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戦い終えて

 私達が人面虫を倒した直後、NW運営はNWの安全を確保したとの声明を出し、即時に住人の受け入れを開始すると発表。

 24日の0時、クリスマスイヴになった瞬間に魂と記憶をNWに移す大規模な転送作業を実行する。条件はNW専用VRを装着し、NWにログインしていること。そこでイヴさんがNos.0【ワールド・エスケープ】にてNWを独立させる。ただしNW社は必ずしも魂の転送が成功する保証はないと前置きしている。記憶を転送する技術は100%確立しているが、魂の解明にはNWも手を焼き、100%の確率で成功するまでに持っていけないのだ。


「魂の転送かぁ」

「不安? マリ」


 NW社の発表した声明を思い出してつぶやいた私に、隣で座っていた沙耶が肩を抱き寄せて私の体を自分の方へと押し倒す。私はそのまま体重を沙耶に預けて、沙耶の肩に頬を乗せながら続けた。


「私は大丈夫、ただ、雪ちゃんが……どう思ってるのかなって」


 私が視線を向けた先にはお母さんと雪ちゃんがいる。そして向かいには沙耶の母親が。ここはNW社が用意したトレーラーハウスの中であり、かなりの広さのある空間になっている。そのトレーラーハウスの中にいるのは私、沙耶、会長、双海さん、ハヅキさん、そしてその家族である。


 このトレーラーの向かう先はNW社。NW社内にある地下室には様々な設備があり、その中のひとつがコールドスリープだ。NWに記憶と魂を転送した後、今までの身体は魂も記憶もない状態で、その場で人形のように置き去りにされてしまう。そういった事態に備えてNW社が用意したのがコールドスリープ。地球が死の惑星になる以上、正直あまり意味を成さない行為なのだが、それでも体を野ざらしにするよりはキッチリと管理してもらったほうがいいだろうという事で、人面虫を倒してNWに平和をもたらした私達とその家族にNW社から招待が届いたのだ。


「大丈夫だよ、きっと上手くいく。マリが命を賭けて救った世界だもの」

「そうだといいなぁ……ていうか、仲良いね、私達の母親」


 これからNWへの転送をしにいくというのに、私の母親と沙耶の母親は緊張した様子など一切見せずに、笑顔で談笑している。

 うちのマリがどうだの、お宅の沙耶ちゃんはしっかりしていて羨ましいだの、完全に意気投合して仲良くなっているではないか。


「肝が座ってるっていうかなんというか、私達の母親なだけあるね」

「どういう意味?」

「命賭けでNWの驚異を排除するマリも相当肝が座ってるってこと」

「あはは……まぁ沙耶に出会う前の私からは想像できないけどね。沙耶に引っ張られてきただけだよ」

「どうかな、マリは元々強い心と勇気を持っていたと思うよ。ただ、その勇気が心の奥底から表に出てきたきっかけが私なら、嬉しいけどね」

「沙耶……えへへ、きっとそうだよ」


 私は沙耶にギュッと抱きつき、顔を寄せていく。いつもならここで沙耶はキスをしてくれるのだが、今日の沙耶は慌てて私の顔を掌で押し返した。


「(ちょっとマリ! 場所考えて!)」

「(あ、ついうっかり……って、沙耶だって私の肩抱いてたじゃん!)」

「(ついうっかり……いや、癖ってこわいね)」


 人気の少ない通学路でスリルを求めてキスしてきた沙耶も、さすがにこの状況では冷静な判断ができるらしい。

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