119話 父親にお礼を言ったんだが
119話です! きりが良いのですが、短いです!
夕食を食べるために一度起きて食べた後、父親が部屋に訪れた。父親は俺が気絶した時からずっと働いているらしく、少し目の下に隈が出来ていた。
「カイ、体の調子はどうだ?」
むしろ、俺は父親の体調が気になるのだが、ちゃんと寝れているのかな?
「体を動かすと少し痛いけど、動かさなければ問題ないよ」
「そうか……なら良かった。もし、何か体に異常があったら言うんだぞ?」
「分かったよ」
俺の返答に父親はホッとしている。そういえば父親の声が聞こえたのなら俺が倒れる所も見ているわけだよな? 本当に心配をかけてしまったなあ……。出来るだけ心配かけたくなかったのだが……。
「父上……」
「どうした?」
「その……ありがとう。俺とシンディを助けに来てくれて。もし、あそこで助けに来てくれなかったら絶対に死んでた」
「……ああ、どういたしまして……だが、カイ。俺はカイの父親だ。助けに来て当然なんだ。1日もの間、迷宮内でまだ幼いシンディと2人きりにしてしまい、辛い目に合わせてしまった事が問題なんだ。こんなに辛い目に合わせて……! とカイが怒っても仕方ないと俺は思っている」
「そんなことしないよ! だって、あれが起きたのは今回が初めてなんでしょ? だったらただ運がなかっただけなんだよ」
「確かにあれが……落下転移が起きたのはあの迷宮では初めてだ。だが、他の迷宮では極稀に見られるらしいからやはり事前に気づけなかった俺らの責任だ」
聞きなれない単語が聞こえたので聞いてみる。
「落下転移って?」
「落下転移というのは罠が仕掛けられている一定の範囲に一定時間いると発動する罠で、発動すると罠が仕掛けられている全域の地面が崩壊して、迷宮内の別の所に転移させられる……というものだ」
「全員が一緒の所に転移しなかったのは?」
「それは、距離があったからだろうな。俺もあまり知らないが、近くに人がいなければ1人だけ別の所に飛ばされることもあるらしい」
「1人……それは嫌だね」
あんな所に1人でいたら正気を保てなくなりそうだ。それに、1人でいたらフォルグとの戦いで死んでいたかもしれないからな。
「幸い、1人だけ別の所に転移するという事がなく、死亡者もいなかったから良かったが……それでも落下転移が起きて、カイやシンディを辛い目に合わせてしまったのは事実だ。本当にすまなかった!」
目の前で頭を下げる父上……その様子は落下転移に気づけなくて、息子が重症を負ってしまった事を悔いているように見えた。そして、そんな目に合わせてしまった自分自身が許せないようにも見えた。
でも、俺にとって父親はそんな事が起きても必ず助けに来てくれると信じていたから、シンディを連れて行動する事が出来たんだ。もし、父親がそんな人でなかったらそもそも転生者とばれた時に殺されたり奴隷として生活していただろう。
「……もしここで素直に謝罪を受け入れても父上はまだ悔いている……自分を許せないままだよね?」
「……かもしれないな」
「ならさ、謝罪代わりにとある事をして欲しいな」
「……なんだ?」
「明日は……とびきり美味しいものが食べたいな」