51話 決意することなんだが
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母親との会話を思い出しながら眠った次の日、筋肉痛も治まり、朝食を食べ終えてシンディが来るのを待っていた。
いつもは楽しみに待つところなんだが……正直何時ものような顔で迎えられるような気がしない。昨日のことでの自分の答えが出ず、どうしても頭の片隅から離れないのだ。
母親はリリィと一緒にいることが出来る、残りの時間を大切にしたいと思いながら日々を過ごしている。だが俺はリリィさんやシンディとどう接したらいいか答えが出ていない。自分の答えがはっきりとしない限り、気持ちが治らないだろうな。
「……カイ様、お気分が優れていないようでしたら今日遊ぶことを止める方が良いのではないですか?」
俺の顔を見て気分が優れていないと判断したイリスが声を掛けてきた。イネアは今頃、他のメイドさんと共に皿洗いしてここにはいない。
「体調が悪いとかではないんだけど、昨日のことがどうしてもね。」
そういえば昨日イリスも付いてきていたのだ。彼女はあの時一度も声を発していなかったが彼女はどう思っていたんだろうか?
「昨日の事ですか。カイ様は寿命など関係なく今まで通りシンディ様と遊べばいいかと思いますが。」
「そうしたい……けど。」
こんな気持ちのままで会うのはな……やはり……イリスの言う通り今日は止めといた方がいいのか……?
「そうですね……では元々言うつもりではありませんでしたが、一つ短めの昔話をしましょうか。」
「イリス?」
「遠い昔、とある強欲の方がいました。その方はあらゆることを行い、力、地位、名誉を得ました。しかしその方はそれだけでは満足せず、さらに力を得るためにある場所で封印されていた禁忌を行ってしまいました。」
「そして禁忌の代償をその方は知らずに使われてしまい、本人だけでなくその種全体を巻き込みました。それは力を得る代わりに寿命が短くなることでした。その方は既にかなりの年を取っていたため、禁忌を使った瞬間に寿命で死んでしまいました。」
寿命が短くなる? もしかして……
「もしかして、それがアルティ族ということ?」
「ええ、そうと言われています。と言っても幼い頃に皆がよく聞かれる物語ですね。ですので昨日のマリン様の言葉はすべて本当……という訳ではないのです。……私が言ったのは内緒にしてくださいね。」
首を少し傾けながら口元に人差し指を当てて言った。
「ということはその寿命の代償を無くすことが出来れば……!」
「寿命が戻るかもしれませんね。しかし今まで幾多の人が代償を無くそうと動いても出来ませんでした。ですのでほとんどの皆さんがそういう運命なんだと諦めています。」
少し悲しそうに言っている。もしかしたらリリィさんのことを思い浮かべながら言ったのかもしれない。イリスとリリィさんが話しているところを見たことがあるからな。自分の友が早く死んでしまうことが嫌なんだろうな。
「でも出来る可能性があるんだよね?」
「あるかもしれませんね。……そろそろシンディ様がお見えになりますよ。笑顔で迎えてあげてください。」
と言ったと同時にノック音が聞こえてきて、イリスがドアを開けて入ってきたのは母親とリリィさん、シンディにイネアだ。
そして何時ものようにシンディを部屋に置いてリビングに行った。
シンディの方を見るといつも通りの笑顔だ。
「カイー?」
そしてシンディが俺を見ながら俺の名を呼ぶ。俺は思わずシンディの頭を撫でる。
……こんな子が早く死ぬのは嫌だなあ……。俺が出来るかは分からない……できない可能性の方が高いけれど代償を無くす方法を探してみますか!




