きらッきらッネーム
キラキラネームが話題になって数年が経つが、
これはさらに十数年後、キラキラネーム第二世代の話である。
この時期、キラキラネームのAには自慢があった。
この時期だけではないが、でも特にこの時期。
それも、正月。
「凄い」とみんなに驚かれた。
それに楽で良いと。
それも、そのはずだ。
『444-XXXX
新木 A 様』
で年賀状が届くのだ。
煩わしい住所を書く必要がないのだ。
地域にただ一人なので、郵便配達員は届けてくれるそうだ。
ちょっと待てって?
新木 A?
そうAは彼の名前、エース。
Aはキラキラネーム第二世代と言われた。
彼の兄弟は地元で有名で、
テレビで取り上げられ、
CBC、東海、中京、愛知、名古屋、NHKと一巡した。
荒木4兄弟。
荒木 K、
荒木 J、
荒木 Q、
そして、荒木 A (エース)である。
Aは親の期待通り、野球で活躍したからだった。
高校一で頭角を現し、県大会ベスト4進出を果している。
当然、テレビはこんな面白いネタを見逃すはずがない。
「エースのエース、第一球を投げました」
「エースのハートは強いですね」
民放の解説者は面白がってAの名を連呼した。
普通なら、エースの新木と苗字で呼ぶところを。
高二では夏の甲子園大会出場に果たし、全国区になった。
そんな彼をやっかむ者も多かった。
奴らは彼を「犯罪者」と罵った。
「少年A」だと言って。
その後の彼である。
ドラフトにはかからず、大学野球では3,4番手の投手だった。
大学卒業後、地元に戻り、自動車関連の会社に勤めた。
彼は自分の知名度を活かし、営業成績はトップを誇っていた。
さらに数年が経ったある正月。
「なぜ?」
彼は顔をしかめた。
「こんなに少ない?」
年賀状が激減していた。
正月三が日、ショックだった。
「何か、俺に変な噂があるのかな」と彼は言葉を溢した。
しかし、4日目から年賀状が届き始めた。
それは彼にとって異様な光景だった。
「住所が・・・」
年賀状には住所が書かれていたのだ。
次の日、Aは郵便配達員を待ち構えた。
事情を聞くためだ。
そして、彼は昼少し前、配達員を捕まえ、聞いた。
「もう一人引っ越して来たんです。
この郵便番号のエリアに」
同姓同名が二人になると、宛名不完全で返却してしまうそうだ。
彼は少し寂しくなった。
もう、『新木 A』で届かない、と思い。
「その子まだ小学生なんですが、
あなたに憧れて、A、エースって付けたって、
父親が言ってましたよ」
それを聞いて、Aは少し笑顔になった。
エースと言えば、荒木大輔、
そう、見せかけて、新木優子さんです。
先日、『僕らのごはんは明日で待っている』を見た。
面白かった!
一個だけイエローも良い!!