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ハンター

「ザ・ハンターかぁ」


 沙耶のクイーンに勝った後の控え室で私は次の対戦相手を再確認していた。

 次の対戦相手の【最北の狩人】イーグル。

 今大会が初出場なので、データは多くない。


「なんでザ・ハンターって呼ばれてるんだろう」

「狙った獲物は逃がさない、というのが由来らしいですわね。追尾系のスキルを多用するみたいですわ」

「追尾かぁ、なるほど」

「マリさん、あまりイーグルさんの試合を研究していないのですか?」

「あはは、時間なくて」


 キングを倒して気が抜けてるというわけでもないが、受験勉強が疎かになっていたのが気になって対戦相手の研究よりも勉強を優先していたのだ。

 闘技場も大事ではあるが、夢中になるあまりに沙耶と同じ高校に進学出来なかった、なんて未来は絶対に回避しなくてはならない。


「ちなみに【最北の狩人】の最北って……」

「北海道から遥々やってきたからそう呼ばれてるらしいよん」


 質問ばかりしている私に今度は双海(アクアニ)さんが答えてくれた。

 北海道から沖縄って凄い距離だ。闘技場に参加するためにそれ程の長旅をしてきたというだけで敬意を表したくもなる。


「最北さんはどんなNos.を使うの?」

「マリっち本当に何も調べてないな。イーグルのNos.は【鷹の眼】だよ」


 鷹の目は障害物を貫通して対象にダメージを与える特性スキルらしい。

 例えば盾で防御しようとしても、貫通効果が付加された攻撃は盾によるダメージ軽減を無視してダメージが入る。


「マリが相手を研究出来なかったのは私のクイーン対策に付き合ってくれたからでもあるし仕方ないよ。ごめんね」

「沙耶、やめてよ。単純に私が勉強とかで忙しかっただけだよ」


 実際、私はクイーン対策に関してはそれほど関わっていない。


「マリちゃん、そろそろ試合始まっちゃうよ」


 双海(アクアニ)さんの言葉を聞いて時計を見ると、準決勝第二試合が始まる時間だった。



「おっと、遅刻しちゃう! いってきます!」


 私は急いで準備をして控え室を後にする。


「大丈夫か、あれ」

「なんだか気が抜けてるような感じでしたわね」




 ◇




「よろしくお願いします、イーグルさん」


 私は選手入場口に立つと、既にそこにいたイーグルさんに挨拶をする。


「マリ・トリデンテか……」


 イーグルさんは女性PCで、身長は女性にしては大きめで170cmくらいあるだろうか。

 真っ赤なコートに紺のズボン、長いブラウンのブーツを履いて、頭には楕円形の羽帽子。

 旅人や詩人のイメージにも近い。

 どうやら武器は弓らしい。


「ホワイトフードを知っているか?」

「はい? ホワ……?」


 イーグルさんは挨拶を返すわけでもなく、なんの脈絡もなく私に意味不明な質問を投げかけてきた。


「ホワイトフードだ」

「白いご飯……白米ですか?」

「……foodではなくhoodだ」

「ああ、帽子……というよりは頭巾の事ですね」


 white hood つまり、白頭巾とでも訳すのだろうか。まったく心当たりのない単語だ。

 アイテム? 人名? モンスター? それが何を指す物なのかもわからずに混乱する。


「いや、いい。貴女がホワイトフードではないようだな」

「はぁ、まぁ」


 という事はホワイトフードとは人名なのか。


「ふむ、失礼した。その強さなら、もしやと思ったのだが違ったようだ」

「ん、何かあったんですか? 白米さんと」

「だからhoodだと。それに米はライス……まぁ、いい。改めてよろしく頼もう。私がイーグルだ」

「マリ・トリデンテです! よろしくお願いします!」


 結局はぐらかされてしまい、ホワイトフードについての詳しい説明はしてもらえなかった。

 あんな含みを持たせた問われ方をしたら気になるなぁ……。


「はっ! まさかそれが狙い!?」

「…? 何がだ?」

「あ、いえ」


 私の集中を乱そうとか、そんな事を……するわけないか。

 実況のスキュラ氏の合図でお互い入場し、武器を構えて戦闘体勢に入る。

 沙耶は一足先に決勝に進んだ。この試合に勝てれば沙耶との対戦になるんだ。


『試合、開始!』


 イーグルさんは開始と同時に弓を射る。

 単発攻撃は回避しやすい。

 けど、当然単発攻撃で終わるはずもなく、そのまま乱れ撃ちに繋いでくる。


 頭上から降り注ぐ20本の矢に対して、私はクラフトの壁で防御を試みる……が、予想だにしない事が起きた。

 いや、予想しておくべきだったのかもしれない。


 イーグルの【乱れ撃ち】 → マリに 630 のダメージ


 イーグルさんの攻撃は、私が展開したクラフトの壁をすり抜けて勢いよく襲いかかる。


「クラフトした壁を……」

「私の【鷹の目】は防御を許さぬ絶対攻撃。そして私はキングに鷹の目をぶつけるつもりだった……貴女がキングに勝つまではね」


 鷹の目の効果をもってすれば、キングの金剛不壊を破る事が可能だったということだろう。


「マリ・トリデンテ、アナタには敬意を表する。誰も成し得なかった打倒キングを実現させ、No.1の座をその手にした……だが、私が一回戦でキングと対戦しても私が勝っていたと自信を持って言える。確かめようか、どちらが新しい風になるのかを」


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