64話 イネアの立場が変わったんだが
64話です! 書いていたら予想よりも文字数が少なくなりました。
評価ありがとうございます!
次の日、朝食を取った父親は早速暖かく動きやすい服に着替えてからフレッツ兄さんに絶対見つけてやるからなと言い、家を出て街に向かった。……馬車を使わずに。馬車を使わないのはこの時期は大雪になりやすいという理由からだ。大雪の中でも馬車を走らせることは可能であるが色々と大変らしい。今日は既に雪が降り積もっているので走っていくことを決めたらしい。それにどうやら馬車よりも走った方が早く着くそうだ。
フレッツ兄さんに関してはあまり元気がなさそうだ。行方不明になった婚約者の事を考えるとそうなるか。マインズ兄さんが無理矢理遊びに誘ったりして少しでも気を間際らそうとしているが余り効果はなさそうだ。このままでは精神的な疲れが蓄積してしまい、体調を崩してしまいそうだな。何かいい方法はないものか……。
母親は引き続き父親の代わりに仕事をしている。仕事の事だけではなくフレッツ兄さんの事もあるだろうから無理しない程度に頑張って欲しいな。
母親の手伝いをしてくれているリリィさんは毎日シンディを連れて雪の中を歩いて来ているので本当にありがたい。いずれ恩返しとかしたいな。そちらも考えておかないと……。
シンディは相変わらず元気そうだ。あれから毎日のように言葉の練習をやっていたら案外すぐにちゃんと自分で言葉を考えて言うことが出来るようになった。……わざと俺の口調の真似をしていたのかなと思うくらいに。もっと早く口調を直せば良かったよ。
そして俺は。
「本日よりイネアはカイ様の半専属から専属になります。今後ともよろしくお願いいたします」
イリスの体面に座ってイリスにそう言われていた。……ちょっと待って今専属になったの!? 今までのは半専属だったの!? 今まで専属にしては一日中一緒ではないなあとは思っていたけどそういう事だったのか!
そしてもう一つ驚いているところがあってシンディが隣で昼寝をしている時に専属になったことを言ったところだ。もう少しタイミングはなかったのかな……ほら、夕食後とか。まあ暇だったからいいけど。
「よろしくー!」
ひとまず返事をしておく。去年は返事をして驚かれたが今もう驚かれることはない。一年間も一緒にいたので互いの事が色々と分かっているしね。
「そして、イリス様は私が専属の仕事に慣れた所で専属の役目を終えるそうです」
……え? なんで?
「なんで?」
「元々アイン家では3歳になると専属の任を終えるそうです。そしてその代わりに私のような奴隷を専属にするそうですよ」
つまりイリスの代わりにイネアがずっと俺を見るという事でいいのかな? いつまでもイリスが専属だとは思わなかったけど3歳で終わるのは流石に早いなあ。そっか……イリス専属じゃなくなるのか。凄く寂しく感じるな。産まれてから約3年間、ほとんどの時間イリスと一緒に行動していたから喪失感を感じてしまう。でもこれで会えなくなるわけじゃないからまた会って話をしたりすればいいよね。……専属を終えたらメイドを止めたりしないよね?
「それでは改めてよろしくお願いしますね、カイ様」
イネアは笑みを浮かべながら俺に言った。




