162話 劇なんだが
162話です!
階級の高そうな人が話し終わった。主に話した事は2日目の内容についてだ。まず、この部屋でこの国の歴史を題材にした劇を行うらしい。そして、その劇を終えると外に出て、宮廷魔導士たちの魔法ショーを見せてくれるそうだ。
歴史についてはある程度勉強しているため大体は分かるのだが、魔法ショーに対しては本当に楽しみだ。もう魔法ショー見るだけでも王都に来たかいがあったと思う程だ。
他には、その劇や魔法ショーの注意事項、まあ喋らないとか必要外に席を立たないなどの極々当たり前の事だ。後、飲み物やお菓子が欲しくなったらメイドさんに頼めば持って来てくれる事くらいか。
階級の高そうな人が退出すると、数人のメイドさんが部屋に入り、劇の準備を進めていく。かなりの速さで準備が進められている。それでも、後10分程掛かるらしい。
「エファさんはエストリア王国についてどのくらい知っていますか?」
「わ、私は絵本で昔話を読んだくらいです。ですので、楽しみです」
絵本程度しか知らない事が恥ずかしいのか若干下を向いて話す。
「なら、今回の劇は歴史を知るのに良い機会となりますね」
「はいっ!」
それから10分程エファさんと会話していると速い事に準備が出来たようだ。ちなみに飲み物やクッキーなどのお菓子は雑談している最中に持って来てくれた。勿論、どちらも中々美味しい。
準備された台の上に女性が乗り、語りだす。
「それでは、間もなくエストリア王国主催、エストリア王国の歴史を題材にした劇を始めたいと思います」
思いますと言った瞬間に、窓に着いたカーテンが一斉に締まり、部屋に薄暗いと思わせる程の明かりがつく。その様子に数人の子供が少し騒ぐが、すぐに静かになった。
そして、劇が始まった。まず出てきたシーンは戦闘する人々であった。魔物相手にどんどんやられていく人々。士気も最悪で、もう無理だ! お終いだ! と戦いながら人々が叫ぶ中、銀色の鎧を着た騎士が現れた。そして、次々と魔物を倒していく。その様子を見た、人々はあの人についていこうと思い、反撃を開始する。
そして、長い戦いの末、人々が勝利した。人々は歓喜している中、ある人が銀色の鎧を着た騎士に我らを導いて欲しいと願う。銀色の鎧を着た騎士は少し考え、高らかにエストリア王国の誕生を宣言した。それが、今から600年前の話であった。
シーンが変わり、宮廷魔導士が魔法で色々な景色を映し出す。そして、語り手である女性が説明していく。
誕生したエストリア王国は、苦難に満ち溢れていた。魔物により蹂躙された大地、濁り切った川、まだまだ現れる魔物。その苦難に王は屈しそうになるが、重臣たちの支えにより、何とか解決していく。
問題を少しずつ解決していき、ようやく国が安定し始めると今度は他国が攻めてくるようにもなった。当時の国の数は100を超えていたはずだからまさに戦国時代だ。
時には他国に罠をはめられ、突如くる魔物を対処したりなど、何度も国が崩壊しそうになる。それでも、歴代の王は重臣に支えられながらも頑張る。自国の平和を勝ち取るために。
そういった事を暫く劇は繰り返す。暫くして、またシーンが変わる。
今から100年前になるまで国は戦い続け、遂に平和を勝ち取った。100を超えていた国の数もその当時は、国の消滅、崩壊、災害、侵略などにより10にも満たない数になっていた。
この100年で自国は大きく変わった。度重なる戦争や魔物の襲撃により少なかった人口は激増。未だ残っている未開放地帯をどんどん開拓していき、文明は進化を遂げて、国は大いに発展する。
100年以内の話になると話の内容が濃くなってきており、淡々と進んでいった時代の流れが遅くなる。この時点で既に1時間程経っているのだが、全員が真剣な目で劇を見ている。
そして、濃い内容の末、遂に現代の話となる。そこからはもうひたすら自国を称賛する話となった。特出すべき点をまとめるならば、現代では、合計300万人がエストリア王国で暮らしており、隣国の帝国を除けばこの大陸で一番の人口を誇る程となった。そして、亜人との長きにわたる交流の末、ほとんどの亜人を差別しない国にもなった。後は、特産品かな? 南の方で砂糖が取れたり、王都から少し行ったところで塩が取れたりといった感じだ。
そんな話をして、2時間にも及ぶ劇は終わった。