129話 移動するんだが
129話です! リアルの都合上、かなり遅くなってしまいました。3/31までは遅くなると思いますがご了承頂けると幸いです。
ひとまず、闇と呼ばれた人……ネルさんをベッドの上に寝かせて、部屋を出て情報を集める事にする。何をするにしても情報が足りない。ネルさんが起きて素直に話してくれたら嬉しいけども……仲間を殺した人に素直に話すわけないよなあ……。
という事で忍び歩きで部屋を出て、周囲を確認……通路に人が倒れているな。黒ずくめではないから客か従業員か? 警戒しながら近づいて確認するとどうやら従業員のようだ。床には致死量だと直感するほどに大量の血が首から流れており、既に死んでしまっているようだ。
手を合わせて冥福を祈り、先へと進んでいく。たしかこの先は食堂になっていたはずだ。俺と父親は自室で食べているので使用したことはないがそれなりに人気らしい。
食堂に入ると酒の臭いが充満しており、机の上などには酒が入っているであろうコップが置いてあった。だが、食堂で立っている人は誰もおらず、全員が床や机の上に倒れていた。血だまりなどは出来ていないようだ。状態を確認するとただ酔い潰れた人があちらこちらで眠っているみたいだ。だが、倒れている人の中に従業員などは見当たらない。
食堂の厨房に入ると倒れている人を2人見つけた。今度は血だまりが出来ている。どうやらどちらも死んでいるようだ。一応従業員であるか確認をするとやはり従業員だった。人の死に少しずつ慣れている自分を少しおかしく感じながらも情報を集め、整理する。
まず襲撃者は客には手を出さずに、従業員だけに手を出した。だが、何故客は皆寝ている状態なのだろうか? ……もしかして既に食堂は終わっている時間であり、酔い潰れた人は帰ったのか? 食堂に戻り、席数と倒れている人数を数えてみるとどうやらそのようだ。たまたま客足があまり伸びなかった可能性もあるだろうが、食堂にある机の上に皿が数多く置いてあり、料理の残骸が残っているのでそれはないだろう。
襲撃者が襲ったのは、食堂が終わり、従業員が片付けている所を狙ったのだろう。襲撃者は父親が出ていくところを見たと言っていたので、食堂が終わり、父親が出た後すぐに宿に入ってきたのだろう。そして、厨房にいる従業員を殺害した後、俺がいた部屋に向かおうとした所、偶然廊下を歩いている従業員を発見したのでその人も殺害。その後、俺の部屋に入り、襲ってきたという感じか。
かなり上手く言っている話ではあるが、計画犯ならこのくらいの事になるはずだ。となれば従業員や他の客などの助けは得られないと考えておかないとな。なら、別の部屋に逃げ込み、隠れる事にするか。別の部屋は元いた部屋の他に5部屋程あったはずなので一番遠くの部屋に入る事にしよう。時間が経てば父親が戻ってきて後は何とかしてくれるはずだ。ちなみに外に行き、安全そうな場所に行くという選択肢は襲撃者がまだいるはずなので止めておく。
そうと決まれば早速行動しようか。ネルさんは……ロープを引っ張って引きづるか。STRが上がっているとはいえ、5歳が17歳の女性を持ち上げ、移動する事は難しい。とはいえ、引きづるだけでも大分大変だ。止血はしたとはいえ、傷が治った訳ではないから慎重に運ばないといけない。
ゆっくりとネルさんを引きづって部屋を出て、元いた部屋から一番遠い部屋に入る。中には誰もいないようだ。なら、ここで父親が帰ってくるのを待つ事にしよう。
その間はひたすら隠れておくとして、ネルさんは……ベッドの下にでも隠しておこう。