今度は笑顔で
― 9月2日 ―
沙耶とNCを作ってから2日後、私達はマイホームで、生まれてくるNCのために下準備をしていた。
「名前、どうしよう」
生まれてくるNCに対して、私達が最初にやるべき事は名前を決めてあげることだ。ヴォイスの名前を決める時は、お互いに譲らなかったから、今回はしっかり相談して二人で決めるんだ。
まずは私達家族のNWでのファミリーネームを決めないといけない。ファミリーネームとは、いわゆる苗字のこと。私の名前は「マリ」だから、ファミリーネームが「カンザキ」なら「マリ・カンザキ」ということになる。
「沙耶、候補はある?」
「ん~、現実の苗字そのままに、神崎、姫宮。もしくは組み合わせるとか」
まさに安直オブ安直。
とりあえず、その線で考えてみることにした。
「カンミヤ、ヒメザキ……なんかしっくりこないね」
「とはいえ、リアルネームっていうのも…」
さすがに名前がリアルネームに近い二人なので、ファミリーネームまでリアルネームにするわけにもいくまい、と別の方向で考えることにした。
「じゃあ、好きなものは?」
「え、う~ん……マリ」
「私も!沙耶!」
「えへへ」と二人で照れ笑いを浮かべる。…って違う!今はこういうことしてる場合じゃなくて!
私は、何か良い案がないかNWでの生活を振り返る。NWを始めて、沙耶に出会って、セーラさんの村作りに加わって、トリデンテで様々な経験をしてきた。だから私も沙耶が大好き、そしてトリデンテのみんなが大好き。ならば…
「ファミリーネームはトリデンテにしちゃダメかな?」
悲嘆に暮れていたあの時と違って涙はない。
今度は笑顔で沙耶に問う。
「そうだね。いいと思う」
沙耶は、あの時と変わらない優しい笑顔で頷いてくれる。
私達のファミリーネームはトリデンテ。
沙耶だけじゃない、会長、ヒビキ、ヴォイス、葉月さん、イヴさん、そしてセーラさん。トリデンテに関わった全てが家族だって思えるから、この名前と一緒に生きていくんだ。




