67話 提案されたんだが
67話です! いくら戦闘回がやりたいからって飛ばし過ぎたような気もします。……今更だな。
次の日、俺は朝食を取るためにリビングに向かった。ドアを開けると既に父親以外は皆、席に座っていた。昨日の事が気になり、フレッツ兄さんの表情を見ると幾分か良くなっている気がする。両親がどう励ましたのかは分からないが、一応フレッツ兄さんは心の整理が着いたのかもな。だとしたら嬉しい限りだ。
俺は皆にばれないようにホッと息を吐いて椅子に座ると、父親が入ってきたので朝食が始まった。
「なあカイ?」
「ん?」
そして皆が食べ終わり、俺も食べ終わると父親が話しかけてきた。
「昨日、フレッツとマインズが本格的に稽古をすることを決意したのだがこの際だ、カイも稽古始めてみないか? もう稽古出来る程に成長したはずだから出来ると思うが……どうだ?」
「やります!」
つい反射的に答えてしまった。父親が戦っているところを直接見たことはないが、母親の冒険者ランクと同じらしいので相当強いだろう。そんな人からの稽古だから学ぶところが沢山ありそうだな。前世、弓道以外の武術などの経験がない俺にとっては十分魅力的な話だ。小さい頃から鍛えた方が強くなれるというのは良い事尽くしだと思う。
「そうかそうか! なら早速始めようか!」
「稽古をすることはいいけれど仕事も忘れずにね?」
「う、ああ。分かってる」
父親の気合が入った所で母親に言われる。そして父親は仕事という言葉に少し顔をしかめて返事をする。久し振りにこんな光景を見たと思い、俺はついついクスッと笑ってしまった。
「ほら、カイも笑ってないで庭で待っていなさい。マインズとフレッツもいるはずだから一緒に待ってなさい」
笑われたことに気づいた父親が少しムッと来たのか待つように言われた。俺はイネアとイリスと共にリビング、そして外に出る。
久し振りに出た外は少し寒いのだが既に雪解けが始まっており、地面からは新芽が生えてきている。森の方の葉は物寂しい物であるがもう少し経つとまた葉が生えてくるだろう。
俺は少し伸びをして、兄さんたちがいる所に向かっていく。
「あれ? もしかしてカイも稽古を始めるのかい?」
父親は俺が稽古をするという事を兄さんたちに言ってなかったのかフレッツ兄さんが俺が来たことに驚いた様子で聞いてくる。てっきり兄さんたちには既に言っているものだと思っていたがどうやら違ったらしい。
「うん、そうだよ」
「そういえばカイはそろそろ3歳か。ならもう稽古が始まってもおかしくないな。俺もフレッツもこの頃からやっていたからな!」
「そういえばそうだったね。初めての稽古が懐かしいよ」
兄さんたちも俺と同じくらいから稽古を始めたみたいだ。だとしたら兄さんたちはかなり強いのだろうな。いくら前世の記憶があっても経験のない俺とでは技術の差があるので今は勝てないのだろうな。
「たしかフレッツは稽古を始めてした時、泣きながらやっていたな」
「それを言うのなら兄さんだってお父さんがマインズも泣きながらやっていたと言っていたよ!」
「うぐっ」
どっちも初めての稽古は泣きながらやっていたのか……。そんなに厳しいのか……? これは気を引き締めないとな。
「そうだな。どっちも泣きながらやっていたな。まあ今日からさらに厳しくいくからまた泣かないようにな?」
後ろから父親の声が聞こえてきた。兄さんたちがええー! と言いながら顔を歪めている。そんな顔されると少し稽古をすることに躊躇ってきてしまうのだが……。
「さて、久し振りになるが稽古を始めようか」
こうして厳しい稽古が始まったのだった。




