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元気にしてくれる雪だるま

作者: 森崎桜菜

 むかしむかし、ある村に住む白うさぎのみーちゃんがいました。

 みーちゃんは近所の友達と遊ぶ約束をしていて、朝から家を出ようとしていました。


「みーちゃん、ちょっと待ちなさい」

「何?ママ」


 白いうさぎを呼び止めたのは母親で、みーちゃんに黄色のリボンを渡しました。


「忘れ物よ」

「いけない。ありがとう、ママ」


 みーちゃんは自分の耳にそのリボンをつけた。


「どういたしまして」

「行ってきます!」


 昨日から雪が降り続けているので、外はすっかり雪の世界に変わっている。

 みーちゃんが公園まで行くと、友達がすでに集まっていた。公園にいるのは灰色うさぎのるーちゃんと茶色うさぎのいっちゃん。


「おまたせ!」


 急いで走ってきたので、みーちゃんは肩で息をしている。

 みーちゃんの首につけてある黄色のリボンに、先に気づいたのはいっちゃん。


「あれ?新しいリボン?」

「うん、そうだよ!」


 にっこりと笑って言うと、るーちゃんは羨ましそうに見ている。


「それ、可愛いわね」

「ママが買ってくれたの!」


 実はみーちゃんが日頃から家の手伝いをしているので、そのご褒美としてママが買ってきてくれた。

 

「せっかく集まったのだから、みんなで遊ぼうよ!」

「賛成!!」


 最初はみんなで雪合戦をすることにして、雪玉をせっせと作り、投げた。

 ところがみーちゃんが投げた雪玉はどれもおかしな方向ばかり飛んで行ってしまう。


「どこ投げているのさ?」

「ちゃんとぶつけるもの!」


 雪玉を投げたものの、当たることなく、近くの木に当たって雪玉が壊れた。

 自分でも本当にコントロールがないと思っていると、雪玉が顔に当たった。


「あはは!真っ白だ!」


 いっちゃんが笑っている間に雪玉を投げたが、結局一度も当てることができなかった。

 公園の時計を見ると、一時間以上遊んだことを知った。


「あのね、これからみんなできーちゃんの家に行かない?」


 きーちゃんはみーちゃん達の友達の黒うさぎ。

 昨日から風邪を引いてしまったことを、このときみーちゃんは初めて聞いた。


「先に行っていて。すぐに行くから」

「どうして?」

「後でちゃんと教えるから」


 みーちゃんは良いことを思いついたので、先に行くように促した。

 予定より少し遅れて、きーちゃんの家に到着した。


「みーちゃん!」

「きーちゃん!具合はどう?」

「まだ咳が出るよ・・・・・・」


 きーちゃんはさっきまで病院に行っていて、たった今、家に帰ってきたばかりだった。

 体温計の音が鳴り、脇から体温計を出すと、高熱であることを示している。

 食事がまだ済んでいないので、みんなで協力して、風邪がすぐに治るようにおかゆを作ることに決めた。


「きーちゃん、ちょっとだけ待っていてね」

「うん、お願いね」


 るーちゃんが炊飯器の中のご飯がどれくらいあるのか確認している間、みーちゃんは材料を冷蔵庫から出した。

 ねぎやしいたけ、卵などを出していると、るーちゃんは一人分のご飯を用意してから、水を入れた鍋をコンロの上に置いて、火をかける。


「みーちゃん、レンゲはどこだろ?」

「えっと・・・・・・あ!あったよ!」


 食器棚の中にあることをるーちゃんに教えて、みーちゃんは次に野菜を切る。

 

「切るの上手だね。みーちゃん」

「そんなことないよ」


 褒められたので、真っ赤になって照れていると、そのことをからかわれた。

 みーちゃんは照れている顔を隠すようにして、野菜を入れてから卵を箸で溶いている。


「みーちゃん、さっき一人で何をしていたの?」

「そこを開けて」


 冷凍庫を開けるように言ってるーちゃんに開けさせると、透明な袋に入っている小さな雪だるまが置いてあった。

 可愛らしく目や口がついていて、マフラーを巻くように黄色のリボンが結んである。


「これを作っていたんだ!」

「うん!」


 これ以上風邪がひどくならないように、願いを込めて、この雪だるまを作った。


「きーちゃん、これを見たらきっと喜ぶよ!」

「だったら嬉しいな!」


 五分後におかゆができたので、茶碗に盛った。


「美味しそう!」


 るーちゃんは今すぐ食べたそうな顔になっている。


「これはきーちゃんのおかゆだからね」

「わかっているよ・・・・・・」


 ガスの元栓を閉めて、電気を消してからきーちゃんの部屋まで運んだ。

 みーちゃんは両手が塞がっているので、るーちゃんがノックをしてからドアを開けた。


「きーちゃん、お待たせ」

「良い匂い!」


 きーちゃんはいっちゃんの手を借りて、ゆっくりと起き上がる。


「熱いから気をつけてね」

「ありがとう!」


 両手を合わせてから、熱々のおかゆが口の中に入った。


「熱くない?」


 やはり熱かったらしく、話をしようとしても、ちゃんと声を出すことができずにいる。

 すぐにお茶を渡すと、きーちゃんは半分以上飲んで、ようやく落ち着いた。


「・・・・・・熱かった」

「ふふっ」


 おかわりがあることを言うと、きーちゃんは喜んだ。思っていたより食欲があったので、ほっとした。

 おかゆを全部食べ終えたので、今度は薬を飲まなければならない。


「みーちゃん・・・・・・」

「な、何?」


 みーちゃんが薬を飲まないのに、なぜか涙目になっているので、きーちゃんが呆れ顔になっている。


「何泣きそうになっているの?」

「だって・・・・・・」


 いっちゃんがみーちゃんの両目を隠してくれているので、その間にきーちゃんは薬を飲んだ。


「どうして目隠しをしたの?」

「みーちゃんが泣きそうになっているから」


 ふにふにと鼻を押しながら、いっちゃんが言った。

 茶碗やコップなどをきーちゃんが片づけようとしているので、慌てて止めて、それらを奪い取った。


「みーちゃん、大丈夫だから・・・・・・」

「絶対安静!」

「はい・・・・・・」


 みーちゃんが食器をキッチンまで持って行き、使った茶碗や鍋なども洗うことを考えた。

 新品のスポンジに食器用洗剤をつけて、ゴシゴシと洗って、水で流す。念入りに汚れがないか確認しながら、丁寧に洗い続けた。


「拭こうか?」

 

 キッチンに来て手伝おうとしたいっちゃんに声をかけられ、みーちゃんはしばらくおいて置くように言った。


「いいの?」

「うん、後で拭けばいいから」


 再びキッチンを出ようとしたとき、るーちゃんがやってきた。


「あれ?」

「ねえ、きーちゃんは?」

「寝ちゃったから」


 腹が満たされ、今はぐっすり眠っている。

 眠る前にシャーベットがあるみたいなので、今日来てくれたお礼として、食べるようにきーちゃんから言われたから、ここに来たのだ。

 シャーベットを見た途端に目を輝かせているるーちゃんが早く食べたくて、うずうずしている。それをテーブルの上に置くと、いっちゃんがすでにスプーンを用意していた。


「いろいろあるね」

「みーちゃん、どれがいい?」


 シャーベットはりんごやメロン、マンゴーなどがあり、みーちゃんはメロンを選んだ。


「友達とだったら、喧嘩をしなくていいよね」

「本当だね」


 笑顔で頷いているるーちゃんを見たみーちゃんは僅かに首を傾げた。それに気づいた友達が説明をする。


「姉妹だとね、いろいろなものを取り合いになって、すぐに喧嘩しちゃうの」

「好みが同じだから?」

「そういう場合もあるね」


 この間、ホールのケーキを買ってもらう前、フルーツがたくさん飾られているケーキとハートの形をしたデコレーションケーキでしばらく喧嘩をしていたのだ。

 結局、じゃんけんでハートの形をしたデコレーションケーキを買ってもらったらしい。

 好みが同じときも少し大きさや個数が違うだけで喧嘩に発展してしまうことがよくあるそうだ。

 みーちゃんは一人っ子だから羨ましく思っていると、キッチンのドアが静かに開いた。


「きーちゃん!」

「おはよう。ごめん、寝ちゃっていた・・・・・・」


 気にしなくていいことを伝え、みーちゃんは冷凍庫の中から小さな雪だるまを出した。


「可愛い!!」

「少し前に作ったの」


 きーちゃんに少しでも元気になるように石や小枝で、笑顔の雪だるまを作った。

 それを見たきーちゃんはとても喜んでくれたので、みーちゃんも嬉しい気持ちでいっぱいになる。


「早く元気になってね。きーちゃん」

「うん!本当にありがとう!」


 数日後、元気になったきーちゃんを加えて、みんなで雪遊びをしましたとさ。


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