159話 植物と話せるそうなんだが
159話です! 実はほとんど(9割)実話の短編を現在少しずつ書いています。ただ、そのジャンルが軽めのホラーでして、出来上がり次第すぐに投稿するか、夏定番という事で8月ごろに投稿するか検討中です。(投降した時は宣伝として数話程後書きに書き込みします)
エストリア王国での貴族の階級は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の5段階に分けられている。この階級の上下関係は親密な仲でない限り絶対なものである。
そんな貴族で伯爵の位置に存在する彼女は間違いなく、厄介事でしかない。
確かに彼女と親密にでもなれば上の階級の貴族と交流を持つ事が出来るため、他の男爵よりもリード出来るが、不快に思わせた場合、男爵などすぐに吹っ飛んでしまう。勿論、物理的にも社会的にもだ。
そんな博打のような事をしたくないため、関わりたくないというのが俺の意見だ。それに、どちらになろうとも必ず目立つ。というかそもそも話しかけられた時点で目立つ。
子供たちに目立ってもまだ5歳だから問題ないのだが、メイドさんたちに目立ってしまったら不味い。王城のメイドなのだから間違いなく貴族の方々もいるはずだ。
それはさておき、知らなかったとはいえ、階級の高い人を先に名乗らせてしまった事は当然礼儀作法に置いてよろしくない。早く謝らなければ。
「申し訳ありません、私が先に名前を言うべきでした。私は、カイ・アイン男爵です」
「気にしない。カイ・アイン男爵ね。覚えた。それで、隣の方は何というお名前?」
あまり気にしていないようなので心の中でほっとする。でも、先程から淡々と話すお方だ。それに先程から表情がピクリとも動いていない。緊張しているわけでもなさそうだし、これが素なのか?
「ぼ、ぼ、ぼきゅは! アポト・ネクロ男爵でちゅ!」
「アポト・ネクロ男爵ね。覚えた」
ああ、アポトさん凄く緊張してらっしゃる。男爵である俺でも最初はあんなに緊張していたからそれが伯爵だとさらに緊張してしまっているな。これはアポトさんにあまり会話が行かないようにしないといけないかもしれない。
「この植物はフルー・ウッカと言うの。ウッカはこれがある植物の事を言う。ここが回るからフルー・ウッカ」
「詳しいのですね。普段から植物を観察してらっしゃるのですか?」
「そう。植物を見ると落ち着く」
会話をしつつ、彼女はドレスが汚れないように屈んで、ウツボカズラに似ているフルー・ウッカにまるで愛でるかのように触れる。その様子は純粋に植物が好きなのだと分かる。
「確かに落ち着きますね。勉強の合間などに見ると凄く落ち着きます」
「それに、植物は友達」
「友達……?」
あれか? 家では親密に話す人がいないから植物と話す感じの人なのか?
「ほら、このように」
突然、彼女の手からフルー・ウッカを包み込むかのように魔素が漏れるのを感じる。すると今度は植物から魔素が漏れて彼女の手を包み込んでいくのを感じる。
手から包み込むように魔素を送る事なら出来るけどその逆は植物がやらないと出来ないのではないか? 一体どうやって?
「植物と話せるの」
「ど、どんな事を話したのですか?」
「頑張れーって言ったら頑張るーって」
何その適当な感じは……。
「だけど、おかしいと思わないの?」
「何がですか?」
「植物と話せる事。あまり皆は信じないのに」
若干表情が暗くなっている。普段植物と話している時は一人か信じてくれる人が居る時だけやっているのかもしれない。そうしなければただ植物に触っているだけの人で植物と話せると言っている頭のおかしい子……言い方を変えれば変な子だと思われるのだから。
「おかしいと思いませんよ、例え声を出さずとも、しっかりと話していたと思います」
「そうなの……」
ほんの少し、見間違いかと思う程の表情の変化だが、目が見開いて驚いた様子だ。まあ、普通はおかしいと思うけど、魔素感知で先程の流れを感じてしまったからなあ。
「やっぱり、カイは面白い。あのメイドさんの言う通り」
「メイドさん?」