127話 治安が悪すぎるんだが
127話です!
服のデザインが全て決まり、店から出る。外は日が傾いてきており、辺りが暗くなってきていた。家に帰るのか、仕事を終えた人たちが歩いている所をよく見かける。
「さて、宿に戻ろうか」
「うん、だけど大分掛かったね」
「半端なもので参加すると何かしら言われるからな」
「それもそうだね」
と、父親と雑談しながら宿に行こうと歩いていると目の前に見知った人物が声を掛けてきた。
「これはこれはフェンド殿。久し振りですな」
「ライル殿、久し振りですね。ドナンドの街に来るとは何かありましたか?」
「ええ、どうやらここで違法な取引をしている輩がいるようでしてな。その人らを懲らしめに行こうかと思いまして」
違法な取引って物騒だな。人身売買とかか? 何であれ、危険そうだ。
「人数は足りますか? 足りないようなら俺も行きますよ」
「騎士団の方々が来てくれるが不安が残りますな。なので、出来れば来て欲しいですな。フェンド殿がいると心強いですからな」
「では、私も行きましょう。いつどこで違法な取引は行われるのですか?」
「0時頃にスラム街で行われるようですな」
「でしたら、11時頃に詰所前で集まりましょう」
「分かりましたぞ。では、また」
会話を終え、再び歩き始める。
「違法な取引とは物騒だね」
「そうだな。最近はどの町も治安が悪いからカイも巻き込まれないように気を付けろよ?」
「分かってるよ」
探知の魔法は使っていないが、周囲の警戒は常にしているからおそらく大丈夫な……はず。今は父親がいるから大丈夫だと思うが、1人だと危険そうだな。
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父親と夕食を取り、寝る準備をしていく。今回はイリスとイネアがいないので、全て自分でやっていかなければいけない。……まあ、それが普通なんだけどね。
父親がライルさんを手伝うために出掛けて、そろそろ寝ようかと思う頃、ドアにノックが響いた。最初は父親が何か忘れ物をしたのかなと思った。だが鍵は父親が持っており、俺はすぐに寝ると父親に言ったため、ノックが響いたとしても鍵を開けてすぐに入ってくるだろう。そして、少し待っても鍵が開く気配がないため、父親ではないはずだ。……出ない方が良いよな? ノックの主が宿主の可能性もあるが、それなら声を掛けてくるはずだ。それも無いから宿主でもないよな? なら他の人物……誰だ?
という所まで考えているともう一度ノックが響いた。今度は先程よりも強いノックだ。何が目的なのか定かではないが、最悪の事態を考えて、戦闘出来るよう準備をした方が良いだろう。
ベッドから静かに降り、忍び歩きで棒を取りに行く。そして、何時でも魔法を放てるように無詠唱で準備をしておく。放つ魔法は出来るだけ建物を壊さないように水矢を放つ予定だ。
魔法の準備が出来たのでドアから丁度視界外となる机の下に隠れておく……その瞬間、2回目のノックよりも遥かに大きな音がドアに響き、その衝撃に耐え切れなくなったのかドアが倒れた。そして、黒ずくめの人が複数人入ってきた。
「おい、目標がいないぞ」
「いや、そんなはずはない。アイン家の当主が息子を連れてこの宿に入り、当主が出掛けた所を確認している」
「なら、まだ部屋の中か外か。おい、水と火は外を見てくれ」
「「分かった」」
「俺らはこの部屋を探すぞ。折角の貴族だ。闇、逃がすんじゃねえぞ」
「……分かってる」
水、火と呼ばれた人たちは部屋から出ていった。そして、リーダー的な人と闇と呼ばれた人がまだ部屋の中で捜索を始めだした。
……ガチの襲撃だ。何もしていないのに3歳の襲撃と合わせるとこれで2回目じゃないか……。しかも今回は俺だけを狙っているというかなり不味い状況だ。周りには味方がいない。さらに、父親の事を言っている所からこの人たちは計画犯だ。数人だけとは考えない方が良い。……だとしたら逃げる事は得策ではないだろう。この2人を倒して、戻ってきた奴らも倒す……? 外に人をいる事を考えれば逃げるよりは可能性はありそうだ。
そう結論を出し、ベッドの周りを探している闇と呼ばれた人に水矢を放つ。
「……!? グフッ」
水矢が闇と呼ばれた人の腹部を抉り、闇と呼ばれた人は吐血して、倒れる。
「闇!? 糞、どこからだ!」
まだ気づかれていないようだがすぐばれそうなのですぐにまた棒に魔素を込めて、水矢を放つ。
「ッ!? そこか!」
こちらの攻撃に気づき、避けながらこちらに近づいてくる。なら、近距離戦で!
「危ねえなあ! 何て子供だ!」
机の下から棒を突き出したのだが、軽くいなされてしまう。そして、どこからかナイフを取り出してこちらに刺してきたので、棒が当たらないように机から出て、ナイフを避ける。……強いなあ。出し惜しみするとすぐに倒されてしまうだろう。ここで倒されたらどんな目に合うか……絶対に倒されてたまるか!
「水矢……うらあ! シールド!」
無詠唱の水矢を手から放ち、避けた所を狙って棒を突き出す。だが、突き出しただけではまたいなされると思ったため、棒の横から魔素を沢山込め、シールドを展開し、行動を防ぐ。
「な!? グッ」
シールドが出来た事が予想外だったようで、リーダー的な人は驚愕したような声を上げる。シールドは割られてしまったが、棒はリーダー的な人の溝内付近に強く当たる。そしてさらに。
「水刃!」
「ちょ……グハァ……」
棒から水刃を飛ばして鳩尾付近全体を抉り、貫通する。十分な致命傷が入ったと思い、棒を戻すと血がべったりと付いている。
「なんだよ……その強さ……」
リーダー的な人はそのまま倒れて、そのまま動かなくなった。リーダー的な人から血が溢れてきており、近くにいた俺の足元にも血が流れてくる。そして、強烈な血の臭いに俺は我に返る。
「あ……俺、人殺した……んだよ……な?」