140話 悪夢を見たんだが
140話です!
ここは……何処だろう。暗くてよく分からない。身動きも取れなく、魔素も感じられない。ただ、目の前に誰かがいる。
「あの時は良くもやってくれたな……」
あの人は……あの時の襲撃者? 殺したはず……何で……生きている?
「俺はまだやりたい事があった……。帰りを待っている人もいた……。なのに、お前が殺したせいで!」
痛い……。殴らないで……。蹴らないで……。
「貴様は化け物だ! 死ね……早く死ねよ!」
止めて……。これ以上攻撃しないで……。苦しい……。止め……て……。
「死んでしまえええええ!」
「……様……イ様」
痛いのに……苦しいのに……この男とは別の声が聞こえる……誰だ?
「カイ様!」
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「ああああああ!!」
な、何だったんだ今のは……。
「カイ様、大丈夫ですか? 随分とうなされていましたよ」
声がした方を見ると、暗くて顔がうっすらとしか見えないがイネアがすぐ近くにいた。今のは……夢だったのか。良かった……夢で。
「うん……大丈夫……ちょっと悪い夢を見ただけだから」
「そうですか……ですが、大分汗を掻いていますので一度着替えた方が良いかと思います」
その言葉に自分の体を見ると汗でびっしょりになっていた。これは……体が冷えてしまうな。
「そう……だね。お願い」
「かしこまりました。着替えを持ってきますので、その間にこのタオルで体をお拭きになってください」
「ありがとう」
イネアからタオルを貰って服を脱ぎ、早速汗を拭いていく。昼と違い、薄ら寒い気温だというのに、こんなに汗を掻いてしまっているな……。どうみてもあの夢が原因だ……。夢にまで出るから人を殺すという事がトラウマになっているのだろうな。時間が解決するとは思うが……このままずっとこうだったら嫌だなあ……。
「カイ様、こちらに着替えて下さい」
「うん、ありがとう。この服お願いね」
「かしこまりました」
トラウマの事を考えているとイネアが服を渡してきたので、先程来ていた服を渡して、着替えていく。
「……カイ様、ドナンドでは色々と辛い体験をなされたと思います。その体験が原因でうなされていたと愚考しております」
「うん、イネアの言う通りだよ。初めて殺した人が俺を殺しに来る夢を見た……」
「そうでしたか……カイ様、心の傷は中々治りません。時間の経過やカイ様自身が成長していく事が心の傷を癒す要因となるかと思います」
「そうだよね……ねえ、イネア。寝るまでの間さ……このまま側にいてくれないかな? 誰かがいてくれた方が落ち着くからさ……」
「かしこまりました。私はずっと側にいますので安心してお休みなさって下さい」
「うん……ありがとう。お休み……イネア……」
やはり、近くに信頼出来る人がいると……安心するな。また、同じような夢を見ないか心配になるけど、イネアのおかげで安心して寝れそうだ。
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翌朝、安心して寝る事が出来たからか特に悪い夢などを見る事がなく、良い朝を迎える事が出来た。朝食の前にスライムの涼風に餌を上げる。最初はパンや虫などを与えていたが、今は魔石やキルルク草などを与えている。涼風はどうやら食べ物を食べて、それを魔素に変えていくようだ。なので、魔素が多く含んでいる者の方が良いみたいだ。実際魔石やをキルルク草を与えた方が喜んでいるようだしね。
そして、朝食の時間が迫ってきてイネアが呼びに来たため、リビングへと向かう。リビングには母親が先に来ていたようだ。自分の席に座り、フレッツ兄さんと父親を待っていると先に父親が来ていたようだ……っ!
「……父様、その傷は……?」
父親の手や顔に包帯が巻かれている。ま、まさか……昨日のあれでこうなったのか? 流石にやり過ぎなんじゃ……。
「ああ、俺の罰だ。まあ、暫くしたら治るから大丈夫だ」
「ええ、ちゃんと手加減したから大丈夫よ」
「そ、そうなら良いけど……」
母親……そんな笑顔で言わないで下さい。かなり怖いです……。