第六話 春と秋と”Eランク”
カテドラル学院
生徒は120人ですべて紅葉高校美術部所属の人間達である。
階級は”学年”ではなくその人間の強さ、能力、知識にもとづいた”ランク”によって組み分けされている。
Aランク。カテドラルで階級の高いランク。主に上級ナイトメアの討伐に借り出される。
Bランク。Aランクには及ばないがカテドラルや町の守護を主な任務とする。Aランクが攻撃ならばBランクは守備といった形。Aランクに対しBランクは3倍近くいる。
C、Dランク。実際の現場に経つことはまだ許されない。A、Bランクの卵。
Eランク。才能があると見込まれただけの状態。知識から順に一つ一つ丁寧に教育される。はっきりいってしまえば落ちこぼれのランク。
そして
特級Aランク。絵の中に入ることができる人間にのみ与えられる称号。アキを入れ、世界に5人しかいない。実際の経験や知識なしでも絵のなかでのサポートによりAランクの実力者以上の力を発揮することができるため、学院では必然的に特別扱いとなる。
「どうして俺がEランクで姉ちゃんが特級Aランクなんだ!!??」
「仕方ないだろ!お前は途中入学なんだからよ(呆)」
理事長室のドアを開けると同時に言ったのは片桐龍ニである。
「!!お前は・・・・・・龍ニ?」
片桐龍二はハルと同じ美術部員でサボりの仲間。
「ハル。やっと来たのか・・・(草臥)」
「もしかしてお前もここの生徒だったのか・・・・?」
「ああ。気づくのおせえよ」
美術部をただのサボり部だと思っていたのは俺だけだったのか・・・・
「なんで、こういうのがあるって教えてくれなかったんだよ!!!」
「だって才能が無いって判断されたんだと思って・・・・・(諦)」
ハルは驚きが続き少し疲れていたが、一つだけ気になることがあった。
「唯、龍二、あと先輩たちは何ランクなんですか!?」
桜が答える。
「自慢ではありませんが、唯、吉田、名護、片桐、そしてわたくしはAランクですわ。」
「A?唯と龍二なんか俺と同じ一年で今年入学じゃないか!!」
「私達はもう能力を入学前に開花させていたからねーーーーーーーー」
「入学して最初からBランク(普通)。5月にあった昇級試験ですぐAランク入りだった(自慢)。」
最大級の驚きによりハルは固まってしまっている。
次はアキが質問を投げかける。
「部長は・・・・部長はどうなんですか?」
「あのタマネギは才能なし。ただの美術部部長だ。」
名護が答える。
部長、部員が何かしてるって三年間ずっと気づかなかったのか・・・・
アキは少し部長を哀れに思う。
理事長は子供達の話がひと段落し、ハルに本題を話す。
「さて、それではハル君。すぐに家に帰り寮へ入る身支度をしてきなさい。」
「寮!?」
ハルではなく、アキが反応する。
「そうです。カテドラル学院の決まりではCランク以下の生徒はカテドラル学院寮にはいり、勉学にいそしんでもらいます。」
「ハル!やっぱりやめておかない!?」
「なんでだよ・・・・」
「だって・・・・さっさみしいし、お母さんがいないときご飯どうすればいいのよ!?」
「ブラコンかよ」
名護がアキの新たなる属性を発見ししっかりと記憶した。
姉ちゃんが特級Aランクで他の知ってる美術部員の奴らはAランク。しかもハルが知っている限りではアキや知っている美術部員よりハルは絵が上手。
なんか、ムカツク!!!
なんか、許せん!!!!
やってやる。やってやるよ!!
「寮の部屋を用意しておいてください!今日からお世話になります。」
「すぐに用意させましょう。」
「準備はこんなもんでいいかな」
ハルは旅行カバンに着替えと身の回りの用意を入れる。
ハルの部屋のドアが開きアキが話しかけてきた。
「ハル・・・本当に行くの?」
「ああ!あいつらよりもランクが下なんて絶対許せん。」
「無理していかなくてもいいじゃない・・・おじいちゃんのことなら私に任せて!!
そうじゃないとあの黒いのに襲われて、ハルまで怪我しちゃうかもよ!!!」
「姉ちゃんこそ大丈夫かよ・・・・絵に入れる人間はそんなにいないみたいだし、最高のサポートができて、ナイトメアを倒せる確率が高いからといっても死なないなんて保障はどこにも無いんだぞ!」
アキはしゃがみこみ、ハルの手を握る。
「確かにそうね。おじいちゃんを見つけたとしても、死んでしまったらおじいちゃんは怒るよね。」
「じゃあ・・・・!!!」
「でもね。おじいちゃんを探すって気持ちの他に、”これは私にしかできないこと”っていう気持ちにもなったの。うまくいえないけど、これが私の使命なんじゃないのかなって・・・思って。」
「・・・・・そっか。」
だったらなおさら、ここを出て行かなくちゃならない!
俺もただの負けず嫌いだけで、こんな危険なことをしようとは思わない。
俺の使命は姉ちゃんを守ること!
そのためにはまず姉ちゃんの近くに立てるようにしなくてはならない。
姉ちゃんが望むなら、俺は行かなくてはならない!!!
「姉ちゃん。準備もできたしそろそろ俺行くよ。」
「きつかったらすぐ戻ってきていいんだからね!!」
ハルは家をでて学校に向かい、美術室の巨大な額縁に入った美しい絵”カテドラル学院”の世界へ入る。
次の日。
「ふわああああ」
大きなあくびをしたハル。
カテドラル学院は美術室にあるカテドラルの絵の中の世界なので、カテドラルの寮にいるハルは直接学校にいるようなもの。
いつもよりハルは30分遅く起きた。
カテドラルでの生活はいたって単純。
朝起き、カテドラルを出て紅葉高校の学校の一日の授業を受ける。一日の学校が終わり次第カテドラルの授業が始まる。
朝8:30から夕方5:00まで高校の授業。
夕方6:00からカテドラルの授業。
終わる時間はランクによってまちまちであるらしい。
入学の手引きを高校の授業中に読むハル。
「カスミさん!また宿題忘れたの?」
オレンジ髪でぐるぐるメガネをかけたカスミという女子生徒が今日も宿題を忘れたようだ。
「すいません。あさってから必ずやってきますんで。」
「いや明日は!!??」
学年成績上位で宿題を忘れたことの無い、妙にまじめなハルとは相まみえるの無い存在。
学校での授業が終了する。
帰宅する者、部活へ行くものたくさんの生徒が動き出す。
いつもであればハルはこのまま帰宅をするはずだが今日からは、いや今からまた授業が開始される。
この時間帯に美術室に来るのは何ヶ月ぶりか・・。
「よお。ハル今日からか!頑張ってな!」
絵を描く準備を始めている吉田。ちなみにまだ美術室には吉田しかいない。
あれ?この人はカテドラルへ行かなくてもいいのかな!?
疑問を持ったハルだが、そんな疑問をもっている暇は無くすぐに昇華する。
寮の自室に戻り、昨日受け取った分厚い教材を持ちEランクの教室へ向かう。
Eランクの教室は自室からそう遠く無い場所にあったが、Eランクの扱いが悪いのか期待されて無いのか分からないが教室前には埃やゴミがたまっていた。
ここか。
ガラガラガラガラ
教室のドアを開けると、一人の女子生徒が窓際に座っているのが見えた。
教室にはまだ彼女しかいなかった。
女子生徒の特徴と言えば、髪の毛はオレンジ色の長髪。顔は正直モデル並に美しい。
Eランクは落ちこぼれのクラスだけど差別は良くない。なにより、おれもEランクだ!!
基本努力をしない人間や、無能な人間を嫌うハルだが、今いる場所はこの学院のレベルの最下層。
プライドは消え、一緒に頑張るためのライバルとして一人の女子に声をかけた。
「君も、Eランク?。俺今日からEランクに所属することになったハルだよろしくな。」
女子がハルを見るが、目が悪いのか目をすぼめてハルを見る
「ん?どうした?」
女子はメガネを取り出し、装着する。
そのメガネは漫画に出てくるようなぐるぐるメガネ。
「ごめんね。私目が悪くって。・・・あっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!」
クラスで話したことは無かったがお互い面識はあった。
女子生徒の名は、”夕空 霞”学校では落ちこぼれの称号を持つ隠れ美人。