153話 始まったみたいなんだが
153話です! 少し短めです。
他の貴族たちが作る馬車の行列のうち一つの馬車に乗って10分程、形だけで言えばビーテル・ブリューゲルが描いたバベルの塔を完成させたような城に入った。あれって作成途中に崩れたと言われているけど、この城は大丈夫何だろうか?
まあ、バベルの塔みたいな色と無数の扉ではなく、主に白色が使われており、外見に沿った所だけに扉と窓があるから設計自体が違うだろうな。それに、入り口の地点から既に多くの魔法具を使っているみたいだから大丈夫だと信じたい。
バベルの塔のような城の中は広く、眼前には赤い絨毯が扉にまで続いており、その左右に騎士たちがいた。そんな内装に俺と同年齢の子供たち全員が驚いていた。……いや、数人程は驚いていないようだ。ある程度このような事な光景が起きる事を知っている子供か、ポーカーフェイスが上手い子供なのかもしれない。……5歳でポーカーフェイスが上手いって怖いけどな。
「さて、俺はここまでだ。カイ、頑張りなさい」
「はい」
父親と他の貴族たちは赤い絨毯から外れて、別の扉の中へと入っていった。あらかじめ知っていた事だけれど、少し不安だな。ここからは俺一人で何とかしないといけないのだから。
そう思っていると、メイドさんが子供たちを案内し始めたので、子供たちの中に紛れ込むようにしてそのまま進んでいく。扉を潜りると、部屋の中は、かなり大きく前世を思い出す程に光で溢れており、綺麗だった。そんな光景に見とれていると、メイドさんが子供たちに階級を聞き、その階級ごとに白いテーブルクロスの掛かった大きな丸机に案内し始めた。階級ごとに席は決まっているのか。それは、知らなかったな。
俺も案内されて、席に着く。そして、暫くの間、何をする訳でもなく、ただ座ってのんびりとしていると、隣に座った子供が話しかけてきた。
「あの……私の事、覚えていますか? エファ・モーレです。お久し振りです」
……隣に座っていたのはエファさんであった。コールディの街に会っただけだから久し振りだ。
彼女の外見はあの時よりも綺麗に見えた。セミロングだった赤髪もロングと言える程にまで伸びており、髪の色と一緒である赤いドレスがとても似合っていた。
「こちらこそお久し振りです。ご元気でしたか?」
「は、はい。カイ男爵様もご元気そうですね」
「はい、元気ですよ。後、男爵様と言わずにカイさんと呼んで下さい。私もエファさんと呼ばせていただきますね?」
「はい、わ、分かりました。カイさん」
はにかみながら笑うエファさんを見ていると、先程まで感じていた不安が徐々に薄れていった。一人で不安だったけど、知り合いがいるだけでこうも不安が薄れるものなのか。
そう思いながら会話をしていく。彼女の表情がコロコロと変わっており、中々面白い。会話がある程度盛り上がり始めた所で、突然、大きな声が聞こえた。
「ご静かに……ではこれより、第547回子供会を開催します!」
会話を止めて、声の主を見てみると、奥にあった壇上で階級の高そうな人がいた。
どうやら始まったみたいだ。だが、子供会って……他に何とかならなかったのか? 内心思いながらもその人の話を聞いていた。
(良い名前が決まらなかったです……)