70話 稽古をするんだが(下)
70話です! 前話の倍は書けました!
「さて、そろそろ休憩は終わりでいいな? 次は素振りをやろうか」
10分程休憩を取った所で休憩が終わったみたいだ。
素振りか……。素振りは打ち合いした後に教えてもらったことを実践してみれば何とかなるのかな?
「うげっ。素振りかよー。まあまだ走っただけだからまだいいか―……」
「そうだね……」
ん? 兄さんたちが苦虫を嚙み潰したような顔をしている。走る時は覚悟を決めた顔をしていたにもかかわらず、なんで素振りだとそんな顔をすることになるんだ? それ程素振りが辛いのかな。正直走る方が辛いと思うのだが……。
「弱音を吐かずに木刀を持った持った。でないと時間を増やすぞ!」
「「すぐ持ちます!」」
兄さんたちが凄い勢いで木刀を持ち父親の前に立つ。俺も兄さんたちのように木刀を持ち兄さんたちの2m程隣に立っておく。
「よし、それじゃあ構えて……始めようか」
父親が開始の合図を出してから1、2と言いながら剣を振り出す。父親もやるんだね。俺も父親の声に合わせて木刀を振る。かなり重いが木刀を振っても手が痛くなることはなさそうだ。父親に習ったことがしっかりとできている証拠なのかな?
先程一緒に走っていたイネアは今どうしているのかと思い、探してみると少し離れた所で他のメイドさんと何やら試合をしていた。……なんでイネアが試合しているんだ? 稽古をして貰っていることはみれば分かるのだが走ることならまだしもイネアが試合をする意味は……もしかして母親に冒険者になると言ったからイネアが俺の強さに付いていけるように……?
「カイ! 集中しなさい!」
「……!? はい!」
少しイネアの方を見過ぎたようで父親に怒られてしまった。考えるのは後だ。今は素振りに集中しよう。
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「ぜえっ。ぜえっ」
素振りを開始してから2時間程が経った。素振りの回数は既に1000回を超えている。父親の体力は底がないのか息切れ一つせずに素振りの回数を言っているが、兄さんたちや俺はもう限界に近い様だ。
俺の腕は既に限界が迫ってきており、振り始めた時よりも重く感じてしまう木刀を振ることたびに筋肉が悲鳴を上げている。もう終わって欲しい所であるがまだ終わる気配がない。これは先に木刀を落として倒れてしまいそうだな……。
「もう……無理……」
横でそんな声が聞こえて何かが落ちる音が聞こえた。横を見てみるとフレッツ兄さんが木刀を落としてしまっていた。
「フレッツは脱落だな。後で稽古の追加だ。素振りが終わりまで水分を補給して休んでいなさい」
……何その罰ゲームみたいな扱い。まさか父親が休憩をなしにずっと素振りをしているのは稽古追加を指せるため? もう体力がほとんど残っていないからさらに追加などされたら本当に不味い。素振りが終わるまで絶対に耐えないと……。
「素振りを再開するぞ。ほら構えた構えた」
父親は俺たちにそう言い、フレッツ兄さんが木刀を落とした回数からまた数え始めた。
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「2998、2999、3000! よし、素振りは終わりだ。2人ともよく頑張ったな。特にカイは初めてなのによく頑張ったぞ」
……父親の声が良く聞こえない……。そういえば俺は何をしていたんだったか。確か素振りを……していたはず。だったらまだやらないとな……。
「カイ? どうした?」
……父親がこちらを見ている……ように見える……。汗が目に掛かり良く見えない。
「父……上……、ちゃんとやってますよ……」
まだ終わってないはずだ……。なら父親は素振りが止まったことを指摘しているのかもしれない……。
「カイ、何言っているんだ。素振りはもう終わったんだぞ? ほら、休憩しなさい」
父親が素振りを止める……? もう終わったの……か……?
「っおい! カイ!?」
最後に父親の声が驚いたような声が聞こえてきた所で意識が……。
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「……ん」
……ん? あれ? 何時寝たんだったか……? 稽古をしていたはずじゃ……。
「……あ! カイ様、お体は大丈夫ですか!?」
目を開けるといつも見慣れた天井があり、イネアが顔を覗き込んできている。……何でそんな悲しそうな顔をしているんだ?
「今マリン様を呼んできますので少しの間待っててくださいね」
イネアは音を立てずに小走りで部屋から出て、母親を呼びに行く。
そして少し待つとドタドタドタと聞こえてバンっとドアを開けてこちらに走り寄ってくる母親。……急いでいてもノックは欲しかったなあ。
「カイ、どこか痛い所とかない?」
顔を覗き込んできた母親が聞いてくる痛い所と言っても……少し体を動かしてみれば分かるか。
そう思い体を起こそうと……。
「イタッ」
体を支えようと腕を動かした瞬間に激痛が走る。……そうだった。稽古の追加に恐れて素振りを頑張り過ぎたのだった。倒れたのは……疲労困憊か汗を掻き過ぎたことによる熱中症なのか? どちらにしろ無茶が過ぎたな。
「カイ、どこが痛いの?」
痛がった俺に心配そうに母親が見つめている。腕が痛いが他には……。
「腕に手、肩……足が痛い……かな。足の方は筋肉痛だと思う」
もうほぼ体中痛いことが分かってしまったがその中で特に痛い所だけを上げていく。あまり迷惑かけたくないからね。……いや、もう十分迷惑をかけているか。
「ならポーションを飲まないとね」
「げっ」
魔物などファンタジー要素があるこの世界にはポーションも当然のようにあり、飲むことにより徐々に身体を回復させることができるそうだ。ここの世界のポーションは体に掛けるだけでは効果は得られず、飲まなければ意味がないそうだ。また、ポーションは多少の疲労回復の効果があるそうだがどれも大変不味いので好んで飲む人はいないそうだ。母親から聞いた話では冒険者時代に食べた毒虫より不味いらしい。……毒虫を食べたことあることに驚きであったが。
母親はそんなポーションを渡してくる。……どのくらい酷い味なのか分からないが飲みたくないなあ。水癒で治せばいいのではいいと思うのだが……。
「そんな嫌な顔をしないの。もしかすると美味しいかも知れないわよ?」
絶対嘘だ。ポーションを飲んだことはないが、母親の目を見れば嘘だとすぐに分かる。だが飲まなければ体中が痛いままだ。覚悟を決めて飲んでみるか……。
「……ッヴ」
何この物凄く不味い飲み物は! 口に含んだ瞬間に不味さで全身が震え上がったぞ! だけどこの味……何処かで……。あ! 前世の罰ゲームで飲んだドリンクバーのジュースを全て混ぜ、さらにゼリーやタバスコなどを飲み物に入れてはいけない物を入れてしまった極悪ジュースの味に似ている……。
正直これで体が良くなるとはとても思えないが頑張って飲み込む。もう飲みたくない所であるがまだポーションの一部しか飲めていない。ポーションを少しだけ飲んでも効果はあるのだが微々たるものなのでちゃんと全部飲んでいく。……不味いから飲むことを止めて吐き出したいなあ。でもなんだか体が暖かくなって気持ちいい気がする。早速効いているのかもしれない。
「全部飲んだわね。そんな一気に飲むなんて偉いわ。ポーションは時間が経たないと効果があまり出ないから今日の所は安静にしてもう寝てなさい」
母親はポーションを持ち、部屋を出ていく。……母親の言う通り安静にして寝ていよう。
会話の後に~は言ったという言葉を極力少なくしてみましたがこちらの方が良さそうですね。




