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悔いのない転生を!  作者: デジカナ
6~8歳
208/220

閑話 イネアの休日 2

閑話です! 後少しだけ閑話が続く予定です。

すみません。一日遅れます。

 稽古も私服を汚す事なく終了しました。私もカイ様も昼食を取り、二人で出掛ける事になりました。相変わらずカイ様は行き先を教えてくれる事はなかったのでどこに行かれるかは分かりません。


 私は専属の立場でありながらもカイ様とこうして出掛ける事は少ないです。カイ様はよくお出掛けになられる事は知っています。本来ならば専属である私がお供しなければならないのですが、私はカイ様を守る事が出来る程実力がある訳でもなく、大人たちからも侮られるような年齢です。そのため、お出かけの際はイリスさんがカイ様のお供をしていたのです。


 ですが、今回は違います。万が一の事があれば実力は足りなくとも私が守らなねばなりません。例え私がそこで死んでしまう事になるとしても……です。


 ……話を戻しましょう。カイ様が向かわれる場所までの道中は新鮮でした。お供する人が私しかいません。さらに本来ならばカイ様の後ろの位置でお供するのですが、カイ様が隣に来てと仰ったので初めてカイ様の隣で歩く事となりました。今はメイドとしてではなくてイネアとして行動して欲しいとも仰っていましたたがどうしましょう。いえ、カイ様が求めているのならそのようにした方が良いでしょう。


 それからはメイドとしてでなく私としてカイ様の隣でお供しながら会話をしました。とは言いますが普段カイ様と話している時と然程変わりません。隣で話しているのでカイ様の顔がよく見える位でしょうか。終始笑顔で話されていますが、普段見るような笑顔とは少し違うように見えました。僅かな変化で何と表現すれば良いか分かりませんが、今の笑顔の方が似合っている……と思います。


 暫く会話を弾ましている間にカイ様が行こうと思われていた場所に着いたみたいです。行き先は小川のようですね。あまり人が通らない村の隅のようですが、わざわざ森に入らなければ問題はないでしょう。小川の深さも溺れるような心配もありません。この様子なら危険性は然程ないと言っても良いでしょう。


 そのように観察していましたらカイ様がこっちだよと私の手を引っ張り、小川の方へと進まれました。小川に着きますとカイ様は小川の様子をじっと見つめ、何かを見つけたのかカイ様がいたっと仰って小川に指を刺しました。その方向を見ますと小さな魚がいました。川の流れを逆らうように泳いでいますね。


 私がその小さな魚を見ていますと、カイはがゆっくりと両手を小川へと近づけ、そのまま小川に入れて小さな魚を優しく包み込むようにすくい出しました。小さな魚は抵抗する事もなくカイ様の両手の中に入りましたが、一緒にすくわれた水が少しずつ両手から抜けていくにつれてぴちぴちと跳ね出しました。


 カイ様は水が完全に抜ける前に魔法を唱えて水の塊を空中に浮かび上がらせて、その中に小さな魚を入れました。そのような事をされたら小さな魚は死んでしまうのではないかと恥ずかしくも少し慌ててしまいましたが、その心配はいらなかったようです。小さな魚は水の塊の中で悠々と泳いでいるのですから。


 その泳いでいる姿に見とれていますとカイ様がどう? 綺麗でしょ? と無邪気そうに微笑みます。確かに綺麗です。小川から見る小さな魚も綺麗でしたが、こうして様々な所から見ますと新しい発見が出来ますね。


 ですが、何故カイ様はこのような事をされたのでしょうか。普段のカイ様ならやられないと思いましたが、出掛けている時はいつもこのような事をされているのでしょうか? 思わず聞いてしまいましたが、カイ様は特に気にする事もなく、答えてくれました。


「普段はやらないよ。今だってこうしたらよく見えるかなと思っただけだからね。上手くいって良かったよ」

 

 思い付きでしたか。ですが、魔法をこのように使われるとは流石ですね。私も仕事仲間に魔法を教えて下さったおかげで多少は使えますが、どうしても魔法を武器としか見る事が出来ません。カイ様はそのようには見られていない様子で、このように魔法を使用なされているのですから凄いと思います。私もカイ様を見習って武器以外で何が出来るのか考えてみると良いかもしれません。

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