抽選会
オキナワ地方に上陸してから、真っ先に向かったのは闘技場。
合計16名が参加するトーナメントの組み合わせ抽選会があるからだ。
巨大な円形のスタジアムは収容人数2万人という規模を誇る。
トーナメント出場登録は既に済ませてあるので、後は抽選を待つだけだ。
ランキング1位のキングと2位のクイーンは別の山に分けられ、この二人が決勝まで当たることはない。
日程は1日目に一回戦全8試合、2日目は4試合、3日目に準決勝2試合、そして最終日に決勝をおこなう。
「私のランキングは……100000位」
いわゆる最下位だ。会長は99999位、沙耶は99998位。
だが、この闘技場のシステムは単純明快。ポイント制ではなく入れ替え制だ。
例えば100位が50位に勝てば、100位だった人が50位に、逆に50位だった人は100位になる。つまり現在最下位だろうとも上位ランカーを一人倒すだけで順位は跳ね上がるのだ。
とりあえず私が目指すのは1勝かな。Nos.である沙耶と会長と違って私は期待値も高くないはずだし。
『さぁ、待ちに待ったNos.トーナメント! 抽選会を始めるぞ!』
会場に響き渡る声の主は、どうやら闘技場の実況者のようだ。
「クイーン、あの実況ってプロのアナウンサーとかなんですか?」
クイーンの横にピタリと付いて立っている双海さんが言った。
「あれは闘技場の設立者、スキュラ氏よ。最初は選手として出場していたけど、最近はもっぱら実況しているわね」
「はえー、なるほどなるほど。キングは来てるんですかね?」
「アイツはいつも特等席でふんぞり返っているわ。ほら、あそこ」
クイーンが指を指した先、闘技場の一番高い場所に特等席が用意され、足を組みながらそこに座っている。
金色の鎧、金色の兜、金色の盾、金色のマント。
「…金好きすぎない?」
目に毒な金まみれの装備を見て沙耶が呟く。
「キング曰く、ゴールドは王の証らしいから」
「ゴールド……確かにそうですわね」
会長だけ納得してるが、それもそのはず。だってキングが装備している金色のマントは会長が装備しているゴールデンマントと同じものだからだ。
『さぁ、まずは開幕を飾るクイーンの相手を決めるぞ』
まずは右の山にクイーンが振り分けられ、左の山にキングが振り分けられる。
そこから残り14名を抽選で順番に当てはめていく抽選方式だ。
まずは開幕戦であるクイーンの相手を実況者兼闘技場オーナーであるスキュラさんが引き当てる。
『クイーンの対戦相手は……Nos.7 【ファストアリア】のリンだ!』
「へぇ…」
「そんなっ…!」
面白そうだ、と不敵に笑うクイーン。
対戦したくなかったと困った顔をしている会長。
対極的な反応が周りにいた私達をも戸惑わせる。
「闘技場に出場するという時点で起こりうる対戦だったはずよ。リンちゃん、遠慮なしで全力でぶつかりましょう」
クイーンが手を差し伸べ、悲痛な表情だった会長はゆっくりてスローモーションのようにその手を取る。
別に対立するわけでもなく一種の競技として対戦するのだ。そこまで戸惑う程のことでもないのだが、やはり釣り対決でコンビを組み、賢者のローブまでプレゼントしてくれたクイーンと戦うのは抵抗があるのかもしれない。
「私はクイーンの山か」
会長とクイーンのやり取りに夢中になっているうちに沙耶の抽選も決まり、どうやらクイーンの山の一番右側に入ったようだ。順当にいけば準決勝でクイーンor会長と当たることになる。
私の名前はまだ呼ばれていない…ということは、つまりキングの山だ。
『さぁ、それではキングの対戦相手の抽選を始めるぞ!』
スキュラ氏はキングの一回戦の相手を決める抽選を開始する。
キングと対戦する相手は基本的に何も出来ずに終わることが多く、ネット上ではキングの試合は公開処刑とまで言われている。
そして今回、その公開処刑をされる罪人に選ばれたのは……。
『Bブロック、第一試合。キングの対戦相手は……小さな村の無名の新人、【数合わせ】のマリ・トリデンテ!』
そう、めでたく公開処刑されるのは……私だ。




