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37話 帰りの出来事なんだが

37話です! 

「それじゃあ,お前らまた明日なー!」

「明日なー!」


 日が少し暮れてきた頃、ようやく兄さんたちが帰ろうかと思ったらしい。俺はカーラさんからマインズ兄さんに乗り移り、おんぶされながら家に帰るつもりだ。乗り移す際にカーラさんが名残惜しそうな顔をしていたが気にしない。多分こんなに好かれたのは称号のせいのもあるだろうな。

 帰りは歩きであったので倍以上の時間が掛かる。辺りは段々暗くなって気温もかなり下がっている。追い打ちなのかさらに雪が吹雪ほど強くはないが沢山降ってきた。体が凍え始める中、途中で兄さんたちもまずいと思ったのか走り出した。

 走り始めて3分程経った頃にマインズ兄さんが足を滑らせて派手に転んだ。地面が凍っていたのだろう。当然マインズ兄さんにおぶってもらっている俺はマインズ兄さんの3m先まで吹き飛ばされて転んだ。地面にぶつかった瞬間、強烈な痛みが右肩から強烈に伝わってくる。雪の上からかダメージはまだ少ない方かと思うのだがそれでもこの脆い肉体には十分にダメージが入った。


「ちょっと何やってるのさ、兄さん! カイ? 大丈夫?」


 フレッツ兄さんが俺を持ち上げてくれる。脇を持っているので余計に痛い。


「肩ぁ……。」

「肩が痛いの!? 上手くいくか分からないけど……この者を癒せ、ヒール!」


 フレッツ兄さんが慌てた様子で俺を一回降ろして、初級用の魔法……光属性のヒールを唱えた。そしてわずかであるが、右肩の痛みが和らいだ。魔法的には失敗したみたいだが少しは効いた。俺はフレッツ兄さんがヒールを失敗してしまったがやってくれた行為に対し、嬉しくなり、笑顔を作って言う。


「い、痛うなうなった!」

「なら良かった! ほら、兄さん早く行くよ。」

「あ、ああ。カイ、本当にごめんな。」

「んーん。」


 マインズ兄さんが涙目になり、鼻水を出しながら謝ってくる。当然許すのだが、これ以上状況が悪くなることを防ぐために走るのは危険だけどせめてもう転ばないで欲しいな。幸いマインズ兄さんは特に怪我をしなかったようなので再びおぶってもらう。右肩が痛くて強く服を掴むことが出来ず、実質左手のみで掴んでいる。でもマインズ兄さんがしっかりと支えてくれているので落ちる心配はあまりないと思う。


 再び兄さんたちが走り出す。先ほどよりも状況が悪い。刻一刻と暗くなるし雪が強くなってくる。兄さんたちは安全のために先ほどよりも速度を落としている。安全のためにやむを得なくだろう。

 必死に兄さんたちが幼い体で頑張っている中、俺はただおぶられているだけだ。まだ一歳だが俺も何かできることがあるかもしれない。 

 そういえば兄さんたちは走っているので、周りにあまり気が配れていなさそうだな。なら……周りに20cm以上の物体尚且つ一定量以上の魔素に反応するようイメージして、


「探知!」


 とぼそっと言う。その瞬間、初めて使った時は廊下までしか無理だった探知だが、今は30mは分かるようだ。

 後方のギリギリ30m付近に大きな魔素反応がある。これは……イリスか! 探知を練習している時にいつも近くにいたためかすぐに分かった。というかついてきてくれているのか。それなら安心だ。というかカーラさんの高い高いのところやマインズ兄さんが足を滑らせた時に助けてきてくれれば良かったのに。後半の方は助ける時間が足りなさそうだったけど。

 そう思いながら探知で魔物を警戒する。


 ん? 探知をかけて2分くらい経った時新しい反応が出た。真っすぐに走っている中、右前方に体長30cmくらいの芋虫……? 魔物だ。何という魔物かは分からないが対面することはないと思うので無視しておこう。……あ、イリスに瞬殺された。


 兄さんたちが再び走り出して5分程で家に着いた。家の入口には母親が手に息を吹きかけながら待っている。……ありゃ怒ってるな。まずいぞ……1年前に感じたあの威圧感がここからでも漂ってきている。兄さんたちも同じように感じたようで顔を青くしている。それでも走るのをやめない。こちらから見えているということは母親からもこちらを既に見つけていることだろう。ここで止まるとさらに怒られそうだ。

 兄さんたちは覚悟を決めてのか、


「「お母さん、遅れてしまいすみませんでしたー!」」

「遅いじゃないの! 早く中に入りなさい! ご飯を食べてから話は聞くからね!」

「「はい!!」」


 とりあえずここでは説教をせず、家には入れさせてもらえるようだ。まあ無事? 帰ってこれたことを喜びますか。母親の威圧が半端ないけど。

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