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Project NW

『うおっほん! えー、美しい光景ではありますが、目のやり場に困りますね』


 闘技場のド真ん中で抱き合う私達を見て、たまらずスキュラ氏がツッコミを入れる。


「ご、ごめんなさい」


 私は沙耶から離れてスキュラ氏に頭を下げ、沙耶は大歓声の中で観客に向かって手を振っている。

 ランキング1位の私が負けたことにより、ランキング2位の沙耶が入れ代わりでトップに立ち、新チャンピオンになったのだ。


『優勝おめでとうございます。優勝賞品のマグマストーン、そして船を改良点出来る素材の数々を贈呈いたします』

「ありがとうございます。私達の村に温泉を作るのが夢だったので、嬉しいです」


 沙耶はマグマストーンを受け取るとトリデンテの皆が座っている方向へウインクしてピースサインをする。

 みんな喜んでいるが、一番はしゃいでいるのはバンザイをしてピョンピョンと飛び跳ねている双海さんだ。

 そういえば双海さんは修学旅行の時も露天風呂と室内風呂を両方入るくらい楽しんでたもんね。


『え~、それではサーヤさん、優勝したお気持ちと今後どのようなチャンピオンになっていきたいかをお願いします』


「キングやクイーンが盛り上げてきた闘技場に参戦するときは、正直勝てるとは思っていませんでした。けど、1回戦でマリが王者であるキングを相手に奮闘したのを見て、私の心にも火がついたというか、頑張らないとって気持ちになりました。そして闘技場を勝ち抜いていく事で自分に自信を持てたし、観客の皆様からの声援を受けて幸せな気持ちになりました。こんな素晴らしい経験をさせてくれた皆様に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました」


 沙耶、中学生なのにコメントがしっかりしてるなぁ。

 私にあんなコメントが出来るだろうか、私は頭の中でシミュレーションしてみる。


『私がここまでこれたのは沙耶のためであり、沙耶のおかげであり、沙耶を目標にしてきたからです! これからも大好きな沙耶のためにがんばりましゅ!』



 な~んて、えへへ。



「……マリ、マリ!!」

「うん、大好きだよ、沙耶」

「……それは知ってるってば。マリからも一言だって」

「はっ……!」


 観客の笑いと歓声が入り交じっている。

 やってしまった。


『ハハッ、いいですよ。今の一言に全て凝縮されているみたいですからね』

「お…仰る通りです」

「それから、今後についてですが……」


 笑いの渦の中、沙耶が一呼吸置いてから宣言する。


「王座は返上したいと思います」

『な、なんと!』


 スキュラ氏が驚きの声をあげるのと同時に観客もざわめく。

 私はというと、特に驚きはなかった。

 これは試合開始前から沙耶と話し合っていたことで、チャンピオンになってもランキング1位と2位の座は返上して終わるつもりだったのだ。


『理由は?』

「闘技場は素晴らしい場所で、とてもいい経験をさせてもらいました。けど、私達にはまだまだ他にやりたいことがいっぱいあって、闘技場に割ける時間少なくなってしまうと思うから……。今はトリデンテの皆とゆっくり過ごすのが楽しいんです」


『そ、そうですか。闘技場に新しい風が吹くと思ったのですが、残念です』


 観客のざわつきはまだ収まらないが、クイーンが壇上に上がり、観客に向かって説明をする。


「もともとは私が無理に出場してもらったのよ。今回だけでも出場して闘技場を盛り上げてくれたことに感謝しましょう」


 するとクイーンの声を聞いた観客達は一人、また一人と拍手をしながら立ち上がり、スタンディングオベーションで私達を称えてくれた。

 私達は観客に向かって感謝の気持ちを示しながら頭を下げて回った。



『おめでとう、サーヤちゃん。それからナンバーズカップに参加してくれた全てのプレイヤーに感謝するわ』


 そう言いながら今度はイヴさんが壇上に上がってくる。


『決勝でNos.が見られないのは想定外だけど、また新たな発見があって、研究としてはとても有意義だったわ』


 それはそうだろう。

 私もまさか自分のスキルに勝手にロックがかかるなんて思ってもなかった。


『Nos.とは想いの力。誰にでも発現する可能性のある力よ。まだ発現していないプレイヤーにだって強い想いがあれば必ず発現するわ。ここにいるマリちゃんのようにイリーガルな発現もあるかもしれない。ナンバーズカップを観戦した皆も是非とも強い想いを持って進んで頂戴」


 NWをプレイしている以上、誰しも可能性がある。

 その言葉は観戦している観客に勇気と希望を与える言葉だろう。

 自分の中にはどんな力が眠っているのかワクワクしながらプレイするのは実に楽しいはずだ。



『それから、今日はこの場を借りて重大な発表があるわ』


 イヴさんはそう言うと、観客をぐるっと見回して少し微笑む。


『あの会見から随分と長く待たせてしまったけど、いよいよ時が来たわ。きたる12月24日、第一次NW移住者を募集します』

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