偽りの弓
「ふむ、つまりホワイトフードはその森に出没すると?」
「はい、明らかに私達を見てから逃げたので……」
ホワイトフードらしき人物を目撃した三日後、私と沙耶は再び例のカフェでホームズこと佐藤サクラさんと会っていた。
「お手柄だよ、マリくん。では、さっそくホワイトフードの目撃ポイントに向かおうか」
「今からですか?」
「ああ、現地で落ち合うことにしよう」
「あ、はい」
私達は席を立って支度に戻ろうとするが、そこで沙耶が振り返ってホームズさんに声をかけた。
「準備、しっかりしてきた方が良いですよ。戦う相手は相当強いですから、サクラさん」
「はは、確かにね。でも大丈夫、僕はこうみえてもNWをやり込んでるから足手まといにはならないよ」
「それを聞いて安心しました。じゃあ、いこっか。マリ」
「うん」
◇
「じゃあマリ、打ち合わせ通りにね」
「うん! 絶対にこの事件を解決してみせるよ!」
家の玄関前まで送ってもらい、沙耶と別れた私は戸締まりを確認してから自室に向かってNW専用VRを手に持った。
この機械は私達の命を救う可能性もあれば、あっさりと奪い取る可能性も秘めている。
もっと自覚しなければならない、私は命を賭けて犯人を追跡しているんだって事を。
私は「よしっ!」っと気合いを入れてから専用VRを装着し、NWにログインした。
◇
「マリ、こっち」
ログイン直後に、既にそこにいた沙耶が私を手招きする。
先日の探索の後、テレポを使ってトリデンテまで戻っていた私達は、テレポを使って再びホワイトリトンまでワープして、スノウさんに軽く挨拶をしてから、以前ホワイトフードが出没した地点まで赴いた。
私達の考えが正しいなら、犯人であるホワイトフードは、おそらく今日、もう間もなくこの場所を訪れるはずだ。
私を倒すため……いや、リアルの私ごと殺すために。
そして歩いてくる人影がひとつ、手には弓を持って、頭からフードを被り、顔は見えない。
名前の表示は当然unknownだ。
「マリ、お願い」
「うん、まかせて」
沙耶の言葉を合図に私はスキル【アナライズ】で迫ってくるホワイトフードをスキャンする。
「推測通り……みたい」
「あいつッ…!」
沙耶は今にも飛び掛かりそうな剣幕で、手にした剣を握り締める。
その気持ちは私も同じだ。
するとホワイトフードは私達の前方、10メートル付近で立ち止まる。
「あなたが……あなたがホワイトフード……変死事件の犯人なんですか?」
私の問いに対して、何も答えようとせず、ただ無言で弓を構え、私に向けて矢を射る。
それを見た沙耶は私の前に入り込み、盾を構えて迎え撃つ……が、ホワイトフードの放った弓矢は盾を貫通し、盾に守られていた沙耶に直接ダメージが入ってしまった。
「っ! この技……やっぱりアンタがホワイトフードの正体か……偽ホームズ、佐藤サクラ…………いや、連続変死事件の真犯人、Nos.18 鷹の目のイーグル!」




