表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/220

閑話 フェンドの焦り 5

閑話です! 久し振りの3000文字以上です! ただ、それでも駆け足で話が進みます。

 ……その後、俺は馬車を出て、ライル殿と共に奴らを1人残らず始末し、子供たちを解放していった。その後、俺が子供たちの体調を見ている最中にライル殿は物を収納出来る魔法具から食べ物を取り出し、腹を空かしているであろう子供たちに簡単な汁物を作るそうだ。ライル殿が作る汁物は栄養豊富であるため、丁度良いのだろう。


 子供たちの体調を見た限りでは子供によって大分違いがある事が分かった。体調の良い子供はすぐに親元に返す事が出来る程の体力が残っていた。だが、体調が悪い子供は今にも倒れそうでいた。その子供はライル殿が作っている汁物を飲ませてから馬車に寝かせて回復を待つしかない。


 子供たちの体調を見終わり、子供たちの様子を見ながらこの馬車における情報を整理していた。結局、ここにカイはいなかった。いたのは弱り切っている子供たちと先程奪い取ったのであろう新鮮な野菜のみであった。他に気になる所と言えはこの不自然に開いた穴だろうか。外からはまるで応急処置とでも言わんばかりに掛かっていた黒い布の部分であった。何故この穴が開いているのかは分からない。だが、奴らが平然とこの状態で放置するとは思えない。


 子供たちにこの穴について何か知っているのかと聞いてみると何故か非常に怯えながらも細々とした声で教えてくれた。


「あ、あの……今日捕まった子が……やったの……!」


 ……は? 子供が? そんな馬鹿な。奴らが子供たちに付けていた抑圧の鎖はその子供にも付けていたはずだ。幾ら品質が悪くとも動けないはずだ。それを外したのか? ……それとも壊したのか? そんな事出来る子供が……いや、今日捕まったという事はまさか?


「……その子供はどんな外見をしていた?」

「ヒッ、え、えっと、茶色の髪で白い服を着てた……よね?」

「う、うん……着てた」


 茶髪に白い服……カイなのか? 昨日宿を出る前に見たカイの服装の色は白だったはずだ。だとしたら自力で脱出したのか?


「この穴は何時開いたんだ?」

「……し、知らない。ごめんなさい……」


 知らないか。……いや、こんな閉鎖空間にずっといたのだ。時間の経過はよく分からないのだろう。質問の仕方が駄目だったな。


「いや、俺の質問が悪かった。穴が開いた時に見えた風景はどうだった?」

「……わ、分かんない」

「……僕、分かる。草がいっぱい生えてた!」


 草原か。なら、街から出てすぐに逃げ出せたのか。なら、すぐ向かおう……と言いたい所であるが、子供たちがな……。ライル殿が作っている汁物を食べさせたらすぐに出発しなければな。


「よし、これで出来たのである! さあ、食べるのである!」


 ライル殿の方を見ると美味しそうな香りを漂わせた汁物が子供の人数分用意していた。


「わあ、美味しそう!」

「俺これー!」

「あ、ずるい!」

「ははは、ゆっくり食べるのであるぞ」


 料理を見て途端に笑顔になって走っていき、食べ始める。


「美味しいー!」

「うぐっ、ひぐっ、美味しいよおお」

「暖かい……」


 久しぶりのまともな食事に皆笑顔で食べている。中には泣いてしまっている子もいる。そして、皆が凄い勢いで食べていくので余程腹を空かしていたのだな……。と、子供たちを見ているとライル殿が話しかけてきた。


「……フェンド殿、後は私がやるのである。フェンド殿はカイ殿を探しに行って欲しいのである」

「……良いのですか?」

「ここで時間を掛けてはいけませんぞ!」

「……ありがとうございます」


 ライル殿にこの場は任せて馬に乗ってこの場から離れ、カイを探しに草原へと向かう。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 草原に着いた時には既に日は登りきっており、今度は段々と落ちようとしていた。温度も朝と比べて上昇しており汗が出て来ている事を感じながら道を走り、時には道から外れたりもして、カイを必死に探す。


 だが、中々見つからない。たまたま見つからないだけか、カイ自身も隠れているのか……また捕まってしまったのか……。と、どんどん悪い想像をしてしまう。そんな想像を振り払うように頭を振る。


 カイなら大丈夫だ!  


 自分にそう言い聞かせて馬を走らせると前方から何やら戦っている音が聞こえてきた。そちらを注意深く見ると騎士団が誰かと戦っていた。相手は普通の恰好をしているが素行の悪そうな人たちであった。おそらく盗賊であろうが、数が多い。50人はいるのではないか?


 ひとまず騎士団に加勢しようと思い、近づいていく。


「ゼノス団長! 加勢します!」

「フェンド殿! 助かります!」


 馬から降りて、盗賊に攻撃していき、制圧していく。


「もうやってられるか! 俺は逃げるぞ」

「ふざけんじゃねえ! 戦え!」


 元から騎士団が優勢であったのだろう。何とか耐えていた盗賊たちは騎士団の援軍が来た事を知り、逃げ始める。だが、逃がさない。


 逃げ始めた盗賊目掛けて短剣を投げる。すると太腿に当たり、倒れた。それでも逃げようとしているのでその盗賊の下に向かい、とどめを刺す。


 するとまた逃げようとしている盗賊を見つけたのでさらに攻撃していく。


 そのようにして、少々時間を使ってしまったが、盗賊を制圧しきった。


「フェンド殿、助かりました」

「いえ、ゼノス団長なら私がいなくても大丈夫だったでしょう?」

「ははは、ですが早く制圧出来たので良かったです」

「……ところで、カイは見つかりましたか?」

「……申し訳ないですがまだ見つかっていません。ですが、数名帝国の奴らを捕まえて尋問した所、森に入ったしまったそうです……」

「森に……?」


 森に……? 何故だ? 森の方が逃げやすいと判断したからか?


「ええ、おそらく追いつかれないようにするためでしょう。馬を使って追いかけたようで、逃げ切るために入ったのでしょう……ですが、カイは現在5歳ですよね? 逃げ切る程の力があるとは思えないのですが……」

「いえ、逃げ切る力はありますよ。普段から訓練をしているのでそこそこの速度で走る事も可能で、身体強化も使えますからね」

「それでも、馬から逃げ切る程の速度は……いえ、今は先に捜索しましょう」

「そうですね。では、森に……」

「お話の途中ですが申し訳ありません! ドナンドの街の方向から大量の魔素反応が!」


 森に行こうと言おうとした時に1人の騎士が話に割って入ってきて、そんな事を言い出した。その騎士の手元には魔素探知機があった。


「何!? どの程度だ!」

「青です!」


 魔素探知機は魔素の探知をするだけでなく、量も分かる。その量は色で分かるのだが……青と言えば上級魔法程の反応ではなかったか? だとしたら街が危ないかも知れない。


「ゼノス団長!」

「ええ! 総員ドナンドの街に向かいますよ!」

「「「おおー!」」」


 俺と騎士団全員は馬に乗ってドナンドの街に向かう。ドナンドの街が見えてくると獣人の騎士から道を外れた所から血の臭いがすると報告が来た。


「……ドナンドの街からは特に騒がしい様子もないみたいですのでそこから反応があったのでしょうか?」

「かもしれませんね。行ってみましょう」


 獣人の騎士の案内の下、進んでいくと上半身と下半身が真っ二つになっている奴が2人いた。


「先程の魔素反応でやられたのでしょうね」

「みたいですね。周りの草も一緒に切れています。それにここ場だけ濡れていますので水魔法でしょうね」

「水魔法……?」


 この状態……どこかで見たような……。


「ゼノス団長、こちらからも臭いがします」

「では、案内して下さい」

「はっ!」


 獣人の騎士がまた臭いを感知したようだ。また、案内してもらうと今度は女性……帝国の奴と子供が倒れていた……っ!


「カイ!」


 馬から降りてカイを抱き上げて、様子を見る。これは……生きているが、かなり危険な状態だ! 体中に傷があり、骨折している所が1箇所や2箇所だけでない。そして、今も血が少しずつ出て来ており、顔色が悪くなっている。


「ゼノス団長! 回復班を!」

「分かりました!」


 ゼノス団長に回復班を呼んでもらい、カイに治療をしてもらう。


「……これでひとまずは大丈夫でしょう。後は詰め所で治療します。ただ、治療が無ければ死亡も十分に有り得たでしょう」

「そうか……良かった……本当に……良かった」

「ええ、本当に良かったです……」


 カイが生きて戻ってきてくれて本当に良かった……! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ