92話 ただ食べていただけなんだが
92話です! まだ書き直しが2話程終わっていませんがそれは年明けまでになおすことにして再開します。
パーティーが始まってから30分は経過しているのにもかかわらず、まだ挨拶することが出来ていない。コールディ伯爵に挨拶をする人数が多く、さらに一人一人挨拶だけにしては長い事が原因だ。これだけ長いと後で挨拶してもいいんじゃないかと思うかもしれないが、いくら無礼講だとしても地位の低い貴族は早めに挨拶しないといけないらしい。まだ、俺の所からコールディ伯爵の所までの距離が長いことに他の人に見られないようにため息をつき、父親と兄さんたちを見ると普段見る姿とはかけ離れており、しっかりとしている。
そしてさらに30分経過したところでようやくコールディ伯爵との挨拶が終わった。父親もコールディ伯爵も早く挨拶を終わらせたかったのか挨拶して数言だけ話しただけで終了した。コールディ伯爵の印象は温厚そうな人だと思ったがどこか人を見下している気がした。言葉使いは凄く丁寧で見下しているところなんてなかったのだが、なぜかそう感じてしまった。……まあ、おそらく気のせいだろう。
「それではここからは自由行動だ。ただしパーティーだという事を忘れるなよ?」
「「「はい」」」
さて、自由行動という事だがどうしようか……。出来るだけ目立たないようにご飯でも食べておこうか。いつ厄介事に巻き込まれるのか分かったものじゃないから父親を見失う事はないようにしないとな。
近くにいるメイドさんから皿とフォークを貰ってテーブルの上に置いてある料理を皿の上にのせて会場の隅の方にあった椅子に座って食事をする。料理はどれも豪華で見た目が良いものを選んでいる。色々と選びたい所だったが一度に色々なものを沢山乗せる行為は礼儀作法的にあまりよろしくないのでまずは野菜などの前菜を取ってみた。どれも瑞々しくてとても美味しい。そして野菜の種類によって食感がとても変わるのでとても面白い。そう思いながら食べているとどこかからひそひそと声が聞こえた。
「おい、あいつあんな端っこにいて野菜だけしか食べてないぞ。社交場で野菜しか食べないとか恥ずかしくないかねえ? なあ?」
「そうだねえ。何であんなのがパーティーにいるか分からないねえ」
あ? 何馬鹿な事を言ってるんだ? 声の方をチラッと見ると8歳くらいの少年2人がこちらを見てうち1人がニヤニヤとしながら話していた。もう1人はやる気なさげだな。というかパーティー会場でそんな言葉使いって……。
とりあえずあういうやつらは無視した方が良いな。絶対面倒事に巻き込まれるだけだ。やつらに言い返してもこちらが得することなんてほとんどない。
「おい! 反応しときながら何無視してんだよ! 俺を誰だと思ってやがる!」
「全くー……短期なんだからなあ……」
……何で向こうから来るかなあ……。しかもご丁寧に周りの人たちにも聞こえる程の声で騒ぎだすとか迷惑極まりないな。大人しく他の人と話しておけばいいものを……。そしてもう1人の少年、そう思うなら助けてくれないかな?
あ、でも名前を呼んでいるわけではないからまだ無視出来るか。反応したといってもチラッ見ただけだから気のせいかもしれない。こちらに向かって来るけど気のせいだ。ならそのまま野菜を食べていよう。もし手を出して来たら反撃すればいいしね。……相手が兄さんたちに強かったら父親の所に逃げようか。
「おい! お前だよ! このガキが!」
煩い方の少年が俺の肩を掴んでくる。ご丁寧に力を込めて。まだこれだけだと反撃するネタとしては少ないが反応しないと面倒くさい事になってしまうから反応するかあ……。
「何ですか? 先程から煩いですね。どなたか存じませんが礼儀というものを知ったらどうです? そしていい加減に手を離してくれませんか?」
「んだと!? 誰にものを言ってやがる!」
「ちょ……! ここでそれは不味いって!」
まあ、礼儀に関しては座りながら会話している時点であまり人の事を言えないのだが……と心の中で思っていたら肩を掴んできた少年が今度は顔面を殴ろうとしてくる。この世界のパンチでは大分拙いものだったため座ったままでも簡単に避ける事が出来た。……それにしてもよくパーティーに参加することが出来ているよな。まあ、もう反撃しても問題ないだろう。怒られそうになったら正当防衛を訴えよう。
「おい! 一旦落ち着けって!」
こちらが動こうとしたところでもうやる気なさげな少年が慌てて止めに入った。かなり抵抗されているがどうやらやる気なさげだった少年の方が筋力があるようで、少ししたら煩い少年も落ち着いたのか抵抗を止めた。これで帰ってくれたらいいなあ……無理だろうなあ……。
「それ以上は決闘しないと駄目だよ!」
「そうだったなあ。なら、貴様! 決闘だ!」
……どうしてこうなった。




