181話 契約なんだが 2
181話です! 次回の投稿は14日となります。
お偉いさんの行為に俺は唖然する。クル子爵が壁まで吹き飛んだのだから何かしら攻撃したのだろう。だが、どう攻撃したのか分からない。また、その後、首元に何かを付けた物が何かも分からない。
体をこわばりながらその光景を見ていると、お偉いさんが泡を吹いているクル子爵を背負い、ゆっくりと椅子へと運ぶ。椅子にもたれかかるようにして座らされたクル子爵の首元を見ると所々に石が埋まっている紐が付けられていた。これは一体……?
「では、契約を始めようか」
混乱している俺とは対照的に階級の高そうな人は仕切り直すようにしてそう告げる。
「いえ、待って下さい。クル子爵の首元に何を付けたのですか?」
「詳しい事は言えないが、尋問魔道具の一つだ。この魔道具は起動する事で言わせたい事を好きに言わせる事が出来る。本来なら捕虜や犯罪者などに使用するのだが、相手今回の場合では契約の合意だな。残念ながら心から合意、という事が出来なかったが、こちらも忙しい身だ。使わせてもらったよ」
言わせたい事を言わせる事が出来ると言われた時、その尋問魔道具を俺に使って、転生者関係を聞いてきたら転生者であると言ってしまう事にすぐ気づいた。それだけは避けていかなければならないので、この尋問魔道具を付ける事がないように動いていかないと。
「そうなのですね。説明ありがとうございました。では、始めて下さい」
「ああ、では決闘の契約を始める。まずは契約の内容だ。この紙を見て確認して問題なければ続けるぞ。読めない所があれば言って欲しい」
階級の高そうな人はそう言って手に持っている紙を見せてくれる。そこにはクル子爵は今後、アイン男爵、モーレ男爵、クィク子爵に関わる事を禁ずる旨が書かれている。また、モーレ男爵とクィク子爵が契約内容を拒否した場合、クル子爵は関わる事が出来る旨も書かれている。
まあ、後半の内容は要求していないが、まあ問題ないな。関わるかどうか本人次第だからね。
「内容は問題ないです。ただ一つ聞いても良いですか?」
「なんだ?」
「この契約内容はモーレ男爵とクィク子爵様にも伝えていますか?」
「それは昨日のうちに当主含めて伝えてある。二人とも当主と相談した上で了承しているので問題ない」
「でしたら良かったです」
既に伝えて了承しているのなら問題ないな。本人が知らない所で契約が行われていたら困るだろうからね。
「では次に紙のここに血を落としてくれ。ここにナイフがあるから指を少し切ってくれたら良い。何、傷はすすぐに治すから大丈夫だ」
階級の高そうな人は紙と刃渡り1cm程の小さいナイフを机の上に置く。俺はナイフを手にして、親指の先端を浅く切る。少し痛みが走ったがまあ問題はない。血が少しずつ出てきたのでその血を指定された場所んに落とす。
隣では、気絶しているクル子爵の手をお偉いさんが持ち、ナイフで指の先端を浅く切り、紙に血を落としていた。……今更だけどこんな無理矢理で良いのかな。このやり方が許されるなら結構抜け穴がありそうだな。それにあの尋問魔道具を使ったら不正に契約が行われそうだな。やはりあの尋問魔道具は気を付けないと……。
「なら最後に合意だ。両者が紙に書かれている事を言った後に名を名乗り、契約する旨を言えば契約が成立する。では、魔道具の起動を頼む」
「はい、起動しますよ」
お偉いさんの一人が何やら呟いていると魔道具が淡く光り出した。これが起動の合図なのかなと見ていると唐突にクル子爵が下を向いたまま喋り出した。軽くホラーだ。
クル子爵が目も開けず、一切の抑揚も付けずに契約内容、名乗り、契約する旨を告げていった。そして、告げ終わるとそのまま何も言わなくなった。同時に魔道具の淡い光が消えていった。そうして見ていると階級の高そうな人の視線を感じた。もう言っていい感じかな?
そう思い、俺も契約内容、名乗り、契約する旨を告げていく。そして、告げ終わると同時に紙が淡く光り出した。それを見た階級の高そうな人は再び喋り出す。
「これで契約は完了だ。次にアイン男爵の罰についてだが、その前にクル子爵を何とかするので少し待っていて欲しい」
「分かりました」
そう告げると階級の高そうな人とメイドさんがクル子爵を部屋から運び出された。こうして見ると何だか不憫だな……。そう思いながら少し待つと階級の高そうな人が戻ってきた。
「では、次に罰について始めていこう」
階級の高そうな人は先程いた場所まで戻るとそう宣言した。さて、ここからが本番だな。