187話 試練を受けるそうなんだが
187話です! 多少短いです。
太陽が傾き、自室に入ってくる日光の色が変化し始めた頃、イネアが部屋に帰ってきた。イネアを買った時は6歳であったが、現在はもう11歳でそろそろ12歳になる。買った当初の容姿とは全然違い、どこに出しても恥ずかしくないと断言出来る程に健やかに成長した。
まあ、変な人がイネアに迫ってきたらぶちのめすけどね。血は繋がってないがイネアは家族のようなもので、姉のような存在だ。それを守るためだったら頑張るさ。
「カイ様お待たせしました。少々話したい事がありますので今よろしいでしょうか?」
「勿論良いよ。そこに座って」
テーブルの対面にイネアを座らせる。座ったイネアは軽い深呼吸をしてからいつも以上に真剣な顔になって俺を見る。
「それで、話って何だい?」
「実は、明日から一週間程休みを頂きたいのですが、よろしいでしょうか」
休みか。メイドになってから休日となる日は少ない。また、住み込みで働いているため、労働時間も長い。ブラックだと言われるかもしれないが、そもそもこの世界のほとんどはそうして成り立っている。そんな中で一週間も休みを頂きたいという事は何かしらあったとみて良いはずだ、
「うん、それは良いけど、理由だけ聞かせて欲しいな」
「はい。明日から一週間続けて鍛冶の試練がありまして、その試練で師匠に認められると一人前として認められます。認められると私だけでも商品を出す事が出来ます。さらに、本来扱ってはならない物まで扱っても良い事になります。将来、カイ様の役に立つ可能性がありますのでこの機会に受けてみようと思います」
イネアの師匠となる人はミルさんというのだが……へえ、そんな試練があるんだ。商品の方は今の所あまり興味はないが、扱ってはならない物を扱って良いというのは是非とも出来るようにしておきたい。それで怪我はして欲しくないが可能性が増える事は良い事だろう。
「そういう試練があるんだね。うん、受けてみると良いよ」
「ありがとうございます」
イネアは少し微笑んでありがとうございますと言い、会釈をした。
「それで、他に何か話はあるかな?」
「いえ、他には」
「だったら俺から一つ良いかな?」
「はい、何でしょうか?」
「その試練ってさ、俺も見に行く事って出来る?」
鍛冶の試練って何か興味があるよね。
「それは、鍛冶屋に来て下されば見る事が出来ますよ」
「それなら見てみたいな」
「でしたら師匠に話しておきますね」
「うん、ありがとう」
楽しみだなあ。鍛冶屋なんてほとんど行った事ないし、ましてやイネアが鍛冶をする事を実は見た事がない。前々から見てみたかったから、この機会にぜひ見てみたいな。
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翌日、日が出る前にイネアは起きて、鍛冶屋へと向かった……らしい。日が出てから起きたので気づかなかったよ。朝食をしっかりと取ってから両親に鍛冶屋に行く事を言っておかないとな。




