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59話 イネアについてなんだが(下)

59話です! 今月から毎日投稿ではなくなります。週に最低3回は投稿をする予定です。


「はい、何して遊びますか?」


 壁側でじっとしていたイネアが返事をしてこちらに来て俺の目線と同じ高さになるようにしゃがんだ。

 あらためてイネアを見ると以前よりも本当に綺麗になった。


 最初の頃はやせ細っており、赤髪は少し暗く、肌も瑞々しいとは言えないような感じであった。

 だが今では痩せている様子はなく健康そうだ。赤髪は明るい赤色をしており、枝毛なども全然ないみたいだ。肌の方も瑞々しいとまではいかないが、以前よりだいぶ良くなった。

 うん、見た目ではもう奴隷には見えないだろうな。後は心の方だ。


 イネアの心はうなされる程ダメージを負っていると思うため、すぐに何とかなるとは全く思っていない。少なくても数年単位での解決になりそうだ。その手のプロならもっと早く何とかできると思うが、あいにく俺は素人だ。プロみたいに出来るわけがない。まあ出来るだけ努力はするけどね。


「本をよんえー」

「はい。それではベッドの方に参りましょうか」


 俺はとある本を棚から取ってきてイネアに渡す。

 ……まずはイネアとの仲をもっと深める所から始めよう。2歳児とどれだけ話したりしても心のケアは無理だろ。転生者とばらせば話は別になるのだが。

 今の時点はイネアと出来るだけ仲良くなって、ある程度成長してから何とかするしかない。


 さて、今回遊ぶ内容を絵本にした理由は本の内容に関係する。

 この本の内容を簡単に言えば奴隷が主人公であり、買われるところから始まり、奴隷の主人と一緒に冒険者をして、最終的に結婚するという作品だ。この作品に出てくる奴隷は心を閉ざしていたが、主人と過ごしていくうちに少しずつ主人に対して心を開いていくのだ。

 この話をイネアがどう受け止めるかは分からないが読んでみる価値はあると思う。そしてイネアが主人公に感情移入することでいい方向に持っていけたらないいな。


 イネアはベッドに座り、本の題名を見て、題名には奴隷の文字が入っているせいか少し眉をひそめた。

 俺はそんな事を気にしないようにしてシンディを連れてイネアの隣に座る。1人の場合だと膝に座ればいいがシンディと一緒の場合は隣に座るようにしている。赤ちゃんといえど2人を膝に座らせながら本を読むのは大変そうだからな。


「それでは読みますね」


 イネアは本を捲った。


「私が産まれた所は――――……」

 

 この本の話は少し長いので時間がかかりそうだな。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「――――――私と私の夫になった主人は幸せに暮らしました」


 イネアは本を閉じた。休憩込みで本を読み始めてから2時間程でイネアは本を読み終えた。

 本を読んでいる時のイネアの表情は少し眉を顰めたり、頬を緩ませたりと色々変えながら読んでいたが、最終的には笑顔で読み終えていたので少しは良い方向に持って行けたのかな?


 イネアが本を読んでいる間、シンディと俺についてだが……シンディは眠ってしまい、俺も少し眠くなってしまった。だがここで寝てしまってはイネアが読むのを止めると思ったのでシンディの頭を撫でたりして眠ることはなかったがかなり危なかった。


「話は良かったですか?」


 シンディは俺を見ながら聞いてくる。


「あい!」


 元気よく頷き、イネアに抱き着く。話しの内容は1度読んだことあるので知っていたが、2回目ではまた違う発見もできたので面白かったな。


「それは良かったです。……そろそろお昼になりますね。ではリビングに行きましょうか」


 イネアは俺の返答に満足したみたいだ。そしてふと窓の方を見て、そろそろ昼頃になると思ったのかリビングに行くようにイネアは勧めた。

 俺は眠っているシンディを起こして、3人でリビングに向かった。

  

 イネアとの仲が深まった……とは言えないが内容が良かったのか少しご機嫌そうなのでまあ良しとしますか。これから少しずつ仲を深めていこう。

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