151話 寮での話なんだが
151話です!
寮の中は少し手続きがあっただけで簡単に入る事が出来た。マインズ兄さんが住んでいる部屋は綺麗に整頓されており、清潔であった。そして、案外広い。部屋数の方も数部屋はありそうだ。
「そこの椅子に座って待っててー」
マインズ兄さんがそう言い残してキッチンと思われる所へと入っていった。オズさんもマインズ兄さんの後を追う様にして入っていった。そして、少ししたら水の音がキッチンと思われる所からしてきたので、ラフランス……だったか。お菓子だけでなく、飲み物も用意してくれているようだな。
なら、俺たちは椅子に座って待っていようか。
「そういえば父様、マインズ兄さんに婚約者がいたんだ。そんな話知らなかったよ」
「それは言っていないからな。だが、マインズは貴族を継ぐのだから当然の話だぞ?」
「それはそうだけど……あらかじめ言って欲しかったよ……」
そう話していたらオズさんがキッチンと思われる所から出てきたようだ。
「はい、サフランスね。今、マインズが紅茶を用意してくれているから用意出来たら食べましょう?」
出てきたサフランスは見た感じスナック系のお菓子のようだ。どんな味がするんだろうなあ。
「そうだな。午前中はここにいる予定だからゆっくり話したい所だ。マインズのやつは色々と目立っているみたいだからな」
「ええ、マインズはもっと大人しく行動して欲しいけれど、彼、巻き込まれやすいですから厄介事に巻き込まれてしまいます」
「村ではそんなに巻き込まれるような事はあまりなかったのだがなあ……パーティなどにもっと参加させるべきだったかな?」
「それはそれで何かしら巻き込まれていそうですね」
はあ……、と父親もオズさんも少さな溜息を吐く。そんなタイミングでマインズ兄さんが戻ってきた。
「どうしたのさ2人とも溜息なんてついちゃってさ」
「マインズの目立ち具合について話していただけだぞ。色々と厄介事に巻き込まれているみたいだからな」
「そうなんだよ父さん聞いてよ! 貴族たちがしつこくてさ! この前なんて数人同時に戦う事になったんだよ!」
「でも、勝ったのだろう?」
「勿論、あんな卑怯な人たちに負けないさ!」
元気に答えるのは良いけど、面倒事に巻き込まれないように頑張ろう? 人の事は全く言えないけどさ。
話しを聞きながらサフランスというお菓子を食べ、マインズ兄さんが配った紅茶を少し飲む。……お、中々いけるな。個人的にはもう少し紅茶に砂糖を入れたいが、これはこれで行けるから問題なしだ。
「全く、今は何とかなっているけど本当に気を付けてよね? 見ていて危なっかしいんだから」
「オズ、大丈夫だって。いざとなったらゼルに手伝ってもらうさ」
「ぜルって、ゼル・ドニアス公爵様? 最近良く見かけるけどそんなに仲良かったんだね」
「ああ。よく一緒に鍛錬もしているぞ! 相変わらず勝てないけどね!」
「いや、逆に勝てたらそれはそれで問題になるから気を付けてよね!?」
「……そうなの?」
それはそうだろうな。国の剣と呼ばれている貴族で、大会優勝者に勝ってしまったらさらなる注目を浴びて、厄介事に巻き込まれそうだ。
「そうよ! 本当に気を付けてよね!」
「オズ令嬢……すまないな。これからもマインズをしっかりと見張っていてくれ」
「勿論です。ですからフェンド男爵様は安心して下さい」
「……そんなに頼りない?」
「「「うん」」」
「ええー……」
ぐったりとうなだれるマインズ兄さん。うん、もう少しちゃんとしてくれれば問題ないと思うんだけどなあ。
とまあ、話をしていたらあっという間に昼頃になった。
「それでは、そろそろ失礼しようか。マインズ、剣も良いがちゃんと勉強もするんだぞ? それと、オズ令嬢が心配するような事をするんじゃないぞ? オズ令嬢も、これからもマインズを支えてやってくれ」
「分かってるよー! 過保護だなあ」
「ええ、マインズの事は任せて下さい」
「ああ、頼んだ」
そう言って部屋を出ていく。俺も少し言っておこうかな?
「マインズ兄さん、あまり心配させないでね?」
「カイまで……そんなに」
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学園を出て、軽く昼飯を食べてから父親の冒険者時代からの仲間がいる場所へと向かう。その人が居る所はこの場所から離れているため、王都内の大通りを電車みたいに移動している馬車に乗って、移動していく。大通りはかなりの人で、歩きにくいからこういった馬車はありがたい。まあ、馬車も結構混んでいるけどね。
しばらく馬車に揺られていると着いたみたいだ。父親の先導の下、進んでいくと大きな家に着いた。
「ここが、あいつの家だ。外見は怖いかも知れないが、良い奴だから良くしてやってくれよ」
「うん、分かったよ」
父親はその言葉を聞いてから、大きな家のドアにノックを響かせる。10秒程経った程でドアが開けられた。
「フェンド、久しぶりだな。そっちのちびっ子はカイって名前だったか? 俺はムスイだ。よろしくな。さあ、入ってくれ」
「ああ、失礼するよ」
「よ、宜しくお願いします。お邪魔します」
「おう!」
家の中から出てきた人を見て思わず、息を呑んだ。身長が2mを軽く超えており、威圧しているのかと思う程にめっちゃいかつい。そして、笑顔が獲物を狙っているような人の顔に見えてしまい、驚いてしまう。
でも、父親の話と、話の内容からして外見に似合わない人だと思うので、出来るだけ驚いていないように見せかけて返事をするが、少し噛んでしまった。まあ、特に気にしてないみたいだから良かった。
家の中はかなりシンプルで、綺麗だ。父親と共に稽古をさせてくれる相手なのだからそれなりに稼いでいると思うのだが、装飾品などがほとんどない。
「さて、色々と話す事はあるが、それはカイの鍛錬中に話そうか。早速、開始しよう」
「ああ、そうしようか。フェンドが俺の所に連れてくるのだからそれなりに出来るんだろう?」
「勿論だ。初心者冒険者みたいに侮るなよ?」
「ひゅー! そんなにか」
「期待したら良いさ」
ムスイさんが進んで稽古を付けてくれるのは嬉しいけど、そんなにハードル高くしないで欲しい。
正直、マインズの話で数話書けそうだけど長くなるので止めました。