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172話 ご退場なんだが

172話です! 遅れてすみませんでした! 風邪ほぼ治ったので投稿します! 人生で一番熱が上がった風邪でした(普段が全然上がらないだけ)。

「お前、こっち来いよ」


 クル子爵がそう言うと同時に手が俺の腕を掴み、引っ張りだす。その力に逆らわないようにして立つとそのままどんどん引っ張っていった。……何時でもその手を払うことが出来るが、現地点でも周りで目立っているのにそんな事して余計に目立ちたくないからなあ。あ、でもエファさんにダンスのお礼だけでも言っておきたいな。


「エファさん、少しの間でしたがありがとうございました。また一緒に踊ってくれると嬉しいです」

「そ、それは私も……いえ、そんな事言っている場合では―――」

「うるさい!」

「キャッ! うぅぅ……」


 エファさんが言い切る前にクル子爵が大声で無理矢理黙らせる。その声で、周囲にいて気づかなかった子供もこちらを見始めて、大声が気になりこちらに近づく人もいるみたいだ。ああ、目立ちたくなかったというのに……いや、それよりも今の声でエファさんが泣いてしまった。エファさんを泣かすとか流石に許さん……!


 引っ張る手を引き離して他の人にも聞こえるように声を出す。

 

「クル子爵、手を引っ張るだけでなく女性を泣かすとは随分とまあ品のない人ですね」

「なっ! 何だと!? お前! 今すぐ撤回しろ!」

「いいえ、しませんよ。事実ですから」

「お前ぇ! 許さん!」


 クル子爵は軽く見ただけで分かる程に顔を真っ赤にしながら拳を作って殴ってくる。殴られる筋合いはないため、腕を掴んで動きを止める。多少必要以上に力を込めて掴んでいるけど問題ないよね?


「糞っ! またか!」

「すぐに手を出す所も頂けませんね。それに全然腕の筋肉がないのに拳だけ妙にそれなりに殴っている拳をしてますね。普段、誰かを殴っているからこの場でもすぐに手を出してしまうのでは?」

「うううううう!!」


 クル子爵のぷにぷにな腕を掴んでいない手で軽く叩く。その様子に真っ赤な顔を震わせて歯ぎしりをしながらもう片方の手で攻撃してくる。だが、速度が遅いのでそちらも腕を掴む。


「そんなの当たりませんよ。学習能力もないのですね」

「黙れえええええええええ!」


 懸命に腕を動かそうとするがSTRの差が大きいので無理だ。そうしていると横からメイドさん数人と階級の高そうな人が現れた。


「そこまでです」


 階級の高そうな人が俺とクル子爵の腕を掴んで、引き離す。引き離す動きで掴んでいた手が離れてしまった。


「私はまだ何も事情は知りませんが、この場での争いはご法度です。それを知っての上でするというのですか?」

「当然だ! この俺を馬鹿にしたのだ!」

「いえ、事実を述べたまでです。図星なのですから怒っているのでしょう?」

「―――っ!」

「こら、煽らない。ひとまず両者はひとまず会場から出てもらいます。良いですね?」


 退室かあ。こんな目立った状況で説教よりまだましか。


「はい」

「何故この俺が!」

「良いですね?」

「うっ、はい……」


 俺とクル子爵は階級の高そうな人に無理矢理両脇に抱きかかえられて、そのまま会場から出ていった。その様子は会場にいるほとんどの子供に見られて大変、恥ずかしかった。これも全てクル子爵のせいだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 会場から離れて、抱えられたまま他の部屋に移動させられてようやく解放させられた。その部屋の内装は部屋の隅に椅子が幾つか置かれているだけであった。階級の高そうな人についてきたメイドさんがそのうち2脚を部屋の中央に移動させて、そこに俺とクル子爵を座らせた。


「それで、どうしてこうなったのですか? どちらか訳を話しなさい」


 正面に階級の高そうな人、後方にメイドさんという配置の中で、事情聴取が始まった。隣にいるクル子爵が先に喋るかと思ったが、一向に喋る様子はないようだ。


「何だ、どちらも言えないのか?」

「いえ、言います。私がエファさん……モーレ男爵令嬢と踊り、共に感想を話していた所、突如クル子爵が現れ、腕を引っ張られました」

「うん、それで?」


 若干威圧感を放ちながら無表情で話を聞く階級の高そうな人。正直、少しだけ……本当に少しだけ怖いです。


「引っ張られていく中、このままモーレ男爵令嬢と何も言わず別れるのはどうかと思い、別れの言葉を述べた所、モーレ男爵令嬢が返事をしてくれましたが、それがしゃくさわったのかクル子爵がモーレ男爵令嬢に怒鳴り、泣かせました」

「あれはあの女が喋り出すのが悪いのだ! 俺は悪くない!」

「後で聞きますのであなたは黙りなさい。良いですね?」

「ううぅ」


 階級の高そうな人がクル子爵をじろりと見ながら言う。というかあのクル子爵が凄く縮こまっているんだけど……。


「続き良いですか?」

「はい、どうぞ」


 俺の言葉にすぐこちらに視線を戻す階級の高そうな人。気のせいだろうか先程よりも威圧感がある。 


「私は手を払い、彼に手を引っ張った事と女性を泣かせた事について言及したのですが、クル子爵はその言及に激怒して襲い掛かってきました」

「うーん、あなたはこの事について何か言いたい事はありますか?」

「俺に恥を掻かせる言動をした奴が悪い! 俺は悪くない!」

「でも手を出してはねえ」


 ポリポリと頭を掻く階級の高そうな人。心底面倒くさそうな顔をしている。そうして数秒程無言が続いた所で何かを閃いたのか表情を大きく変えて話しだす。


「あ、そうだ。なら、決闘で決めよう」

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