死の宣告
「できたー!!」
船を作り始めてから数日後、私達はようやく完成の時を迎えた。
【ウッドマスター】の効果により、想定していた船よりも相当大きく、部屋の数は30を越え、広さも十分でインテリアなどを飾る余裕もある。
更にはキッチンなども完備し、豪華客船とまでは行かなくても豪華な海賊船程度にはなた気がする。
「おおう! なんかもう船で暮らせそう」
双海さんはさっそく船に乗り込み、広い甲板ではしゃいでいる。
確かに船を家の代わりに使っても何一つ不自由しないレベルの快適さかもしれない。
「さて、じゃあトリデンテ全員が空いてる日を確認して北海道地方に行く日を決めようか」
調査という目的があるのは主に私と沙耶だが、新しい地に行くときは、なるべくトリデンテ全員で足並みを揃えて行きたいので、全員の予定が空いてる日を確認して北海道地方への旅立ちを決めた。
「じゃあ、次の日曜日ね。進水式もそこでやろうか」
進水式とは船を初めて水に触れさせる儀式らしい。
私達は海にクラフトで囲いを作り、水を抜いたスペースで船を作っていたので、まだ船は水に触れていない。
囲いを破壊した時に一気に水が流れ込んでそのまま出港出来るという仕組みだ。
「あ、船の名前は?」
私は船に名前がついていないことを思い出して沙耶に聞く。
「船の名前も進水式の時に付けるのが一般的らしいわよ」
「へ~、じゃあ、その時にみんなで意見を出しあって決める?」
「うん、そうだね。日曜日までに一人一個は船の名前を考えてくるように!」
「は~い!」
まるで先生と生徒のような掛け合いで返事をして、今日はログアウトすることになった。
◇
ログアウトしてから自室を出てリビングへ行くと、ソファに寝そべってテレビを観ていた雪ちゃんが私に声をかけてきた。
「お姉ちゃん、手紙来てたよ」
「ん……手紙?」
手紙……とはなんだろう。
メールやメッセージ、SNS等でいくらでもやり取りが出来るこの御時世、わざわざ手紙を送ってくる知り合いなどいない。
つまりは知り合いではない誰かが私宛に手紙を送ってきたという事だ。
しかしその封筒は明らかにどこかの企業が事務的に送ってくるものとも違う。一般人が作ったであろう手織りのレター、その色は真っ黒で、中央に赤いドクロマークのシールで封を止めてある。
「趣味悪っ! ロックな知り合いでもいるの?」
「心当たりないけど……」
「開けてみてよ」
「え? い、いや、もしかしたらラブレターかもしれないし部屋で読むね」
そんなセンスの悪いラブレターを家に送り付けてくる人は読むまでもなくアウトだろ! という雪ちゃんの声を背に私は下りてきたばかりの階段を再び上がり、自室にて真っ黒なレターを開封する。
次ハ オマエダ 復讐ノ時ダ
オマエ ノ 死ヲ持ッテ 完結スル




