145話 王都が見えてきたんだが
145話です!
比較的整備されている道をひたすら進む。揺れる馬車から見える景観も然程変わらない。初めのうちは少しばかり感動していたが、それが続くと徐々に感動が薄れていき、飽きが来てしまう。
その結果、俺は外の景観を特に見る事なく、読書を楽しんだり、涼風と戯れていたり、魔法を使い続けて気絶したりして、時間を潰していた。
何しろ日の出と共に馬車に乗って進み出し、日の入と共に馬車を止めて、寝る支度を急いで行うのだ。1日の大半を馬車の中で過ごすため、予想はしていた事であるが、かなり暇である。逆に馬車に乗っていない時は忙しくなる。
野営の場合は食事やテントを張り、周囲の警戒を行わなければならないため、大変だ。合間を縫って軽い稽古を行っているか、近くに生えているキルルク草などの使えそうな植物を採取したりしているため、その分楽しいが。
村の場合は大体宿泊する事になるため、野営よりも断然楽で良い。お金を払えば食事や寝床を用意してくれるからな。費用の方は中々するが、そこは流石貴族。簡単に払う事が出来る。
それに、王都へと進む最中に盗賊や魔物が襲撃してくる時がある。それらを殺し、戦利品を取ってそれを売却すればそこまで高い費用とはならなくなる。だが、王都に着く時間が遅くなってしまう事が欠点となるが。
まあ、出来るだけ早い事に越したことはないが、多少遅れても問題ない。王都で少し滞在してからパーティが始まる。それまでは、パーティに出る準備だ。服は用意してあるが、それ以外にも色々と用意しなければならない。とはいっても、高位な貴族みたく、潤沢に資金があるわけではないため、恥にならない程度の物を用意すれば良い。
他にもマインズ兄さんに会う事も出来る。1カ月に一度位の頻度で手紙が届くため、元気でやっているのは知っている。……むしろ元気すぎる気もするが。
どうもマインズ兄さん、学園で良い意味で色々とやらかしているらしい。学園で決まる組は入学試験で行われる実技試験、筆記試験の結果により出される成績順なのだが、マインズ兄さんは一番良い組に決まったらしい。それだけなら凄いなあ、で終わるのだが、子爵家以下の貴族がマインズ兄さんしかいないのだ。
しかも実技試験の相手が子爵家だったらしいが、一合もなく、倒してしまったらしい。この結果は同世代の子はおろか、教師も予想外だったらしい。そのため、もう一度試験が行われ、相手が教師となったらしい。結果は敗北してしまったらしいが、数合も打ち合って負けたのだ。だが、教師とここまで打ち合える同世代はあまりいないという事で大変良い成績を得る事が出来たそうだ。
良い成績を得られたのは良い限りだが、問題は子爵家を一合もなく倒してしまった事だ。このせいで、他の子爵家や男爵家のプライドを刺激してしまい、厄介事を色々と持ってくるようになってしまったそうだ。それだけでなく、組の方でも身分の差から友達と言える人もあまり出来ず、返ってライバル視してくる人が出て来てしまう始末だ。
これだけならまだ 問題ないのだ。いや、いじめに発展しそうな程、十分に不味い事になっていると思うが、3ヶ月前に読んだ手紙の内容よりかはましだろう。
3カ月前に届いた手紙を要約するとこうだ。マインズ兄さんは同世代が全員強制参加で行われる学園の大会で準々決勝まで残ったらしい。その時に負けてしまった相手が国の剣と言われている程有名なドニアス公爵家の次男だ。それも、中々良い試合をしたらしい。
ちなみにドニアス公爵家の次男は、その大会で優勝したそうだ。それも、決勝戦とマインズ兄さん以外の試合は一瞬で終わらせた程の力量差で、だ。勿論、この事が穏便に済むはずもなく、もう身分関係なく厄介事を色々と持ってくるようになったらしい。その分、実力を認めて仲良くやっている人が増えたそうだ。
とまあ、本当に色々とやらかしているらしい……が、この話は王都のパーティとは関係ないか。マインズ兄さんはマインズ兄さんで頑張って欲しいと思うし、仲の良い友達もいるらしいので問題ないのだ。
「カイ、王都が見えてきたぞ。だから、ここからは身だしなみや言葉遣いなどに気を付けてくれ」
「本当?」
マインズ兄さんの事を色々と思い出している所で父親が話しかけてきた。王都が見えてきたそうなので、馬車の窓から顔を出して外の様子を見てみると薄っすらと王都が見えてきた。ただ、規模がドナンドとは全然違い、凄く大きい。
少し見惚れていると父親が咳払いをしたので、慌てて顔を引っ込めて、笑って誤魔化しながら返事をする。
「コールディの街と同じようにすれば良いよね? 分かってるよ」
「それなら良いんだ。貴族らしく頼むぞ」
「はい」
とはいっても先程みたいに顔を出す事は駄目だが、馬車の中を見る輩はあまりいないと思うけどなあ。じろじろと馬車の中を見ていたら不敬だろう。いや、子爵以上の貴族なら格上になるので不敬とはならないか。
まあ、そんな貴族はそうそういないはずなので問題ないな。それよりもここからは気を引き締めていかないとな。絶対に転生者とばれないようにするためにも。
道中はただ弱い盗賊や魔物が攻めてきただけなので省略です。次回は王都の中に入ります!