閑話 イネアの休日 ３
閑話です！ 次回からはまた主人公視点に戻ると思います。
暫くの間小川で遊んでいましたが、カイ様がそろそろ次の所に行こうと提案なされました。このまま遊ぶ事も良いと思いますが、カイ様の提案です。断るはずがありません。
次に到着した所は二年程前に突如現れた迷宮の近くに作られた集落ですね。師匠であるミルさんが住んでいる所でもあります。試練があったため、最近はよくここに来ることが多いですが、正直治安は良いとは言えません。
集落のほとんどの方が冒険者で勿論良い方もいらっしゃいますが、良くない方もいらっしゃいます。お酒などに酔われて絡まれるだけならまだ良いのですが、そのまま犯罪を犯そうとされる方もいますのでその方たちが来ると大変ですね。
集落に行く際には仕事仲間がいるので絡まれる事は比較的少ないですがそれでも絡んでくる人はいました。ですが、仕事仲間のおかげで何とか助かりましたが、あの時はどうなる事かと凄く怖かった覚えがあります。
今回もそのような方が現れる事があるかもしれないので、少しでも絡まれないように警戒せねばいけませんね。
「イネア、どうしたの？ そんなに強張った顔をして」
「いえ、特に何もございません……ところでカイ様は何しにこの集落に来たのですか？」
「勿論買い物のためだよ。欲しい物は特に思いつかないけど見回ったら良い物を見つけるかもしれないからね。イネアも良い物があったら教えてね？」
カイ様の言葉に思わず絶句してしまいました。治安が良いとは言えないこの集落で目的もなしに買い物とはまだイリスさんがいるならば問題ありませんが、私たち子供だけですといつ問題が起きてもおかしくありません……！ 何とかすぐに終わらせないと取り返しのつかない事になるかもしれません！
「……カイ様、ここは治安があまり良くありません。別の所に致しませんか？」
「イネア、治安があまり良くない事は知ってるよ。でも大丈夫。ほら、あそこを見てごらん？」
カイ様が仰った方向を見てみますとイリスさんが私服姿でこちらを見守っている姿が見えました。イリスさんがいるのなら安全ですが……。
「何故イリスさんは遠くからこちらを見守っているのですか？ 近くで見守る方がその分安全かと思いますが……」
「それは俺がお願いしたからだよ。そうした方がイネアが休まるかなと思ってね」
いえ、イリスさんが近くにいる方が今よりも警戒せずに動けますのでそちらの方が休まるかと思います。ですが、カイ様の気遣いを無駄にしても良いのでしょうか？ どうしましょう……。
「というわけでイネア、買い物をしようか」
「―――はい」
ああ、考えもつかずに返事をしてしまいました。よく仕事仲間からもそれで怒られていますのにこればかりは全然治らないです。治さねばと思いつつも全然治らないこの癖は本当に良くないです。本当に……。
……いえ、このままカイ様の隣で自己嫌悪し続け、カイ様に心配される事になってしまってはいけません。既に返事をしてしまったので、イリスさんが近くにいなくても大丈夫なように動くしかありません。ですが、カイ様との買い物を楽しむ事も忘れてはいけません。忘れてしまったらそれこそ本末転倒になると思います。
「イネア、これなんかどう？ 綺麗じゃない？」
「はい、綺麗かと思います」
ですので、私は楽しみつつも警戒します。先程までと変わらない事です。例え今日が休日だとしても最低限の事はする必要があると思います。私はメイドではなくても奴隷ではありますので。
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結局、太陽が森に消える寸前まで私とカイ様は一緒に集落で買い物をしました。買った物はありませんでしたが、カイ様と一緒に色々な商品を見る事は凄く楽しかったです。休日とはこのような事をするのですね。ですが、明日はどうしましょうか。明日はカイ様と一緒に行動するわけではありません。
ですが、今日カイ様と一緒に出掛けた事で休日は何をしたら良いか少し分かったかもしれません。明日は今日の事を参考にして行動してみると良いかもしれませんね。
