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人形操士NOA  作者: 菜柚月
学園生活編
9/14

狂人形討伐作戦-①-

騒々しい。

たかが狂人形討伐作戦ごときで、皆んなそんなに騒ぐことないだろう。

当の櫻井は、まだ寝ぼけた顔をしている。楽しみすぎたかして、昨日眠れなかったのだろう。

バカか。そんなんで勝てると思うな。

隣でうとうとされると、妙に腹が立つ。いや、こいつの行動全てに腹が立つ気がする。

「諸君。今日は生徒皆んなが待ちに待った(はず)の、討ば……遠足です。張り切っていきましょう。くれぐれも安全第一に」

グラウンドでの、校長の長い話。ああ、こんなどうでもいい話はいいから、早く始まらないか。



例の亜東留山に向かう途中のバスの中で、俺は窓側でうなだれていた。

なぜにここまでペア行動しなければならないのか。横には櫻井がいる。よだれを垂らして寝ているその姿は、俺から見ると地獄絵図だ。

って、その状態でもたれかかってくんな!気持ち悪い!そして周りからの視線が怖い!

「着きました」

先生の号令がかかり、クラス全員がバスから降りる。ちなみに櫻井は、俺が仕方なく叩き起こしてやった。

バスから降りると、初夏とは思えない涼しげな風を感じられた。周囲を見回しても、山、山、山。虫が多いのはあまり好ましくないが、空気も澄んでいて、じっとしている分には心地よかった。

「この山の奥地に鳥居があって、そこのさらに奥に大量に狂人形がよく現れます。後は、配布されている地図を見て、ペアに分かれて行動してください」

俺達は足早に、山の奥地に向かった。


「すごいすごい!私、こんな山奥に来たの初めて。白井がいなかったら、もっと楽しかっただろうな!」

「邪魔で悪かったな」

こいつ……地図もまともに読めない誰かさんをここまで連れて来てやったのは、いったい誰だと思ってるんだ?

そんな俺の考えも知らず、こいつは一人で川で遊んでいる。子どもか。子どもだが。

あ?今度は地図とともに配られた、『狂人形レベル確認装置』で遊んでいる。

この装置は、電源を入れて狂人形に向けると、相手のレベルを音声で教えてくれる。レベルが分かったことでとくにメリットはないが、なにかとあると嬉しい気がする。

どうやってレベルを測っているのかは知らないが。

「戦闘力……五万…だ……と…?」

「どっかのアニメか!てか早く奥に行かないか?わざわざ待ってやってるんだが」

「はいはい」

まあ、歩き始めても「足痛い」やら「しんどい」やら「疲れた」やら、本当に(うっ)(とう)しい。やはり子どもだ。こいつの面倒見てやってる、俺の方がしんどいわ。

しばらく進むと、苔むした、大きな鳥居が見えた。微妙に傾いていて、より不気味さが増している。いや、これは神秘的というのか?

「白井ー早くー」

櫻井は、いつの間にか先に進んでいた。

「念のため、操人形用意しとけよー!先に何があるか分からないからなー?」

俺は一応忠告しておく。我ながらの優しさ。

「分かってるって!」

俺も櫻井の後を追い、道無き道を進む。

ガサガサと音を立てる草を掻き分けながら向かった先には、小さな(ほこら)のようなものがあった。こちらも先ほどの鳥居同様、苔むしているうえにかなり汚れている。

櫻井は、そこでじっとそれを見つめながら、静かに(たたず)んでいる。

「どうしたんだ?」

「見てこれ」

櫻井はおもむろに、祠の小さな扉を開ける。するとその中からは、大量の不気味な日本人形が溢れ出してきた。

「ひぃっ!」

思わず後退り、 裏返った情けない声を出してしまう。

櫻井はそんな俺を見て、普通に立っていられないほど笑っている。よっぽど俺が面白かったらしい。

「ドッキリ大成功…ってね」

くそっ!こんな奴に期待した俺が情けない!何が「頑張ろうな」だ!

「これね、すごいで……しょ?白井が……ハハッ…驚くと思って…。ていうか……アハハ……とりあえず…その眼鏡直したら?」

「え?」

手で眼鏡に触れてみる。たしかに、おおきくずれていた。……って、そんなに面白いか。

「ビビり博也ー」

「最低だなお前!」

「だって、私でも驚かなかったんだよ?」

眼鏡をもとの位置に戻しながら、そんな他愛ないやりとりを続けていると、祠から飛び出した人形が少し動いたような気がした。

嫌な予感が。

「……今、動いてなかったか…?」

「ごめん、見てなかった」

あれ?この人形、さっきまでもっと小さくなかったか?徐々に大きくなってきているような……。

「ああああああああああああ!」

嫌な予感は的中した。

気味の悪い日本人形は狂人形と化し、低いうなり声を上げる。声は山じゅうにビリビリと響きわたり、塞いでいても、耳がやられそうだ。

「早く操人形を!」

俺たちは人形を操人形化させる。トーラ、ルトナの、二人の操人形は、すぐに武器を構えた。

「俺とルトナは後ろで銃撃するから、お前らは前で俺たちに相手の攻撃がとどかないようにしろ!」

「つまり、白井たちを守れっていうこと?」

「ああ!こっちは奥義でいっきにとどめをさすから、少し時間がかかる!それまで守れ!」

意外にもすんなりと、櫻井は指示を受け入れ、操人形が速い動きで戦い始めた。

あいつも結構やるようだ。

心の中で、あいつを応援している自分がいる。

俺たちは振り返り、鬱蒼と生い茂る木々の中を駆け抜けた。

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