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134話 脱出を試みるんだが 3

134話です!

 馬車から飛び出したのは良いのだが、走る馬車の速さは中々のものであったのだろう。俺は受け身を取ろうとするが予想外の速さに失敗してしまい、左腕から落ちてしまう。左腕にすり減るような痛みが走っただけでなく、そのまま転がっていき、体中に軽い痛みが走っていく。


 ようやく止まり、起き上がるために思い切り息を吸うと、血の味と共に血の臭いがした後に土草の臭いがした。血の臭いは転んだ際に自分の口を切ったのだろう。そして、土草の臭いは外の空気の臭いなのだろう。


 顔に付いた土を払いつつ、急いで起き上がり、周りを警戒しながら見渡すとそこは草原だった。日を重ねるごとに暖かくなってきているこの季節、草原にはまだ生えて間もない草々が辺りに生い茂っており、前世でもよく見かけるような虫が時折飛んでいた。どうやら気絶していた間に朝になっていたようだ。遠くの方を見ると山などは見えず、ただ木々が見えただけであったが、馬車が通っていた道を辿ると遠くにうっすらと人工物の壁のようなものが見えた。おそらくあそこがドナンドの街なのだろう。


 そんな中、俺の隣にはネルさんが横たわっていて、動けないようだ。生死が気になり、確認しようと反射的に考えてしまったが、それよりも先に逃げないと不味いという考えが後に浮かび、体中に痛みが走る中であるが、すぐさま行動を移す。


 俺は身体強化にものを言わせて、馬車から……襲撃者から逃げるように馬車と反対方向……ドナンドの街へと全力で走り出した。


「逃げ出したぞ! 追えー!」

「ネルの奴は何やっているんだ!」

「俺の馬車に壁が……予算がぁ……!」


 後ろから色々と叫び声が聞こえるが、今は逃げる事を考える。このまま街まで逃げようとしても襲撃者たちに追いつかれる事は誰が見ても明白だ。何しろ相手はその手のプロであろうし、馬がいる。馬で追われたらすぐに追いつかれてしまう。


 だが、逆に馬が使いにくい場所であれば逃げやすくなるのではないかと言う考えが脳裏に過る。それだと思い再度辺りを見渡すと、木々が生えている所……森が最も適していると感じた。


 たしかに森の中は確かに馬は使いにくい場所であるのだが、魔物の危険性が伴ってくる。襲撃者に加えて魔物という敵が増えてしまうが、魔物の危険性はむしろ襲撃者の方が大きいだろう。襲撃者の数が多ければ多い程、近くにいる魔物は襲撃者に気づき、襲い掛かってくるだろう。そして、上手くいけば魔物が襲撃者を邪魔して逃げ切れるのではないか? と何とも楽観的な考えをしてしてしまったが、森に入った方が逃げ切る事が出来るだろうという結論に達し、進路を森へと向ける。


 森との距離はドナンドの街程ではないが逃げる事を考えたら遠いと感じる程遠い。身体強化と日々の特訓のおかげでまだ体力に余裕があるのだが、森に着くころにはその体力もあまり残っていないだろう。それに、背後から数人の足音と、1頭の馬の足音が微かながらも聞こえてきており、その足音が段々と大きく聞こえてくる。やはり速さでは負けるか……と思いながらもこの現状を打破できそうな作戦を考えていく。


 そして、最終的に身体強化に回す魔素の量を増やして逃げ切るという作戦に決めた。身体強化をさらに強くする事でさすがに馬までの速度は出せないが、襲撃者の速度より上回る事は出来るだろう。そして、森まで逃げ切る事が出来るだろう。そうと決まればすぐに身体強化に回す魔素の量を増やしていく。

 

 身体強化に回す魔素の量を増やした事で先程よりも速く草原を駆けていく。後方にいる襲撃者の顔は残念ながら見れないが、恐らく驚いているか悔しがっているだろうな。何しろ幼児に追いつけていないのだから。


 そんな事を思いながら何とか平静を保とうと努力しているうちに森に入る事が出来た。それと同時に身体強化に回す魔素の量を先程の量に戻した。何故なら全力で走る事が出来ないからだ、理由は簡単で見慣れないだけでなく、手入れもされていない森の中を全力で走ろうとすると必ず躓くか木などにぶつかってしまうからだ。ただでさえ手入れもなく、足場が悪い森の中だ。普段なら慎重に行くところであるが、今回はそうも言ってられない。五感強化も発動して、少しでも森にある情報を得ながら、森の中を普段では考えられない程の速さで抜けていく。


「っち、森に入られてしまったか。面倒な事になったな」

「だが、それだけの事が出来るんだ。連れていけばいつもよりも褒美があるはずだ!」

「確かにそうだが……森の中でもあの速度か……追いつけるか?」

「難しいが……やるしかないだろ!」


 と五感強化を使っているからか先程聞いた声よりも鮮明に聞こえてくる。襲撃者の方も森で走る事はしたくないようだな。だとしたらこのまま逃げ続ければ何とかなるかもしれない。


 ピコン♪

 悪道緩和がlv1になりました。


 良いタイミングだ! 体感では分からないが、ないよりは全然良い! このまま走り続けよう。ただ、最終的にドナンドの街に行きたいのだから途中から進路をドナンドの街方面に走る事になるが……迷わないと良いな。

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