180話 契約なんだが 1
180話です! 余裕があれば明日も投稿するかも?
翌日、日が出る前に目が覚めてしまった。おそらく今日契約と罰を受ける事になるだろうから、このまま起きて隣で寝ている父親の邪魔にならないよう準備をしておこう。
準備を終えて、涼風と少しだけ風呂にも入った所でようやく日が出てきた。しかし、まだ本来起きる時間よりは早い。とはいえ廊下に出て何処かに行くというのは気分が乗らないし、厄介事の元だ。なので、罰の事を考えずに気持ちを落ち着かせるためにも応接室の所でスライムと戯れる事にする。
そうして過ごしているとノック音が聞こえてきた。誰かと聞くとイネアとイリスのようだ。入っても良いと伝えると中に入ってきた。こんなに早く起きるのだなと思いながら見ているとイネアにどうしましたかと聞かれた。慌てて何でもないよと言い、再びスライムと戯れ始める。
そうしているうちに父親が起きてきた。昨日は寝る時間が遅かったのか少し眠たそうにしている。イリスさんがその様子を見て水を差しだしていた。父親は水を一気に飲んで眠気を覚まし、俺の方を向いてきた。
「カイ、しっかりと寝れたか?」
「うん、寝れたよ。ただ、気分はあまり落ち着かないね」
長い事スライムと戯れていたが、罰の事を考えると中々落ち着かない。転生者とばれる可能性があるのだ。ばれたら死ぬ可能性だって十分にある。落ち着いていられるわけがない。
「それはそうだろうな。今回の件では残念ながら俺からは何も出来ないからカイ一人で頑張ってきなさい」
そう言って父親は俺の頭を撫でてくる。こうしていると少し恥ずかしいのだが少し落ち着いてくる。
「はい、頑張ります!」
そんな父親を安心付けるため、そして俺自身に言い聞かせるために出来るだけ元気に答える。そんな様子を見た父親は少しだけ笑みをこぼしつつ椅子に座った。
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朝食を食べ終えて、ベッドの上で罰の対策を考えながらくつろいでいると、イネアが呼びに来た。どうやらお迎えが来たようだ。身だしなみを整えてから応接室に向かうと階級の高そうな人が待機していた。
「やあ、おはよう。早速だが決闘の契約の事を終わらせたいから付いて来てくれ」
「おはようございます。分かりました」
階級の高そうな人に付いていくと、少し大きな部屋に着いた。内装は応接室とあまり変わらないが、メイドさん2人、お偉いさんみたいな人が1人、そしてクル子爵がいた。
「では、契約を始めよう」
「嫌だ!」
階級の高そうな人が始めようとするが、クル子爵が早速拒否する。
「クル子爵、いい加減にしなさい。クル子爵は負けたのですよ」
「負けてなどいない! 何かの間違いだ!」
「いいや、間違いなどない。正々堂々と決闘を行い、そして負けた。それはクル子爵が一番分かっているだろう?」
「うぅぅぅぅ……」
階級の高そうな人に反論が出来ないのか今度はこちらを睨んできた。まだ認めていないんだな。
「こちらを見ても何も変わりませんよ」
「うるさい! うるさい! もう喋るな。何故お前が勝つんだよ! この馬鹿! あほ!」
喚きだしたクル子爵にどうしていいか分からず、階級の高そうな人に視線を送る。階級の高そうな人はその視線に気づくが、ただ頭を掻くだけであった。
「そんなこと言われましても正々堂々と決闘したまでです。いい加減認めて下さい」
「認められるかっ! こんなの!」
座っていた椅子の脚を蹴りながらも喚くのを止めない。あやすのにも時間が掛かりそうだし、負けを認めさせるのにも時間が掛かりそうだな。でも、下手に動くと罰が増えそうだしなあ。
面倒に思いつつもクル子爵の喚きを聞き流していく。そうしているうちに先程までずっと何も声を発しなかったお偉いさん方が遂に声を発した。
「やはり認めないですか。あまりしたくはありませんでしたが、予定通りに動きましょうか」
「では、行きます」
お偉いさん方がそう言った瞬間、クル子爵は壁まで吹き飛ばされ、泡を吹いて倒れる。そして、すかさずお偉いさん方のうち一人がクル子爵の所まで歩み寄り、首元に何かを付けた。