98話 攻めてきたんだが
98話です! いつもよりも文字数が多いので誤字などがあるかもしれません……。
父親とライルさんが周囲から不自然に思われないように武器を手に持ち、いつでも抜刀出来る体勢で警戒をしている。だが会話は止まっていないので周囲からは楽しそうに会話しているように見えるだろう。
父親とライルさんが警戒している中、兄さんたちは同年齢と思われる人たちと会話している。警戒をしているようには見えないが……父親の感知能力を信じているという事なのか? 確かに俺らよりは確実にあるだろうが……警戒しないのはどうなんだろうか? ……いや、かえって警戒しているとおかしく見えるか。なら俺も警戒はしないけど何時でも動けるようにしよう。
そう結論を出した瞬間、ここから遠くにある窓が思い切り割れて破片が飛び散る。そして白い煙が会場全体を覆い出し、会場全体が良く見えなくなった。そのすぐ後に悲鳴と怒号が飛び交い始め、何かが割れる音も色々な所でしているので襲撃者が派手に暴れているのだろう。……ここからは警戒しないとな。父親のすぐ近くにいるから大丈夫だとは思うが、自分の身はしっかりと守らねばな。
隣にいるエファさんを見てみるとあまり動揺していないように見える。……パーティー会場が戦場となっているのにどうしてここまで落ち着けるのだろうか?
「エファさん?」
……返事が無い。まさか……。
「エファさん!」
肩を軽く叩きながら呼んでみるとフラっと倒れだした。……逆に動揺しすぎていたのか。何とか抱き留めることが出来たが……どうしようか。……近くの机の下にでも隠れるか? 数メートルはある机だから隠れることが出来るとは思う。それとも父親の近くにボーっと立っているか? 襲撃者がそれを見たら優先して狙ってくるだろうな。なら、机の下で一緒に隠れておこうか。
エファさんを机の下に寝かせて……どうしようか。とりあえず探知を使うか? 引っ掛からない人はいるだろうし、逆にそれでここがばれてしまう可能性があるか。それに他のパーティーの参加者に魔法を使えることがばれてしまう可能性もあるから駄目だな。なら近くからこの場所を上手く隠せるものを探してみるか。……とは言っても周りにはそんなものはない……いや。この白い煙は使えるかな? やってみるか。
ソフトウィンドを何度か詠唱して、天井付近の白い煙を机の周りに降ろして他よりも少し白い煙で見えないようにする。また、白い煙を吸うと体に良くないかもしれないので俺とエファさんの周りだけ白い煙を来ないようにする。……1つの動作だけなら簡単だが2つの動作を同時に行うのは中々難しいな。もっと練習するべきだったか。だが、白い煙を降ろすだけならもう充分だな。少しずつ集めた白い煙が霧散していくと思うが、その時はまた同じようにやればいいか。
「カイはそこで大人しくしていろよ? 間違っても攻撃してはいけないからな?」
今までの行動を周囲を警戒しながらずっと見ていた父親が警告してくる。……元から攻撃する気はないのだが……まあ逃げることが出来なかったら攻撃して少しでも時間を稼ぐことになるが……。
「カイ殿はその年で魔法が使えるのか。将来は有望であるな」
「ええ、将来が楽しみですよ」
ライルさんの言葉に父親が少し驚きつつも返事をしながら軽くこちらを睨んでくる。……いや、少しでも安全に対処するためにですね……。
「カイ、入るぞー」
「兄さん、口調……はあ……」
兄さんたちも入ってきた……先程話していた人たちと共に。兄さんたちは平気そうにしているが話していた人たちは襲撃があることを知らなかったのか少し顔を青くして震えている。まあ、それが普通の反応だと思う。逆に兄さんたちの落ち着きように驚きだよ。いくら知っていたとはいえもう少し動揺していてもおかしくないと思うのだが。
「兄さんたちは怖くないの?」
「少し怖くはあるけど覚悟していたからな。それにこれがあるから何とかなるだろ」
「兄さん、お父さんが戦っちゃ駄目って言ってたでしょ……。僕はあまり怖くないかな。似たような経験ならしたことあるからね」
「そうなんか? そんな事聞いたことねえぞ」
「言っていないからね」
フレッツ兄さんは一体どんな経験をしたんだよ……。少し気になる所ではあるが今はそんな事聞く状況ではないな。まあ、この状況が怖くないのなら兄さんたちは大丈夫か。……マインズ兄さんに関しては戦いに行きそうで心配だけど。
「マインズ、絶対に戦うなよ?」
「分かってるよ……だけどどうしようもない状況ならいいんだろ?」
「その時は守りに徹していなさい。絶対に助けに行くからな」
会話を聞いていたらしい父親が警告するが……心配だなあ。
「お、ここにもいるなあ。てっきりここら辺は部屋から出たと思っていたんだがなあ」
「こいつはあ命知らずですぜ。やっちゃいましょうぜ」
声のした方を見てみると黒装束の男が2人こちらに向かってきていた。男の手には短剣を持っており、血が付着している。そんな光景に少し動揺してしまう。
「ようやく来たか。こういう時は何故こんな事をする! と言うのがお約束になるのか?」
「そうであるな、そして誰が教えるかよ! と笑い出すのでしょうな」
「そうだな」
「おいおいおい、何余裕ぶってんだよ。今の状況が把握出来ていない馬鹿なのか? だとしたら笑い者だな!」
「兄貴、さっさとやってしまいましょうぜ。目的の物をさっさと回収して楽しみましょうぜ」
父親とライルさんが煽っているのはいいとして……目的の物……? コールディ伯爵の家宝か? だったらパーティーの最中に狙わなくてもいいよな? だったら何だ?
「それはさせるわけにはいきませぬな」
ライルさんがそう言うと共に目では追えないほどの勢いで男たちに肉薄し、剣を振って上半身と下半身を別れさせた。そして、斬れた所から周りに血や臓器らしきものが辺りに飛び散る。返り血を受けたくなかったのかライルさんが少し離れたと共に父親がもう片方の男に接近して首を斬り、頭がゴロリと落とした。首からは勢い良く血が溢れ出し、周辺の床を赤く染めた。
戦い自体はすぐ終わったが……これが殺し合いか。あまりにショッキングな光景に思わず目を背けてしまったが、先程の行為が頭から離れない……。このような事をいずれやらないといけないのか……気が滅入ってしまうな。今の状態でも吐き気がするのに血の臭いもあったら嘔吐している自身がある。思わずかけたソフトウィンドが役に立ったな。
「ヴ……アアアアアアアアア……ゴフ……」
自分の気持ちを整理していたら上半身と下半身が別れた男がようやく痛みを感じたのか絶叫し、血を吐いた。その後すぐに、ライルさんがとどめの一撃と言わんばかりに首に剣を刺した。
……完全にオーバーキルだ。ただでさえ飛び散る勢いで流れ出た血が首からも溢れ出る。狂気的な目の前の光景が本当にグロくてまた目を背けそうになってしまったがいずれこういう事もするのだからここで背けてはいけないな。ここで背けてしまったらトラウマになりそうだ。もうなっていそうだけど。
「ライル殿……声を出させては集まってしまいますよ。襲撃者が何人か分かりませんし、ここには子供もいるのだから余計な戦いは避けたいのですが……」
「これはすまぬ。つい戦場のように戦ってしまいましたな。これ以上ここにいるのは危険だから外に出ましょうぞ」
「ここに残っても危ないだけだからな。それに下っ端かどうか知らないが想定していたよりも弱くて助かったな」
「そうですな。初撃くらいは避けてくれると思っていたのですがな」
「それは流石に無理と思うぞ……」
父親たちは何事もなかったかのように会話を続ける。人を殺したことについて何の躊躇もないな……。躊躇しない事はコールディの街に行くまでの道中で襲撃してきた盗賊を父親が瞬殺していたから知っていたのだが。
「マインズ、フレッツ、カイ、顔色が悪いところすまんがここから出るぞ……あなたたちも付いてきなさい。ここは危険だからな」
「で……ですが、父上が……」
「無事かどうかは分からないが今は自分の身を最優先にしなさい」
「……はい」
マインズと一緒にいた人たちのうち1人が父親の意見に口を出したが諭された。てっきり意地でも父親の所に行くと思ったが……随分と聞き分けがいいな。そこは貴族の子息だからか。
まだ隣で目を覚ましていないエファさんはおぶっていこう……3歳が持つには重すぎるから兄さんたちにお願いするか。って増援が来たな。父親たちが何とかしてくれるだろうけど……これでまた増援が来たら危ないかもしれないよな。
「どうやら増援が来てしまったみたいですね。あまり居座ると危険ですからすぐに終わらせましょう」
「そうですな。10秒以内に終わらせましょうぞ」
「5秒で十分です」
5秒って……流石に辛くない? 軽く数えただけで10人はいるんだけど……。というか襲撃者は何人いるのだろうか?
「やるぞ野郎ども! フベラっ」
叫んだ襲撃者に父親が接近して首を斬り、そのまま隣にいた襲撃者の胸元に剣を突き刺す。その間にライルさんも襲撃者をどんどん斬っていき、気づけば父親とライルさん以外に立ちあがる者はいなかった。……かなりグロイ事になっているが本当に5秒で終わらせたな。床はで出来るだけ見ないようにしないとな。2人だけでも堪えたのに10人程追加したら流石に……。
「じゃあ行きましょう」
父親が凄くにこやかに言っているけど……血の付いた剣を持ちながら言っているので少し怖いなあ。
主人公視点では襲撃者に対しての情報があまり出ていないので後書きで書いた方が良いのでしょうか?