196話 訪れたみたいなんだが
196話です!
誕生日を迎えて一ヶ月程、我が家に一通の手紙が届いた。手紙の内容はライルさんとエファさんが三日後にこの村を訪れるとの事だった。現在はドナンドに滞在しているらしいので、ドナンドとアイン村間でトラブルが起きない限り、三日後に訪れる事となるだろう。
ただ、この手紙が届いてからは我が家は少し慌ただしくなった。貴族の来客なんてこの村にはほとんど来ないので、両親は忙しそうにしていたし、メイドさんたちだって忙しそうであった。勿論、そんな中俺一人だけのんびりするわけにもいかない。両親やメイドさんのアシストをしたり、食事の材料になりそうな食べ物を取ってきたりと忙しかった。でも、そのおかげか色々と充実した時間を過ごせたので良かったと思う。
そうして忙しい時が三日過ぎ、正午少し過ぎた辺りで家の前に一台の馬車が止まった。ライルさんとエファさんが乗っている馬車だ。馬車に傷跡などはあまり見られないので危ない事態には合ってなさそうなのでとりあえずは安心していると馬車のドアが開き、ライルさんとエファさんが下車した。
ライルさんは相変わらずの筋肉質な肉体を持っており、豪快に笑いながら父親の元へと歩き、握手をした。
「フェンド殿、一年半振りであるな! 相変わらず元気そうだな!」
「ええ、村が平和ですので。ライル殿こそ元気そうで何よりです。ですが、街道などでは治安が悪くなっていると聞いていますが大丈夫でしたか?」
「少々てこずったが大丈夫ですぞ! 魔物は強くてもC+級までしか見かけませんでしたからな。盗賊も多く見かけたが、盗賊など敵ではないですな」
「流石はライル殿ですね。……ああ、ここで話していても良くないですね。どうぞ、中へ」
父親がライルさんを案内する。ちなみに二人が話している間に俺は目の前にいる少女、エファさんに再会の言葉を掛けあっていた。俺も早いうちにエファさんをリビングに案内した方が良いな。
「再開の言葉はこれくらいにして、私たちも行きましょうか」
「はい。行きましょう」
エファさんは王都で見たよりも大分身長が伸びており、俺よりも若干高い程だ。二次成長期までは仕方ないとしても少し羨ましい。そんな事を思いながらもエスコートをしながらリビングへと案内する。
リビングでは既にメイドさんが焼き菓子などの軽食や飲み物を用意してくれていた。そして、椅子に座っていた母親がこちらを見るなり立ち上がってこちらに出向いた。
「お久し振りです、ライルさん。態々このような村にお越し下さってありがとうございます」
母親はいつもとは違い、柔らかく笑いながらも丁寧に話し始める。
「マリン夫人も久し振りですな。相変わらず美しいですな」
「ありがとうございます。ライルさんは衰えていないようで」
「まだまだやらねばならぬ事が多々ある故、衰えぬよう日々鍛えておりますぞ」
「それは素晴らしいです。では、こちらの椅子にどうぞお掛けになって下さい」
ライルさんとエファさんを椅子に座ってもらい、俺たちも対面の形となるように座る。
さて、今日はライルさんが父親に直接話しておきたい事があるらしく、態々この村まで来てくれた。話の内容は両親も俺も知らないが、ライルさんが座り始めてからは少し真剣な顔つきになったので、良い話ではなく悪い話なのかもしれない。
だが、それを俺が聞いても良いのだろうか? 一応手紙には俺も話しを聞いた方が良いとの事が書かれていたためここにいるが、悪い話ならいない方が良いのでは? 表情には出ずとも内心で疑問に思っていると父親が疑問を呈してくれる。
「今回の話はカイにも聞かせた方が良いとの事ですので、同席させていますが本当によろしいのですか?」
「カイ殿はまだ幼いが、貴族である。今回話す事は知っておいた方が良いと思うのである。かなり深刻な事なのでな」
ライルさんは軽く飲み物を飲んだ後、少しだけ声のトーンを下げて話し始めた。
「では、本題に入る前に一つ聞きたい事があるのでまずはそちらから聞きますぞ。フェンド殿はこの頃村から出た事はありますかな?」
「いえ、この頃は一度も。ですが、外の様子は商人などから度々聞いております。最近は治安が悪く、被害も残念ながら大変多いとか」
「その通りですな。最近は治安が悪くなっているのだが、それ以外にも気にすべき事があるのである」
治安以外にも気にすべき事……何だろうか。治安が悪くなった事により起こりうる流通の変化や農業被害などだろうか。でも、それくらいの事なら態々ここに来て話す事ではないよな。となればそれ以上に気にしなければいけない事なのだろう。
「それは何なのですか?」
父親がライルさんに質問をすると、ライルさんはより深刻そうな顔をして衝撃的な発言をした。
「近い将来に起こるであろう戦争の事である」




