176話 要求なんだが
176話です!
軽食を食べ終えて、まだパーティが続いているのだろうなと考えていたら階級の高そうな人がノックの後、部屋に入ってきた。
「クル子爵も目が覚めたので、アイン男爵は付いてきなさい」
言われた通りに階級の高そうな人に付いていく。連れてこられた部屋にはクル子爵が椅子に座りながら待っており、疲れ果てた顔をしながらもこちらの姿を見るなり睨んできた。だが、その顔は少しだけ怯えがあった。
やはり戦闘では少しやり過ぎてしまったかもしれない。いや、でもあれ位が丁度良かった気もする。難癖付けられても困るし、まだ睨む事が出来るのだから問題ないだろう。
クル子爵の1m程隣にある椅子に座るように言われたので座ると、階級の高そうな人は対面に立ち、話しだした。
「では、決闘の結果を発表する。武器を使った戦闘は両者分かっていると思うため、先に言うがクル子爵が気絶したため、アイン男爵の勝利だ。次に計算問題だ」
戦闘の方は一目瞭然だから良しとして、計算問題だな。勝っているとは思うが、万が一の事を考えると心配になってくる。
「計算問題は500点満点で、点数の多い方が勝利となる。では、2人の点数を発表する。まずはクル子爵の点数だ」
500点満点か。解く問題も中々あったので別に配点が高いわけではないだろう。問題は点数配分だな。難しい問題に点数が傾くのなら良いが、全て同じ点数の場合、分からなくなる。そこが勝負の鍵となるかもしれない。だが、見直しまでしたのだ。負ける事はまずないと思いたい。
「クル子爵の点数は220点だ。この年齢では中々良い点数だと思う。続いてアイン男爵の点数だ」
「220点……」
220点、半分を超えていないな。だとしたら勝利は貰ったな。
「アイン男爵の点数は465点だ。この問題は学園の入学試験に出す問題だが良くこの点数を出せたと思う。よって、計算問題の決闘はアイン男爵の勝利とする!」
「なっ……!」
よし、勝った! だが、ただの計算問題で45点を外してしまったか。どこで間違えたのか分からないな……。まあ、勝ったので今は喜ぼう。そう思った時、隣に座っていたクル子爵が叫ぶ。
「う、う、嘘だっ! あ、あんな問題で取れるはずがないっ!」
「いや、実際に取れているのだから嘘ではない。実際にアイン男爵が解いた計算問題を見たら納得するか? その代わり、クル子爵の計算問題をアイン男爵に見せる事となるが、その前にアイン男爵は計算問題を見せても大丈夫か?」
クル子爵の叫びながらの抗議に少し驚いたが、階級の高そうな人はクル子爵を少し睨みつつも返事をした。……少しだけクル子爵の計算問題を見てみたいな。
「ええ、良いですよ。私もクル子爵の計算問題を見たかった所です」
「ありがとう。では、クル子爵、どうする?」
「うぅ……見る」
階級の高そうな人の睨みが聞いたのか弱気になりつつも見るようだ。
「これがアイン男爵の計算問題だ。そして、アイン男爵にはクル子爵の計算問題を渡そう」
階級の高そうな人はクル子爵に俺の計算問題を渡してから俺にクル子爵の計算問題を渡す。……クル子爵は大体半分と少しまで解けているが所々間違えている感じだな。だが、この年で掛け算が出来るみたいだからかなり優秀なのだろうな。
「か、書けてる……」
「これで分かったな?」
「で、でも他の人が書いた可能性は……」
「ない。筆圧と数字の形が同じだ。それに、解いている最中はメイドが監視している。そして、メイド自身はアイン男爵とは初対面だから彼女が書く理由はない」
「ううぅぅぅぅぅ」
俺の計算問題をクル子爵は睨みつけながらうねりだす。その様子は負けを認めたくない園児であった。
「負けを認めなさい。クル子爵はは負けたのだ」
「う、う、うああああああああああああああ」
階級の高そうな人に負けを宣言されるとクル子爵はみるみる涙が溢れ出し、涙をこぼして叫びながら立ち上がって部屋から飛び出した。……これどうするんだ?
少しの沈黙の後、階級の高そうな人が頭を掻きながらだるそうにしながら喋り出す。
「あー、逃げ出したかあ。面倒になったなあ」
「……これ、どうするのですか?」
「そうだな。とりあえずアイン男爵の要求を聞こうか」
あ、そのまま進めるんだ。逃げ出したクル子爵が後々に落ち着いてから俺の要求を聞かせるのかな?
「要求は1つだけですか?」
「ああ、1つだけだ」
「でしたらクル子爵は今後、アイン男爵、モーレ男爵、クィク子爵に関わらせないようにして欲しいです。子爵相手に相応しくない態度を取った事は私が罰を受けます」