依巳莉とセレン
アルが離れたことでオルドが行動を起こすと思ったが、素直に前を歩いてくれている。
それもこれも依巳莉が注意深くしてくれているからだと勝手に思っている。
「わりぃわりぃ。
あの姉妹が行きたいって言ってて離れなくてな。
セレンが一緒ならある程度は守れるから置いてきたが」
フェアリアの灯りが届かなくなった所でようやくアルが合流した。
「セレンって給士っぽいが、本当に闘えるのか?」
「ははは。
あいつをナメちゃいけないぜ。
普段こそあんな感じだが、キレた時は街の一つくらい平気に破壊出来るんじゃねぇか?
なぁ、依巳莉」
「ん?
そぉねぇ、一騎当千って言葉は彼女の為にあるんじゃないかしら。
それくらいに手がつけらんないんだもん」
あのアルを尻に敷いている依巳莉が言うのだ、きっと相当なものなのだろう。
そしてそれが本当であるなら、姉妹は任せておいて安心だろう。
「なぁ、レイヴ。
レイヴはよぉ、この辺りから出たことないんだよな?」
唐突にアルが質問を投げかけてきた。
「あぁ。
この旅で初めて外に出てるんだが」
「どうだい?
同じことを繰り返す暮らしよりさ、楽しくないか?」
「そうだな、驚くことから悲しいことまで色々あるが、今はがむしゃら過ぎて楽しむまではまだ、って感じだな」
「そうかそうか。
これから色々見て感じてみればイイさ。
土地によっても色んな違いがあるからな。
依巳莉の居たとこなんて、この辺りとは全く違った文化で面白かったぜ?」
「あたしんとこは独自の文化があるからね。
島国だとね、そうなっちゃうのよ」
「依巳莉は島国から来たのか。
どこにある島なんだ?」
「そぉね……どこと言われても、ここからじゃ凄く遠いよ。
ここから東大陸の端に行って、そこから船で何日か行った所だから」
聞いたところでウェルミニアを出たことがないので全くピンと来ないが、もの凄く遠い気がした。
それだけアル達はずっと旅を続けているわけだ。
「レイヴ、まだかにゃ?
もう眠いにゃ」
ミィの言葉に皆が納得しているようだった。
街を出てからずっと歩き詰めで疲れも溜まっている。
「どうなんだ、まだなのか?」
薄暗い中アルが地図を確認する。
「まだだな。
この先に小さな村があるハズだ。
そこで休むことにしようか。
んで、夜中に着くように行こうか。
オルドさんよ、村からはどれくらいだ?」
「半日もかからない。
昼過ぎに向かえば夜中には着くだろう」
もう日が昇ってもおかしくはない筈だから、十分休めるだろう。
しばらくすると日も昇り始め、話にあった村に着くとすぐさま宿へと直行し、部屋のイスにオルドを縛りつけアルと共に眠りについた。




