14話 奴隷購入して帰宅したんだが
14話です! 次回は閑話です。主役は母親であるマリンになります! 閑話は全3話で隔日で投稿します! 15話からは毎日投稿できます。(多分)
12/12改正。
翌日、昨日はあれから夕食を食べ、タオルで体を拭き、会話をして寝るという一昨日とそう変わらない時間を過ごした。
そして現在、馬車を使い、奴隷商館に向かっていた。
「お待ちしておりました。すでに奴隷の準備は出来ております」
「そうか。では持っていこう」
「分かりました。では、またのご来店をお待ちしております」
と言ったなんともあっさりとしたやり取りをして奴隷商館から出た。
そして、両親と買った奴隷は馬車に乗り、そのまま街を出た。
「さて……まずは自己紹介でもしてもらおうか」
「……はい。……名前はイネアです。年齢は6歳でドワーフです。……鍛冶が少し出来ます」
「ああ、それで奴隷になった経緯は?」
「はい……。店主に聞いた話では私が1歳の時に売られたそうです。鍛冶が少し出来るのは店主が私の称号を見て鍛冶をやらせて頂けたおかげです」
「1歳の頃からか……。では、称号を見せてもらうぞ。マリン、頼んだ」
「ええ、分かったわ」
「……え?どうのように見るのですか?」
「こうやるのよ。あげうfcにfsんrg、鑑定」
母親はイネアに触って鑑定を唱えた。そうやってステータスが分かるのか。見た感じでは遠隔操作で出来ないみたいだからとりあえず安心だ。
「……凄いわね。どうやらイネアには鍛冶の才能という称号を持っているみたい。あの金額で買えたのが不思議なくらいだわ」
「ほう……。鍛冶の才能か。才能系とは良い称号ではないか」
鍛冶の才能? それって称号なのか?
「……あの、どのような称号なのでしょうか?」
「鍛冶の才能はそのままあなたに鍛冶の才能があるという証ね。効果は鍛冶に関することのイメージが大、器用になりやすいらしいわ」
「それは凄いのでしょうか……?」
「ええ、とても凄いわよ。才能持ちは珍しくて、先天性な称号なのよ。そしてイメージ大の有無で習熟度が大分変ってくるわ」
「どのくらい変わるのですか……?」
「そうねー……持ってない人だと長年やる事によってようやく習得出来るものを持ってる人はその人の約半分程で習得出来るらしいわ」
ええ……そんなに差があるのか。転生者はすべての事柄において大の補正が掛かっているから俺の場合はすべてにおいて才能があるということになるのか?
それこそチートじゃん。
「そんな才能が私に……?」
「ええ、だから頑張りなさい。まあなんでこの子があの中であなたを選んだのかは知らないけどね」
「この子とは今抱えてらっしゃるその赤子の事でしょうか……?」
「ん? ええそうよ。カイという名前なんだけど、この子が選んだわ」
「そんなことが出来るのですか……? ……申し訳ございません! 疑うなんて出過ぎた真似をしました!」
「いえ、気になる事はどんどん聞きなさい。それにカイは少し特殊だから」
まあ、0歳児が自分を選んだと言われたら誰もが疑うよな。疑わずにいる方がおかしいと思う。
「まあ、一応は奴隷という扱いだが平民と変わらず扱うつもりだからな。そう畏まらないでくれ」
「……え? そんな大それたことをしてもらわなくても」
「いや、そうするべきだ。私たちはね、奴隷だからと言って雑に扱うなんてことはしたくない。ちゃんと飯は食わせるし、寝る部屋は……カイと同じ部屋になるのだがちゃんとある」
「そ……そんな扱いを……え? 同じ部屋ですか?」
「ああ、何時何かあるか分からないからな。自分で解決出来ない事は今業者をしているイリスに頼みなさい」
「店主に聞いた話と扱いが全然違うのですが本当によろしいのですか?」
「ああ、よそはよそ。うちはうちだ」
「あ……ありがとうございます! 精一杯頑張ります!」
初めてイネアが笑った気がする。守りたい、この笑顔ってやつだな。
「そうしてくれ。そういえばまだイネアの役目を言っていなかったな。イネアの役目はカイの世話係だ。他はカイが大きくなってからカイに決めてもらいなさい」
「分かりました。……あの、お2人のお名前を教えてもらってもいいでしょうか……?」
「ああ、まだ言ってなかったな。私はフェンド・アインだ。隣が私の妻である、マリン・アインだ」
「ええ、貴族様なのですか!? こ、これは失礼しました……!」
イネアが土下座しだした。馬車の中で器用だな。
「いや、顔を上げなさい。貴族といっても端くれだ。それにこのようにあまり貴族らしくもないからな」
「そうよ。外ではできるだけ貴族らしく振るわなければいけないけれど、普段はそうでもないからね」
「は……はあ」
イネアが元の姿勢に戻った。まあ貴族と奴隷が対面で座って話していれば慌てるよな。おそらく普通だったら貴族が普通に座っていて、奴隷は荷物置き場にいそうだしな。
「他のことに関しては家にいる他の奴隷に聞きなさい」
「はい。分かりました」
「家までは後5時間くらいだから、楽にしてなさい。そんなカチカチだとこっちまでカチカチになってしまうわ」
「え……? あ、はい。分かりました」
とりあえず、イネアが不当な扱いを受けなくて良かった。というか両親は本当に貴族らしくない気がする。まあ、いざという時はしっかりとしていて、頼りになると思うからいいけどね。
その後、イネアはずっとニコニコしながら窓を覗いている。多分街から出たことがなかったのだろう。そして、思ったよりもずっと扱いが良いことに安心したのだろう。
ゆっくりと走る馬車にゆったり揺られ、村に戻っていった。
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小話
街から2時間経った頃。
「フェンド。ゴブリンがまたいるわ」
「よく出るな。殺っといてくれ」
「ええ、すぐ戻るわね」
「え? マリン様が直接行かれるのですか?」
「ん? ああ、普通の貴族は自分から魔物を狩らないのだが、マリンは自分でやりたがるんだよ」
「大丈夫なのですか?」
「いつものことだから大丈夫だ」
ドッカーン……、ドッカーン……
「あの、凄い音が後ろから響いていますけど本当に大丈夫なんですよね?」
「ああ、街に来る時もこんな感じだったからな」
「は……はあ」
この時、イネアは私、大丈夫なのかなと不安になったらしい。