閑話 マリンの思い(上)
閑話です! 詳しくやると話しが長くなりそうだったので、簡単に書きました。詳しくやって欲しいと要望があればやりたいと思います。
私が彼と出会ったのは12年前だった。
私は彼と違い平民で12歳から冒険者をやっていた。そもそも冒険者になったのは一攫千金目的だ。私の家はあまり裕福でなかったために冒険者になった。
とは言っても、精々20歳頃に結婚して、夫と一緒にお金を集めていけばいいと思っていたくらいだ。
最初に彼と仕事したのはゴブリン退治であった。
ゴブリン退治とは初心者冒険者がよく受ける依頼であり、討伐数10体で銀貨1枚という値段であった。
当時はまだ魔法も満足に使えずにいたから軽い怪我くらいは覚悟していた。受付にゴブリン退治の依頼を持っていき、依頼を受けようとした時に後ろから彼は私に一緒に受けないか? と声をかけてきたのだ。その時は私の体もしくはお金目的に言い寄ってきていると感じ断っていたが、心配だと言ってきてなかなか諦めないのでつい一緒にクエストを受けてしまった。
そうして、街を出てゴブリンを彼と一緒に倒していた。私は魔法しか扱えなかったのでゴブリンの近くにはいかなかったが、彼は剣で戦うようでゴブリンが持っている棍棒を受け流し、その隙にゴブリンに攻撃していた。何度か危ないと感じたところがあったが、怪我なくゴブリンを殺していった。
そして、街に戻って受付でゴブリン退治の報酬をもらい、彼と分けようと思い彼を見た時、自分は少しでいいと言ってきたが、無理矢理半分ずつにした。
それから依頼をやる時、たまに彼はやってきて、一緒に依頼を受けるようになった。私は魔法をどんどん覚えていき、彼も最初の頃よりもかなり強くなった。
そうして順調に冒険者のランクを上げていったある日、いつも通り依頼を受けようと依頼を探していたら後ろから男の声が掛かってきた。
話を聞くところどうやら依頼のパーティのお誘いだった。私は彼以外では他の人と組まずにでやっていたためたまにはいいかなと思い、パーティに入り依頼を受けた。
パーティは男3人女2人で前衛4人後衛1人であり、後衛が女のヒーラーであった。冒険者のランクは私と同じで魔法が使える人を探していたそうだ。
そして受ける依頼はラージフロッグ退治であった。討伐数は15体で、街から南東に歩いて2日行ったところに沼地が広がっており、そこで狩りをするらしい。
ラージフロッグとは3mくらいの大きな蛙だ。毒はないが、蛙のくせに牙があり、口から舌を出して獲物を捕まえて噛み砕くらしい。油断して冒険者がやられることが多いらしい。
依頼は明日やることになり、今日は杖の点検やポーションなどを買ったりして1日を過ごした。
そして朝早くから街を出た、道中ではゴブリンやコボルトなどを狩りつつ、向かっていった。最初は草原を横切り、森に入り、湖に向かった。途中野宿の際に一応ご飯の時や寝るときは警戒をしたが、特に危険はなかった。
街にでてから3日目の早朝に沼地に着き、いくつかラージフロッグを見つけたので早速狩っていった。最初は30分に1匹出るかどうかであったため安定して倒すことができたが、昼前になったあたりで一気に数が増えてきた。
私たちの疲労なども溜まっていたが、お金のために素材を持ち帰らないといけないため、必死に戦った。それから1時間位した時に、いきなり大量のラージフロッグが現れた。奥には色が変わったラージフロッグも見えた。流石にやばいと感じリーダーが撤退といい、一度撤退しようとした。
だが、撤退している時に前衛の1人の足が蛙の舌に引っかかり、ズルズルとだがあっという間に蛙の口に運ばれていった。急いで助けようとしたが、間一髪間に合わなかった。それどころかさらに自分たちを狙ってきたので急いで逃げた。1人また1人とラージフロッグの舌に捕まり、その度に助けようとしたが助けられず、残り2人になったところで私の魔素もほぼ尽きてしまった。もう1人は号泣しながら一緒に逃げた。
30分間必死に逃げ、ラージフラッグはもう追ってこないため、一息つき今後について話した。生き残った1人は男で、精神は大分参っているためと大量発生を伝えるために街に戻ることにした。今日の所はもう休むことにしたがまだ森にいたためせめて森は出ようということになった。森では魔物の数が多く、夜では活発になってしまうためだ。
すっかり日が落ち、辺りが真っ暗であったが、草原にでた。そして、干し肉とパンを齧り、野営を2時間交代と決め睡眠をとった。彼はかなり精神的に疲れており、先に寝たらどうか? と聞いたが、先に寝ろと言われたため素直に従った。
私は疲れていたためかすぐに熟睡してしまった。
そしてふとだれかに触られた気がして起きた時、男は私の胸を触っていた。思わず私は悲鳴を上げてしまいその男の顔面を殴った。そして、男も私が起きたことに気づき襲ってきた。
前衛と後衛では力の差が大きく、さらに私は横になりながらの抵抗であったためすぐに抑えられた。服は無理矢理破られ、抵抗しようとしたら殴ってきて痛みでうずくまるくらいしかできなくなってしまっていた。
その時だった。彼が突如男の後ろから現れて、彼の首を後ろから剣でスパンと切った。血が吹き飛び、私の全身が真っ赤になったがそれどころではなかった。彼がいきなり現れたことに驚きを隠せなかったがそれと同時に、男から助けてくれたことに安堵してしまい、つい彼を抱きしめてしまった。彼はいきなり私が抱き着いてきたことで顔を真夜中でも分かるくらい真っ赤にしており、かなり驚いていた。そして、私の頭を撫でてくれてひたすらもう、大丈夫。と声をかけ続けてくれた。
しばらくして血を拭き取り、予備の服を着た後、なぜ彼がここに来ているのかを聞いてみた。彼が言うにはとある冒険者が大慌てでギルドに入ってきて、ラージフロッグが大量発生していることをギルドに報告している所を、聞いた際に私が依頼を受けたことを知り、急いで来たらしい。
それを知った私は驚いた。大量発生は10年に数度あるくらいであり、ギルドが緊急依頼を出して、退治をするものだ。
それなのに彼はここに来てくれた。そして私を助けてくれた。
そう思った瞬間、胸が苦しくなって、私は彼が好きなのだと気づいた。
それから1年後。以前と変わらず彼はたまに来ては私と一緒に依頼を受けていた。その時に、彼は実は貴族ということを打ち明けた。
それを知った時、平民である私と貴族である彼とは身分差で釣り合わないと感じ、彼と少し距離を置くことにした。そうしないと私の思いが収まらないと感じたからだ。
おかげで寝る時は毎日のように切なくなって胸が苦しくなったが必死に耐えた。
距離を置いてから3ヵ月。彼と数度あったが、適当にあしらって、距離を置いた。彼はなぜ距離を置いているのか分かっていないみたいで、変わらず声をかけてきた。そしてついに私の思いは抑えきれず、つい彼に、もう構わないでよ! と大声で言い、ギルドから出てしまった。
そしてそのまま街を出てしばらく走り、落ち着くまで辺りに魔法をひたすらぶつけた。少し落ち着いた時には日が暮れてきたのでその日は野宿でもいいかなと思い、辺りを警戒しながら寝た。
次の日、街に戻り少し行きづらかったが、ギルドに顔を出した。そしたら彼がまだギルドにいた。そして私を見つけるとどこ行っていたのかと言ってきた。私はなんで私に構うのよと聞いてみたが、彼はお前のことが心配だからと言い、私が話すまでは何があっても会話を終わらせない気でいた。これではずっと話しが終わらないため、話すことにした。
ここでは流石に恥ずかしいことと、注目を集めているため、街を出て川の近くで話すことにした。宿や飯屋でそんな話しをするのはなんか違うと思ったためだ。
そして私は彼にあなたのことが好きだが、あなたが貴族だから釣り合わないから、私の思いが抑えられるうちに距離を置くことにしたことを話した。話しをしていくうちに彼が悲しそうな顔をするため、思わず、涙があふれてきた。
話終わった時に彼は唐突に私を抱きしめてきた。何が起こったか訳も分からず、抱きしめられたまま思考が停止してしまった。そして彼は私を抱きしめたまま、俺はお前のことが出会った時から好きだ。と言ってきた。それを聞いた時私は耳を疑った。彼はギルドの女性からも一定数のファンがいるくらいにはイケメンで性格も良かったため、貴族の人達がそんな彼を狙って、結婚するのかと思っていた。
彼にそのことを言うと彼は苦笑しながら、何度か貴族の令嬢や他の冒険者たちから告白されたりしたらしいがすべて断ったそうだ。
そして、私はなぜ私なのと聞いた。そしたら彼は最初、私と会った時に一目惚れで思わず声をかけたらしいが、会ううちに段々と愛おしくなっていったそうだ。そのことを熱々と語られてしまい、私は途中から恥ずかしくなってしまった。自分でも分かる。絶対に顔が真っ赤だ。
そして彼の話しが終わった時、もう一度私に好きだと言い、私の顎を持ち、顔を寄せていき、唇を奪っていった。そして私は彼のことがどうしても愛おしく、もう手放したくないと思い、私の方からも手を彼の背中に手を回し、こちらからも唇を奪った。
しばらくキスをした後、彼は私に妻になって欲しいと言ってきた。私ははい。と笑顔で彼に答えた。
そうして私は彼、フェイド・アインの妻となった。
恋愛の描写結構難しいですね。