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人形操士NOA  作者: 菜柚月
学園生活編
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人形操士

この私、櫻井(さくらい) 乃愛(のあ)はこの春中学校を卒業し、高校に進学することになった。

勉強はさほどできる方ではないが、特に苦手なわけでもない。

毎日を普通に過ごしている。

でも私は、人と違うところが一つだけある。

それは。


「奥義発動」


ガラスのようなものが割れる音が、辺り一面に響きわたる。私はこの音が好きだ。心がなんだかすっきりような気分になれる。


私は『人形(ドール)操士(マニピュレイト)』。普通の人間とは異なる、『人形を操る力』を持っている。


「乃愛様、ご無事ですか」


一人の青年が、こちらに駆け寄ってくる。

キリッとした、整った目鼻立ち。少し長めの黒い髪。額の青い宝石。

名前はトーラ。私の操る人形、『操人形(ドールマン)』だ。私の大切な家族でもある。

操人形は、人形操士の命令を受けると、元の人形の姿から、より人形のモチーフの生き物に近い姿に変化する。そして『奥義(おうぎ)』という強力な技を使い、それで戦う。

ちなみに、操人形には『人間型』と『動物型』の二種類があり、トーラは人間型だ。

「大丈夫大丈夫!これくらい平気!」

「それは良かった。私の使命は、あなた様を御守りすることですから」

青年は微笑む。青年の手には、小さな可愛らしい熊の人形が。

それは、意思を持たずにただ破壊をつくす巨大な人形『(フラー)人形(ドール)』だ。狂人形は操人形と違い、人形操士がいない。持ち主がいる場合は、その持ち主は普通の人間であることが多い。

なぜ狂人形が街中などで急に暴れ出すのかはまだ分からないが、人々にとって危険な存在なのは確か。

だから千年程前に、狂人形に続き、人形操士が生まれたと言われている。


今日は母方の叔母の、加賀良(かがら) 希姫(まれき)に電話で呼ばれ、とある店の前に自転車でやってきた。

電話の内容は、希姫さんの営む店の前で狂人形が暴れているということだった。

私はすぐに狂人形を倒して、近くにいた小さな女の子に人形を返してあげた。女の子は「ありがとうお姉ちゃん!」と言って帰っていった。


狂人形を倒すには、額にあるクリスタルを破壊して元の姿に戻さないといけない。クリスタルは操人形にもあり、操人形もクリスタルを破壊されると、元の姿に戻ってしまう。元の姿に戻っても意思はあり、話したりかるく動くことはできるが、元の姿の人形は操人形と言わず、ただの人形として扱われる。


「いや〜乃愛ちゃんはすごいね!あんなでかい人形倒しちゃうなんて」

「えへへっ、それほどでも〜ありますかな?」

希姫さんは、叔母さんといっても二十五歳。全然若い。一緒に話しててもかなり楽しい。

「じゃあ私は帰ります。さよなら!」

「うん、じゃあねー」

私はすぐにトーラを可愛らしい人形姿に戻し、人形に付いているキーチェーンでカバンにトーラをぶら下げる。そして自転車を走らせた。

もう夕方だったので、急いで家に帰った。みたいアニメがあるのに、ついバトルに行ってしまった……。まあ、昔から仲良くしてる希姫さんの願いは聞かないわけにはいかないんだけどね!


家のリビングでアニメを観る。これが私にとって至福のひとときだ。

私の周りには誰もいない。家族は皆んな、お父さんの仕事の関係で引っ越して、遠くに住んでいる。中学生になったときから、ずっと一人暮らしだ。

…いや、トーラがいたか。一人と一匹(?)暮らしってとこかな。

たまに家族に会いたいって思うことはあるけど、いつもトーラが一緒にいるから、最近はあまり気にならない。


トーラが操人形になったのは、私がまだ五歳くらいのころ。正直なところそのときのことはあまり覚えていないが、母にいろいろ聞かされて知ってはいる。


一人暮らしを始めたときに私の面倒をみてくれたのが、近くに住んでいた希姫さんだった。今でもずっと仲良くしている。

希姫さんは手芸屋『3A』を営んでいて、羊毛フェルトでできているトーラの世話(ほんとはこっちがトーラに世話されてるんだけど)にちょうど良かったりする。


アニメを観終わってからマンガを読んでいると、テーブルに置いていたケータイが鳴った。すぐにケータイを手にとって、通話に応じる。

「もしもしー」

『乃愛ー』

「あ、お母さんじゃん!久しぶり!」

電話の向こうのその声は、間違いなくお母さんだった。電話するのは何ヶ月ぶりだろうか。

『久しぶり。あなた今春休みよね。例の高校には受かったよね?』

「うん、余裕余裕!大丈夫だった」

例の高校とは、なんと人形操士のみが入れる高校、『私立(しりつ)(なか)()学園』!普通の授業はもちろん、人形の研究や大会に出られるし、人形についての授業もあるのだ!

私は昔からその高校に憧れていたので、入試に合格したときはめちゃくちゃ嬉しかった。

『受かったんだ。良かった〜……じゃ』

「いや、それだけ!?もっとなんかないの!?」

その後すぐに電話は切れた。もっと話すことなかったの……?

まあ、明日からお待ちかねの学園生活だからいっか。

…待ちに待った学園生活が始まる!私は楽しみで、なかなか眠れなかった。

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