115話 迷宮探索なんだが 7
115話です! 一週間小説書かないだけでここまで書きにくくなるとは……。
フォルグの肉をある程度切っていき、鍋などがないのでウォーターボールで洗った木の枝を串として肉を差し込んでいく。そして、火の近くの土に差し込む。それを10本用意して、焦げないよう時折肉の向きを変えながら焼けるのを待つ。調味料がないから完全に素材の味になるだろうけど今の状況では仕方ないな……。木の実などが見つかれば良かったのだけどな……運が無かったなあ。
……それにしてもフォルグの肉だけを焼いているのに良い匂いだな。ただでさえ空腹である中、この光景は余計に腹が減ってしまうな……あれ? そういえば匂いって……あ。
迷宮に来てから常に展開している探知の魔法の範囲を広めてみると3体の魔物が匂いにつられてゆっくりとこちらに寄ってきているな……完全に匂いの事忘れていた。
急いでショートソードを手に持ち、匂いをそよ風で上に昇らせる。これでさらに魔物が集まることはあまりないと思うのだが……戦闘しなくてはいけなさそうだ。ここで戦闘すると肉が巻き込まれてしまうので少し移動しないとな。
そう思い、魔物のいる所に移動すると魔物の姿が見えてきた……ゴブリンだ。初めて見た時はまだ0歳であったが、その時に見たゴブリンよりも少し大きい。初めて見た時のゴブリンにも身長で負けているのにそれよりも大きいって……これは少しでも気を抜いただけで死ぬかもしれないな。ましてや相手は人型だ。同じ人型だから殺すとなると躊躇してしまうかもしれないが、相手は殺しに来るわけだからそんな事してたら死ぬだけだな……よし、人型の魔物を殺す覚悟は今出来た。
「グギャ!」
「グギャギャ! グギャ!」
「ギャギャギャ!」
……何か会話をしているのか? ゴブリンが集団行動をする事は分かっているが会話をする知能があったとは……どんな話をしているかは分からないがそれなら先手は貰おうか。
「風矢……武器加速!」
ゴブリンの心臓に目掛けて加速させた風矢を飛ばす。
「グ……グギャァ……!」
「「グギャ!!」」
攻撃してきた事に気づいたゴブリンが回避をしようとするが心臓に命中し、声を上げて倒れた。……少し罪悪感はあるがそれを気にしては駄目だ!
「グギャ……グギャグギャギャアアアア!」
「グギャギャー!!」
仲間のゴブリンの死に2体のゴブリンが激高して襲い掛かってくる……って速度速いな!?
急いでバックステップして2体の攻撃を避け、引き際に一撃を入れる。
「グギャアアアアア!!」
……が、ゴブリンの手に持っている棍棒で攻撃を受け止められた。その隙にもう1体のゴブリンが追撃してくる。追撃を急いで避けようとするが間に合わず、腹に棍棒の直撃が入る。
「……っ!?」
内臓が破裂したんじゃないかと思わせるような痛みに意識を持っていかれそうになるが、何とか歯を食いしばって気絶しないよう踏ん張り、急いでさらに後方へと下がる。
「グギャ!」
「グギャギャ!」
追撃がないようだから何とか体勢を整えることが出来たが……痛いなあ……どこかの骨が折れたかもな……撤退するか? でも逃がしてくれないよなあ……なら頑張って倒すか。
「シールド……風矢……武器加速!」
シールドを詠唱して作り出し、加速させた風矢をゴブリンに飛ばすが警戒していたのか避けられてしまい、こちらに襲い掛かってくる。
体を傾けて一体目の棍棒をで避け、2体目の攻撃をシールドで防ぎ、ショートソードでゴブリンの心臓に突き刺す。シールドは割れてしまったが何とか2体目を倒す事が出来た。
「グギャアア……」
「グギャ!? グギャグギャギャグギャアアアアアア!」
突き刺したゴブリンが倒れ、最後に残ったゴブリンがさらに怒り狂い、棍棒を振り落としてくる。避けようとバックステップで下がるが、どうやら背後には木があったようで背中に痛みが走る。だが、直撃した棍棒と比べれば大したものではない。そこにさらにゴブリンが追撃を仕掛けてきたので転がり込むように横に避けて、目くらましにウォーターボールをゴブリンの顔面にぶつける。
「グギャ!?」
ここで攻撃を仕掛けてくると思わなかったのか、顔面にウォーターボールが直撃し、大きな隙を生み出した。その隙を逃さないとショートソードで心臓を突き刺そうとするが。
「……あれ……」
思うように体が動かず、片膝を地面についてしまう。先程の一撃と今日の疲労が今になって響きだした。だが、ここで頑張らないと絶対死んでしまう!
力を振り絞り、ゴブリンに体当たりをするようにしてショートソードを突き刺す。そして、ゴブリンと共に倒れる。
「グ……ギャ……」
どうやら今の一撃で死んだようだが……ゴブリンが臭すぎる……。服などに臭いが付く前に離れないとな……。体力の限界で思うように動けない……。もう少しだけ体動けええええええ!
何とか体を動かしてゴブリンから離れて、ショートソードを杖代わりにして火の元に戻る。
「……あちゃあ……。少し焦げてる」
戦闘を長引かせてしまったせいで肉が少し焦げてしまったなあ。でも食べてない事はないので火を消してフォルグの肉を回収する。
後はシンディの所に戻るだけだが、先に返り血などの汚れを落として、傷を治していこう。返り血はウォーターボールで出来るだけ落とす。傷は荷物から取り出したHPポーションを飲んで、水癒を使う。そのおかげで返り血は大分落ちて、傷も少しは痛みが和らいだが、棍棒でによる痛みが中々引いていかない……。かなりのダメージを負ってしまったな。そのせいでまだあまり体を動かせそうにないな……。小休止を取るか……。
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少しは体力が戻ったようなのでシンディの所に戻る。2回目になる木登りになるが、体が思うように動かずに少し時間を掛けてしまう。
「シンディ、戻ったよ」
「カイ……カイィ……!」
出来るだけ明るくシンディに声を掛けると泣きながら俺の名前を呼ぶ。相当寂しかったみたいだな。少しでも元気が出るようにご飯を食べないとな。
「シンディ、泣かないで……今はご飯食べよう?」
「うん……食べるぅ」
シンディに串焼きを半分渡すと勢いよく食べだした。余程腹を空かしていたのだろうな。
「……美味しくない」
「……まあ、素材の味だからなあ」
そう思い俺も食べてみる……確かにこれは美味しくない。素材の味である事はまだいいのだがフォルグの獣臭さがそのまま残っており、肉もかなり硬いせいで中々噛み切れない……。だが、貴重な食料だからちゃんと全部食べないとな……。
30分程かけて俺とシンディはフォルグの肉を食べ終えた。硬い肉を噛み続けたせいで顎が痛いな。でも腹が膨れたので問題ないな。
「食べた事だしそろそろ寝ようか……シンディ?」
「カイ……一緒に寝よ……怖い……」
そろそろ寝ようかと思い、シンディに声を掛けるとそんな事を言い出した。確かに迷宮内で1人で寝るのは怖いかもしれないな。
「……うん、一緒に寝ようか」
「うん……うん」
シンディがいる枝まで移動して、シンディを抱き寄せる。
「……カイ」
「……何?」
「帰れるよね?」
「うん、帰れるよ」
絶対に生きて帰るさ。シンディと共にね。