プロローグ
初投稿です。小説を書く事自体も初めてなので上手く書けているのかどうか自分ではさっぱり分かりません、その点につきましてはどうか御容赦ください。題材が題材なもので多くの人に読んでいただけるか不安ではありますが、ここに処女作として投稿させて頂きたいと思います。
「これ総貞、早く来ぬか」
「はっ、ただいま!」
温井総貞は、畠山義総の近習として京に来ていた。そこでの歌詠みに参加するためである。若き総貞はそこで公家や名家の商人の歌の名手達と歌の交流をするのだ。
「霧たち~~むしびし水のこぼれるを~空にしられぬ雪ぞふり~けり~~」
「ほほほ、その歌は紀貫之どのの歌にようにておじゃるの~ほほほほ~麻呂もそのような神経がほしいぞよ」
一同が笑いだす。
(公家とはゆくゆく皮肉が好きだ)
また次の歌が流れてくる。
「思ひきや~~恨めしかりし~荒武者の~名残を今日は惜しむべきかな~」
総貞がポカンとしていると、どこかの京商人が親しげに総貞に喋り出す。
「おや~お侍さんであるのに十三人の寄り合いをしりまへんのですか~?」
「十三人の寄り合いにございますか?」
そんな話など温井総貞は知りもしない……しかしこの京商人の言い草だと武士であれば知っていて当然というような口調である。
目を左に右に動かし考え込む総貞を京商人はどこか満足そうに眺めて喋り出す。
「東の頼朝さんの死ぃんだあとに十三人の家来が頼朝さんの子ぉの頼家さんが力を持つのを嫌がりましてなぁ~家来達がじぶんの仲間で寄り合い(合議制)をつくり頼家さんを締め出した話ですわ、これはその時のことを歌った歌ですわぁ」
(東の頼朝……源頼朝公のことであろうな……という事は家来というのは御家人様のことであろうか? それが徒党を組み、ご子息の源頼家公を失脚させたということか?)
「十三人の寄り合い……左様な事が……」
「驚きですやろ? 東さんは一言目には忠義忠義言い張りますが、東武士のあざとさは日ノ本一ですわ」
すると、主人である畠山義総の怒鳴り声が響いてくる。
「これ総貞、こちらに来ぬか!」
「では主が呼んでいるので、これにて」
「へぇ。お体に気ぃ~いをつけてくださいな」
総貞は手をふる京商人から足早に走り去ると、先ほど言われた事を思い出した。
(十三人の寄り合いのう……)
この京商人の何気ない世間話が後に能登国を混乱の渦に陥れる事をまだ誰も知らない。
張本人である温井総貞でさえも知らないのだから。
物語はこの京での出来事から20年後の話になる。