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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第8章『私情最大の作戦』
45/62

#43


屋上にでて驚いた。

さっきからやけに五月蠅いなとは思っていたが・・・。


巨大な4枚のブレードが空を切り裂いている。

その重厚な巨体はこの小さなビルの屋上には不釣り合いであったがその存在感のデカさにただただ眺める事しか出来ない島崎であった。

先ほどから聞こえていたビュンという風切音はあの巨大なブレードが旋回している音だったとは誰が気づくだろうか。

確かにここのビルの屋上にはヘリポートが存在していたが今までここにヘリコプターが降り立ったなんて話を聞いた事が無い。

ましてや今目の前に存在するのは普通のヘリコプターではない。

攻撃ヘリや対戦車ヘリなど汎用ヘリを改造した部類ではなく、最初から戦闘用に開発された戦闘ヘリ、それもAH-64(アパッチ・ロングボウ)である。

今現在も各国の主力の一部を担っており、空飛ぶ戦車との異名を持つ最強の戦闘ヘリとして有名な機体である。

国軍の前身である陸上自衛隊でも保有していたが1機辺り70億以上のコストがかかる為10機止まりだった。

これらのほとんどはパイロット養成の為の飛行訓練や整備訓練用に宛がわれ実際に戦闘行為に参加する事は無かった。

国軍化してからは自国開発も緩和され国産の戦闘ヘリが開発されアパッチの代わりに配備さるなどで行き場を失った10機のアパッチは大半が軍の広報で利用されたり、博物館で展示されるか軍の格納庫でホコリを被っているかのどれかだった。

払い下げ品の軽装甲機動車を見た時も驚いたがこのアパッチを見た時も同様、いやそれ以上だった。

目の前の現実を受け入れられない島崎は誰かに頬を抓って欲しいなどと古典的な事を考えていた。


「なにしているですか!早く乗るです!」


放心状態だった島崎の耳に南部の声が届く。

どこにいるんだと思い辺りを見回すがそれらしき人物の姿は確認できない。

首を傾げて悩んでいるとアパッチのコックピットのハッチが開いた。

ハッチと言ってもドア状ではない、操縦席の横窓がそのまま上に開いたという状態だ。

アパッチはタンデム複座型の操縦席になっており、その後部座席に座っているパイロットが手招きをしている。

急いで駆け寄るとパイロットはヘルメットのバイザーを押し上げる。


「え、あ・・・ちょ!?」


島崎は本日2度目の驚きにより放心状態となる。

なんとパイロットは南部さんであった。


「早く乗るです!時間ないですです!」

「あっ!はい」


慌てて前席のコックピットに乗り込む。座席の上に置かれていたヘルメットを被り、顎紐を締める。

初めてヘリコプターに乗った。

それも戦闘ヘリに、普通なら異常なほど興奮しても可笑しく無いだろうが島崎は興奮出来なかった。

それは何故か、理由は簡単である。

決して広いとは言えない操縦席、膝の間には如何にもこれで動かしますよと言うようなレバーが折りたたまれた状態であり、足元にはペダルのようなものもある。

左膝のすぐ近くにはこれまた厳ついグリップがある。ゲームなんかで使うフライトコントローラーみたいな奴だ。これは絶対に座席調節用のレバーなんかじゃないだろう。

手の届く範囲内すべてに何かしらのスイッチがある。全て英語表記なのでなんの装置かまったく分からない。

非常に落ち着かない。ただでさえ狭い場所なのに余計に圧迫されているような気がするのは気のせいじゃないだろう。

ただ唯一の救いは正面と左右にあるモニターがある事で幾分か気分が紛れる事だろうか。

左右のモニターにはそれぞれレーダーのような画像と、機体の情報であろう英文と簡易的なヘリの絵のようなものが表示されている。

正面のモニターには外の映像が映しだされている。画面の真ん中に十字の表示があるからおそらくこれは照準装置の類だろう。モニターの左右にいろいろなスイッチの付いたレバーがあるので間違いないだろう。

大攻防のゲームにもアパッチは登場する。そのヘリにはどういった装備があってどれほど強いかという事を知っているだけに島崎はコックピット内にいるのにその雰囲気を楽しむ余裕が無かった。

震える手でシートベルトを装着する。

ふぅと息を大きく吐いた所でハッチが閉まった。


「それじゃ行くですよ!」


南部の掛け声と共にメインローターの旋回速度が増していく。

五月蠅い音がするだろうと身構えていた島崎だったが以外にも音は大きくなく低騒音だった。先ほど外で聞いた音とあまり変わらない。

エンジンの音もローターの音も予想以上に静かで拍子抜けしてしまった。

余談ではあるが前席に座らされた当初島崎は自分が操縦させられるのかと思い冷や冷やしていたがアパッチの操縦は基本的に後部席で行い前席はガナー(射撃手)となっている。

むろんその逆も可能ではあるがなんらかの事情でそれらの操作が出来なくなった場合に限られる。

ただ緊張のあまり飛び立った後も自分が操縦するのではと思っていた事を忘れていたのは言うまでも無い。


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