も済ませておる。昨日にはノルウェン王国にも早馬で使者を送り出しておる」
「流石陛下、お早い動きです。それでは私共も明日には出立させていただきます」
ティアナがみんなを代表して国王陛下に再度頭を下げる。
みんなも同様に陛下に頭を下げる。
「今宵は英気を養うがよかろう。ささやかではあるが宴を開く。皆の者準備をせよ!」
はっ!
謁見の間にいた家臣たちは陛下のお言葉に一礼して、各々が準備にかかる。
あたしたちは陛下にお礼を申し上げてからいったん退席する。
* * * * * *
「ふう、思っていた以上に準備が進んでいたわね。助かったわ」
今は控室でみんな一息入れているところである。
ティアナは気心知れた人以外居ないので猫かぶっていない。
「殿下、一応王城ですので言動にはご注意ください」
アンナさんがそう言ったと同時にいきなり控室の扉が開いた。
「ティアナ! 戻っているのですね!?」
いきなり入ってきたその女性はあたしも何度か遠目に見たことのあるティアナの実の姉、アテンザ様だ。
ティアナとよく似ていて美しい顔立ちに勝気な目つき、真っ赤な髪の毛はまさしく姉妹の証拠、ティアナもあと数年すればこんな感じになるのじゃないかな?
胸以外は‥‥‥
「あ、アテンザ姉さま? 何故王宮に戻られているのです! フリッタお義兄様の所におられたのではないのですか!?」
何故かたじろぐティアナ。
そんなティアナをアテンザ様はいきなり抱きしめる。
「ああっ聞きましたわよ! なんて可哀そうなティアナ! 国の為とは言えその身を差し出してまで戦を止めるとは流石、私の妹! あなたがここ数日の間に戻ると聞き駆けつけたのです!」
そう言って更にその巨大な胸にティアナを抱きかかえる。
あ、胸の谷間にティアナの顔がうずまってもがいてる。
「くっはっ! アテンザ姉さま私を窒息死させるつもりですか!?」
何とかその呪縛から逃れたティアナが抗議する。
「かわいい妹を窒息死させる姉がどこにいますか! ああ、ティアナ、そんなことより聞きましたわ、胸の大きさで【制約】ギアスまで持ち出して勝負を挑んだそうですね!? 私に任せなさい。揉んで摘まんで大きくなるまでずっとマッサージしてあげますわよ、うふ、うふふふふっふっ」
あ、アテンザ様??
なんか後半に変なこと言ってない?
「んんっ、アテンザ様、ご無沙汰しております。アンナ=ドーズです。申し訳ございませんがこれより陛下のご用意してくださった宴にティアナ殿下も出席しなけらばなりません。お召し物をお着換えいたしませんとそろそろお時間となります」
アンナさんに言われて初めて他にも人がいた事に気付いたアテンザ様はぱちくりと瞬きをしてから んん、と咳払いしてよだれを拭き取り身なりを整える。
「これは失礼、我可愛いい妹を前に少々興奮してしまいました。皆さんごきげんよう。アテンザ=ルド・シーナ・ウィルソンです」
そう言って優雅に挨拶をするも先ほどの一幕があるのでみんなどこか苦笑気味だ。
アテンザ様は既に結婚されていて本来なら嫁ぎ先のウィルソン侯爵家にいるはずだが話からするとティアナに会いに来たようだ。
「ティアナ、安心なさい。ノルウェンには我がウィルソン家が近い、私も一緒にノルウェンに同行しますから」
「はいっ? 姉さまもいっしょに来るんですか!?」
「可愛い妹が苦しんでいるのを黙ってみているわけにはいきません。こう見えても商売の交渉は得意なんですのよ!」
ティアナはなんか嫌~な顔している。
アンナさんを見ると苦笑している。
大丈夫なのかアテンザ様!?
あたしたちはこの強引な姉の申し出を断り切れず同行する羽目になってしまった。
はぁ、宴の中で陛下にもご報告しなきゃならないよね、これって。
あたしはティアナと顔を合わせて二人でため息をつくのだった。
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