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93話 色々大事になってしまったんだが

93話です! 思ったよりも貴族の会話は書きにくいですね……。

 ――――状況を整理しよう。目の前でおかしなこと言い出した少年2人、こちらを見ているパーティーの参加者たち、こちらの状況に気づいた父親、現在座っている俺。こんな状況になったきっかけは隅で食べていた俺の応対が目の前の少年とっては気に障ったみたいで決闘を申し込んできた。


 本当にどうしてこうなった。確かに無視したことや座りながら応対したことは気に障るかもしれないがそれだけで決闘を申し込むか!?


「おい、どうした? 怖くなったのか?」


 こちらの返事がなかったことが怖気づいているように見えたのかそんな事を言い出した。


「ああ、すみません。いきなり決闘を申し込まれるとは思いませんでしたから……まあお断りしますけどね」


 決闘やった所でこちらに利益なんてないし、こちらを見ている父親が首を横に振っていたから断ったのだが……たしか決闘って受けないと恥みたいなことを礼儀作法の本に書いてあったのだが、まあいいだろう。


「はあ!? 決闘を受けないとか何言ってやがる! それでも男か!」

「ええ、男ですよ。そもそもあなたは私に決闘を申し込むという意味を理解しているのでしょうか?」

「理解? っは、礼儀知らずに躾をするだけだ。ガキの癖に大人ぶりやがって」

「その様子だと全く理解していないようですね……あなたはパーティーを荒らしているのですよ。無礼講の場で決闘などと……そもそも決闘はそれなりの理由が必要です。決して躾だけで行えるものではありません。それに仮に受けたとして、周囲の人々はどう思うのでしょうね?」

「カイ、そこまでにしなさい。後は、私に任せなさい」

「父上……はい、分かりました」


 いつの間にか近くまで来ていた父親が止めに入った。正直、まだ手を出さなくても何とかなると思うが……まあ父親がやってくれた方が確実か。決闘なんて受けたくないからね。


「私はフェンド・アインと言う。私の息子に決闘を申し込んだと聞いたのだが……間違いないか?」

「……はい! 言いました!」

「では躾をすると言っていたがどんな無礼をしたのだ?」

「この俺を無視したことですよ。そして注意しようと話したら喧嘩を売ってきたので決闘で躾をしようと思いまして」


 喧嘩なんて売ってないのに……逆にそっちが売っていたな。物は言いようか。


「と言っているが……カイ、間違いないか?」

「全くの間違いですね。逆にそう解釈している事に驚きました。ただ私は隅で食べていたところにひそひそと話していたのでチラッと見たら絡まれ、肩を掴まれて殴られそうになりました。勿論喧嘩など売ってません」

「カイはそう言っているのだが……どういう事かな?」


 先程まで出ていなかった威圧感を出して、少年に問いかける。少年は威圧感に怯えてか言葉を発することが出来なくなっている。


「あ……」

「随分と騒がしいようであるが、どうしたのだ?」


 ようやく声が出たと思ったら何時の間にかコールディ伯爵がすぐ横まで来ていた。こうしてみるとかなり大きいな。190cmは確実にある。


「これは、コールディ伯爵。そこの少年が私の息子に決闘を申し込んだそうで何故申し込んだのか聞いていたところですよ」

「決闘とは……穏やかでないな。して、何故申し込んだのだ?」


 父親はチラッと俺の方を見て、抱き上げた。まさかパーティー会場でこんな格好をするとは……恥ずかしい……。


「少年は私の息子を躾けるだけで申し込んだみたいです。決闘の重要性を理解していないようで困ったものです」

「本当に困ったものだな……少年、名を何という」

「レ、レボルト・アレーンです」


 そんな名前だったんだ……。そういえば聞いてなかったな。顔を見てみるとかなり緊張しているように見える。でもどこか嬉しそうだ……。何でこんな状況で嬉しそうにしているんだ……。


「レボルト・アレーン……レンウォー・アレーンの息子であったか。そなたの口からも聞きたい。何故決闘をを申し込んだのだ?」

「そ、それはアイン男爵の息子が私を無視したからですよ。注意しようとしたら喧嘩を売ってきまして……」

「ええい、もういい! 貴様はまだ礼儀を知らぬ子に何を求めているのだ! そのような理由で決闘をするなど恥を知れ!」

「ひ、ひいいいいぃぃぃ」


 コールディ伯爵の怒鳴り声がパーティー会場に響き渡る。そして、先程まで賑やかだった会場がシーンとなった。少年も何故か嬉しそうな顔していたが、一気に顔を青ざめた。


「アレーン男爵! 見ているのだろう! 出てこい!」

「は、はい。この度は息子が申し訳ありませんでした!」


 コールディ伯爵の声に何時から見ていたか分からないが、何とも頼りなさそうな中年のおじさんが出てきた。状況が分かっているから見ていたことに変わりなさそうだ。何故すぐに出てこなかったんだ?


「この調子で成長されてはアガフィリスの沽券に関わってしまう! もっとしっかりと教育しなさい!」

「は、はいいいい!」


 アガフィリスはこの国の名前だ。


「アイン男爵からは何か言うことはあるか?」

「そうですね……私の息子が殴られかけたと言っておりましたが……アレーン男爵、どう責任を取ってくれます?」

「……レボルト! お前、殴ったというのは本当か!?」

「は……いえ、その」

「はっきりと言いなさい!」

「手を出したのは……確かです」

「お前は……! ……アイン男爵、お詫びとしてこちらを……」


 服の中から何やら袋を出して、父親に渡してきた。おそらくお金だろう。父親はそれを受け取り、服の中に入れた。


「分かりました。それで手を打ちましょう」

「この度は本当に申し訳ありませんでした。そして、パーティー会場に水を差して申し訳ありませんでした。私は少し先に失礼します」


 父親とコールディ伯爵に深くお辞儀をして、少年を無理矢理連れていき、パーティー会場から出ていった。


 何か……凄く目立ってしまったなあ……。

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