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アナタには、この名前を

 ファミリーネームを決めた私達が次に考えるのは当然、生まれてくるNCの名前だ。


 さっきの安直オブ安直な思考でいくと……


「マヤとかサリーとか?」

「結構可愛いね。問題はNCが気に入ってくれるかだけど」


 生まれた瞬間から反抗期だったら、どうしよう。そんな名前イヤだって拒否されたりしないだろうか?

 いや、NCは私達の記憶から一般常識を学んでいるはずだから、私達が良いと思った名前はNCにも受け入れてもらえる可能性は高いか。


「じゃあ、候補をまとめようか」


 まずは私と沙耶から一文字ずつ取って組み合わせた名前

【サリー】【マヤ】


 次は海の近くにあるトリデンテをイメージした

【ナギサ】【アオイ】【ナミ】


 二人の思い出の【ハナビ】

 他にはヒビキ考案の【アリエッタ】

 葉月さん考案の【ユーリ】

 会長考案の【MS・Jr】


「どれも捨てがたいわね」

「会長のMS・jrってなんだろう…」

「マリとサヤの子供でMS・Jrってことらしいわよ」


 なるほど、やっぱり会長は独特なネーミングセンスだ、でも、アルティメットキャベツ太郎よりは良いかな…。


「じゃあ、一番良いと思った名前を同時に挙げようか」

「うん、せーの……」





 ◇





 ― 9月7日 ―


 NCを作ったあの日から一週間、名前も部屋も装備も用意して私達は今か今かとNCの誕生を待ちわびる。NC誕生までのタイマーは5分を切っていて、私は緊張で完全に無口になってしまっている。


「マリ、緊張が体全体に出てるよ」

「……うん」

「大丈夫かな。NCが生まれたら興奮で倒れたりしないでね」


 約束は出来ない。だって沙耶とキスした時とは別の意味で心臓が破裂しそうなくらい脈打っているんだもん。


「手、握る?」

「え、殺す気!?」

「失礼な」


 今の状態で沙耶の手を握ったら、更に心臓が加速して死んでしまいそう。しかし、沙耶は有無を言わさずに私の手を優しく握りしめた。このままでは死んでしまう!と、思ったのだが、不思議と私の心はどんどん落ち着きを取り戻していった。

 そっか、最近は沙耶にドキドキさせられっぱなしだったけど、本来はこんな風に心安らぐ穏やかな存在なんだよね。


「ありがとう、沙耶」

「うん」


 落ち着いた私は沙耶に寄り添って、生まれてくるNCを待つことにした。




「……おい、ウチ達がいること忘れてないか」

 私と沙耶の後ろでヴォイスを抱えて座っているヒビキが呟く。


「初めて会った時も思ったけど、この二人凄いね…」

 忙しい中、NCを見るためにログインしてきた葉月さんは顔を赤くして、目のやり場に困っている。


「見慣れた光景。ワタクシは、いい加減慣れましたわ」

 壁に寄りかかった会長は、ため息をつきながら言う。



 私達のNCが生まれる瞬間を見ようとトリデンテ全員が集まっているのだ。


「わ、忘れてませんよ!」

「ウチ達のことを忘れてないのに、あれだけ見せつけるのもある意味凄いな」

「そ、そんなことより、そろそろですよ!そろそろ生まれます!」


 タイマーを見ると、残り30秒。


 NCシステム用にクラフトしたベッドに、どこからともなく青い蝶が集まり、NCの体を形作っていく。おそらく、これがNC誕生の演出なんだ。






 そんな蝶を眺めながら、8月30日の出来事を思い返す。


 あの日、沙耶が伝えてくれた想いが、アナタが生まれるキッカケなの


 私の心の中に、いつまでも残り続ける記憶


 だからアナタには、この名前を送るね


 おはよう、ハナビちゃん。

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